DevOpsとは?分かりやすく概念やメリット、実践する流れを解説
更新:2024.8.14
著者:Sky株式会社
目次
DevOpsとは?
アジャイル型開発が主流になってきている近年のソフトウェア開発の現場において、「DevOps」という言葉を見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか。ここではDevOpsの意味や重要性についてご紹介します。
DevOpsの意味
DevOpsは、ソフトウェア開発においての「Development(開発)」と「Operations(運用)」を組み合わせた複合語であり、開発チームと運用チームが協力し合うことで柔軟かつスピーディーな開発を目指す考え方のことです。より迅速な開発プロセスを実現する組織体制の構築を目的としています。
激しく変化する市場に対応するため、近年のソフトウェア開発は開発サイクルのスピードアップが求められています。従来の開発手法であったウォーターフォール型開発から、より効率的に開発できるアジャイル型開発へシフトする企業も増えていますが、それでもなお多くの現場では期待するような速さで開発を進めることができていないのが現状です。
その最たる理由として、開発チームと運用チームがそれぞれ「サイロ化」していることが挙げられます。サイロ化とは、組織内の各部門が個別最適でシステムを構築し、他部門のシステムとの連携を考慮せずに開発することで業務プロセスや業務アプリケーション、各種システムが孤立し、情報が連携されていない状態のことです。ソフトウェアの開発現場では分業制を採る場合が多く、開発チームと運用チームの間で見解のずれなどが発生することも珍しいことではありません。その結果として両チームのサイロ化が進んでしまい、双方に速く高品質なソフトウェアを開発するという目的を持ちながら、互いに足を引っ張り合う状況が発生しています。
その状況を解決するために生まれたのが「DevOps」という考え方です。開発チームと運用チームが連携し、より迅速にソフトウェアの開発サイクルを回すDevOpsの注目度は非常に高く、近年では規模や業種を問わず、さまざまな企業が導入を進めています。
DevOpsが重要な理由
ソフトウェアの発展やインターネットの普及が世の中を一変させ、今もその需要は高まり続けており、もはや私たちの生活になくてはならない存在になりました。急速なデジタル化によって人々の暮らしが便利になった一方、ユーザーのニーズは絶え間なく変化するようになり、企業はその多様化したニーズへの対応を余儀なくされています。
このような現代社会において、ビジネスの根幹ともいえるソフトウェアを開発する企業には、より高いレベルで品質やスピードの向上が求められます。しかし、前述のようにサイロ化した組織体制ではコミュニケーションや意思決定に時間を要し、思うように開発プロセスが進みません。
DevOpsによって、開発チームと運用チームのサイロ化を解消し、品質とスピードの両方を兼ね備えたソフトウェア開発が可能になります。人々の生活を豊かにするため、変化するユーザーのニーズに応えるため、ソフトウェア開発現場の文化や考え方を見直すことが求められています。
DevOpsで押さえておくべきポイント
DevOpsを検討するにあたり、押さえておくべきポイントがいくつかあります。特に「エンジニアのスキル」「開発プロセスの自動化」「セキュリティ対策」は事前に確認しておく必要があります。
DevOpsは開発と運用のチーム間の隔たりをなくし、お互いに協力し合いながらソフトウェアを開発していく概念です。そのため、両チームを1つのチームに統合し、ソフトウェアの開発サイクル全体に渡って作業することも少なくありません。従来の仕組みであれば、開発もしくは運用のいずれかに精通していれば事足りましたが、DevOpsにおいては単一の職務に限定されないさまざまなスキルが求められます。
効率的な開発とエンジニアの負担軽減のため、DevOpsでは開発プロセスを自動化することを重視しています。ツールやテクノロジースタックを活用し、従来は手動で行われていた作業を自動化することで、ソフトウェアの迅速かつ確実な開発が可能です。また、本来であれば他チームのサポートが必要な業務も、自動化ツールを使用することでエンジニアが単独で実行できるようにもなります。
また、DevOpsに「Security」の観点を加えたものを「DevSecOps」といいます。万能に見えるDevOpsですが、セキュリティに関しては細分化されておらず、セキュリティ対策の長期化や早期対処の難しさが課題としてありました。その点DevSecOpsでは、ソフトウェア開発の各工程に応じたセキュリティ対策をプロセスに組み込むため、脆弱性などのセキュリティリスクを最小限に抑えることができます。これにより、セキュリティ事故の発生による企業価値の低下のリスクを回避することが可能です。
DevOpsと似た他の用語との違い
DevOpsはアジャイル型開発やCI/CDと一緒に語られることが多く、それぞれを混同してしまっているケースも見受けられます。ここでは似た用語である「DevOps」「アジャイル」「CI/CD」の違いについて紹介します。
DevOpsとアジャイルの違い
DevOpsは、開発チームと運用チームの連携を強化する仕組みや考え方のことを指し、ソフトウェア開発をより迅速に進めるための組織体制の構築を目指します。一方でアジャイル型開発は、ソフトウェアの具体的な開発手法の名称です。
アジャイルは従来のウォーターフォール型の開発と異なり、各開発サイクルを細分化し、個々のサイクルごとに設計やテストを実施するという特徴があります。そのため、アジャイルでソフトウェア開発を進めることで、より迅速な開発が行えるのと同時に、顧客からの要望にも柔軟に対応することできます。言葉の意味は異なるとはいえ、DevOpsとアジャイルは密接な関係にあります。ソフトウェア開発においては、「DevOpsという開発概念」に「アジャイルという開発手法」を取り入れることで、開発と運用の連携を強化しながら開発プロセスのスピードアップを実現できます。
DevOpsとCI/CDの違い
DevOpsは開発チームと運用チームの一体化を図り、スピーディーなソフトウェア開発の実現を目指す考え方です。一方で、CI/CDは開発プロセスの自動化に焦点を当てた言葉であり、主にツールの名称として使用されます。つまり、「DevOpsの仕組み」の中で「開発サイクルを自動化するのがCI/CD」です。
CI/CDのCIは「Continuous Integration(継続的インテグレーション)」、CDは「Continuous Delivery(継続的デリバリー)」と「Continuous Deployment(継続的デプロイメント)」の2つの言葉の略称です。開発プロセスの中でどの工程を自動化するかによって、それぞれ呼び方が変わります。CI/CDツールは、「GitHub Actions」や「GitLab CI/CD」をはじめ、数多く存在します。これらのツールを活用することで、数カ月かかっていた作業が数時間で完了できることも珍しくなく、スピードが求められるDevOpsにおいてはCI/CDツールの活用が必須といえます。
DevOpsのメリット
DevOpsにはさまざまなメリットがあります。ここではDevOpsを導入することで得られるメリットについてご紹介します。
スピード
DevOpsを導入することで、ソフトウェアの開発サイクルのスピードが上がります。開発サイクルのスピードが上がるということは、それだけ顧客のニーズに迅速かつ柔軟に対応できるということです。変化し続ける市場に合わせた、より価値のあるソフトウェアを提供できるようになります。
信頼性
テストやビルド、リリースなどのこれまで手動で行ってきた作業を、DevOpsではCI/CDツールを活用して自動化します。これにより不具合などの早期発見はもちろんのこと、人為的ミスの発生なども防ぐことができ、結果としてソフトウェアの品質や信頼性の向上につながります。
拡張性
DevOpsの考え方では、ソフトウェア開発に必要なインフラストラクチャもコードで管理すること(IaC:Infrastructure as Code)が推奨されています。インフラをアプリケーションと同じようにコードで管理することで、インフラと開発プロセスの親和性を高め、システム全体をより効率的に管理・拡張することが可能です。
共同作業のしやすさ
DevOpsは開発チームと運用チームの連携を強化するため、チーム全体でソフトウェアの開発状況を共有することができます。加えてタスク管理ツールなどを導入することで、より共同作業の生産性を向上させられます。
セキュリティ
DevOpsの自動化の一環として、セキュリティポリシーや各種セキュリティ標準に基づいた自動チェックも実装できます(DevSecOps)。この自動チェックはコードが変更される度に実施されるため、安全性の高いソフトウェアを迅速に提供できます。
平均復旧時間
DevOpsの導入によって開発サイクルのスピードが上がり、より迅速に製品の改善や修正を行うことが可能になります。つまり、何かしらの不具合が見つかったとしても、その復旧にかかる時間を大幅に短縮できるということです。平均復旧時間の短さは、そのまま顧客満足度を高めることにもつながります。
DevOpsのデメリット
ソフトウェア開発においてメリットが多いDevOpsですが、次のようなデメリットもあるため注意が必要です。
スケジュール管理のしにくさ
DevOpsは顧客の要望に応じて柔軟に対応することが求められるため、スケジュールの把握が難しいという側面があります。また、従来であれば開発チームと運用チームで別々に管理していたスケジュールもまとめなければならず、人数が増える分だけその難易度は高くなるといえます。
専門知識やノウハウが必要
DevOpsでは、組織の在り方や使用するツールなどを根本的に変えなければならないため、それらに関する専門知識やノウハウが必要です。いきなりDevOpsを始めるのが難しい場合は、スモールスタートで経験を積んだり、DevOpsの経験が豊富なエンジニアを採用したりすることも選択肢の一つです。
大規模開発に不適な場合も
開発中のコミュニケーションに重きを置くDevOpsの適正人数は、9名ほどと言われています。そのため、それ以上の人数が見込まれる大規模開発には、DevOpsの仕組みが適さない場合もあります。プロジェクトごとにDevOpsを採用するかどうかを見極めることが重要です。
DevOpsを実践する流れ
ここからは、DevOpsを実践する具体的な流れをご紹介します。また、DevOpsを実現するには各工程で適切なツールを導入することが大切です。代表的なツールもご紹介していますので、参考にしてみてください。
計画
DevOpsを実践する際にまずすべきことは、プロジェクトの全体的な進め方の計画立案です。開発要件を明確に定義するのはもちろんのこと、なによりプロジェクト全体の風通しをよくして、開発チームと運用チームが常に情報を共有できる環境を整備します。この段階では、プロジェクトの管理機能を持ったツールや、情報共有がしやすいツールが適しています。タスク管理ツールである「Jira」や「Azure DevOps」、プロジェクトのコラボレーション機能を持っている「Confluence」などがお勧めです。
コーディング
次の工程はコーディングで、プログラマーが開発要件に合わせてソースコードを作成していきます。ソースコードは一度作成して終わりではなく、複数人の手によって何度も修正されるものです。そのため、この工程ではどのソースコードが最新のものであるかを把握する、バージョン管理が大事になってきます。
バージョン管理は、「GitHub Actions」や「GitLab CI/CD」、「Bitbucket」などのCI/CDツールの機能を活用するのが一般的です。これらのツールを活用することで、バージョン管理が容易になり、ソースコードのバージョン違いによる不具合などを防ぐことができます。
ビルド
ビルドとは、前工程で作成したソースコードを1つのファイルにまとめて、実際に動作するソフトウェアを作成することを指します。ビルドは手動でも実施可能ですが、一般的にはビルド自動化ツールを使用することが多いです。
前述の「GitHub Actions」「GitLab CI/CD」「Bitbucket」はCI/CDツールなので、ビルド工程を自動的に実施することも可能です。この工程を自動化することで、人為的ミスを削減しながら、作業の効率化も図れます。
テスト
テスト工程は、テスト環境にて実際に製品を動作させ、バグや不具合がないかを確認する工程です。開発要件や仕様書通りの動きになっているかを確認することに加え、ユーザー視点で使いやすい製品になっているかも確認します。
有名なテストツールとしては、Webアプリ自動テストツールの「Selenium」や、Java言語の単体テストツールの「JUnit」などがあります。なお、Sky株式会社でも、Webアプリ・モバイルアプリ・デスクトップアプリのすべてに対応したUIテスト自動化ツール、「SKYATT」を提供しています。
デプロイ
デプロイ工程では、開発したソフトウェアをパッケージ化し、ユーザーが利用できる本番環境への配置を行います。DevOpsでは、CI/CDツールを活用してソースコードの作成後からこのデプロイ工程までを自動化するのが一般的です。そうすることで開発サイクルがより短縮され、効率的にソフトウェア開発を進めることができます。
また、CI/CDツールにはオンプレミス型とクラウド型があるため、自社の環境を考慮してツールを導入する必要があります。CI/CDツールとしては、前述の3つ以外にも、「Jenkins」「CircleCI」「Travis CI」「AWS CodePipeline」などが有名です。
保守・運用
ソフトウェアを本番環境にデプロイして終わりではなく、保守・運用が必要になります。この工程でのポイントは、チーム全員で状況を共有し、作業を円滑に進められるようにすることです。ツールを活用し、保守・運用業務を一つのプラットフォームにまとめることで、仮にインシデントなどが発生した場合でも迅速に対応できます。
インシデント管理ツールである「Jira Service Management」や、パフォーマンスを監視してログの管理を自動で行う「New Relic」「Datadog」などのツールを使用するのがおすすめです。
モニター・継続的フィードバック
ソフトウェアをリリースした後は、ユーザーからのフィードバックを継続的に集め、次回以降の開発に反映していきます。モニターやフィードバックは、一見すると開発ペースが遅くなる原因と捉えられがちですが、長期的に見れば開発効率を上げることができる非常に重要な工程です。
モニターやフィードバックの管理には、前述の「Jira Service Management」などの管理ツールが便利です。運用チームでフィードバックに優先順位をつけながら取りまとめ、それを開発チームに伝えていくことで次の「計画」がスタートし、DevOpsのサイクルが回っていきます。
DevOpsを導入するならSky株式会社
市場の変化に合わせて、従来のウォーターフォール型開発からアジャイル型開発にシフトしていく企業が増えている中、DevOpsの注目度は依然として高まり続けています。しかし、従来の開発モデルに慣れた企業が、一気にDevOpsにかじを切るのはハードルが高いといえます。
Sky株式会社では、DevOpsの概念に沿ったCI/CD環境の構築からテスト品質のモニタリング環境の構築まで、さまざまなツールを駆使しながらお客様の開発環境の安定化と効率化をサポートしています。また、作業フロー・作業プロセスの作成や導入支援コンサルティングなども併せて実施できます。DevOpsをご検討の場合は、ぜひSky株式会社までお問い合わせください。
まとめ
DevOpsは、組織の在り方を見直し、ソフトウェアのより迅速な開発プロセスの実現を目指す考え方です。絶え間なく変化する市場のニーズに応えるため、開発チームと運用チームで分断されがちな組織体制を一新し、お互いに協力し合って開発を進める環境づくりが今のソフトウェア開発企業には求められています。DevOpsを導入し、企業の競争優位性を高めながらも、品質と開発スピードを兼ね備えたソフトウェア開発を実現してください。
著者 Sky株式会社
Sky株式会社は、家電のシステム開発を手掛けたのをきっかけに、デジタル複合機やカーエレクトロニクス、モバイル、情報家電、さらに自社商品として教育分野における学習活動ソフトウェアや、公共・民間向けクライアント運用管理ソフトウェアなど、幅広い分野でのシステム開発を展開しております。