システム開発の6つの手法とメリット・デメリットを徹底解説

更新:2024.4.26
著者:Sky株式会社


ひと口にシステム開発といってもその開発手法はさまざまで、それぞれ特徴があります。トラブルを回避し、開発をスムーズに進めるためにも、プロジェクトの内容や自社の状況に合わせた手法を選択することが大切です。この記事では、6つの開発手法における特徴やメリット・デメリットなどを解説します。

代表的な6つの開発手法とその特徴

システム開発における主な開発手法としては、「ウォーターフォール開発」「アジャイル開発」「プロトタイピング開発」が挙げられます。また近年では「スパイラル開発」「DevOps」「MVCモデル」が選ばれることも少なくありません。業界や企業によっては、これら開発手法はほかに独自の手法を取り入れるケースもありますが、いずれの場合も手法によって開発の工程は大きく変化します。各手法の特徴をあらかじめ理解しておくことで、プロジェクトの内容に適した手法を選ぶことができ、トラブルの回避や円滑な進行、システム品質の向上につながります。ここでは上で挙げた6つの開発手法の特徴をご紹介します。

ウォーターフォール開発

ウォーターフォール開発とは、要件定義や基本設計、詳細設計といったシステム開発の各工程を順に行っていく開発手法です。一つの工程を完了させてから次の工程へ進んでいく、シンプルでわかりやすい開発手法といえ、上流工程から下流工程へ流れる水のように工程が進んでいく様子から、ウォーターフォール(滝)開発と呼ばれています。

ウォーターフォール図

ウォーターフォール開発は、仕様に沿って計画的に進められるため、スケジュールや納期を想定しやすいという特徴があります。その反面、開発中にバグや不具合が発生すると、その原因が発見された工程を再度やり直すことになるため、納期までの期間が短かったり、スピードを重視したりするシステム開発には不向きといえます。

アジャイル開発

アジャイル開発とは、機能ごとに要件定義から設計、実装、テストといった開発工程を、繰り返し進めていく開発手法のことです。日本語で「素早い」という意味をもつアジャイルですが、その名のとおり、スピードを重視したシステム開発に適した手法といえ、一つの開発工程を小さくまとめる分、リリースまでの期間を短くできるのが特徴です。

アジャイル開発図

機能の追加や修正がしやすく、依頼者の要望を取り入れながらシステム開発を進めていくことができる反面、完成度が見えにくいことから部分最適に陥ってしまったり、スケジュールの見通しが立てにくかったりする点もあります。

プロトタイピング開発

プロトタイピング開発とは、開発の早い段階で試作品(プロトタイプ)を作成し、依頼者のチェックを通じて見つかった気づきや発見などを基に、詳細な仕様を決めていく手法です。システム開発の経験が少ない依頼者にとっては、実現させたいシステムがあっても具体的な仕様までは思いつかないことも考えられます。先に試作品を作成して依頼者へ提供し、開発後のイメージを膨らませてもらうことで、詳細な仕様や本当に求めている完成形を依頼者から提案しやすくする狙いがあります。

プロトタイピング開発図

仕様の検討や開発そのものを円滑に進められる点が特徴ですが、試作品の作成と修正を繰り返し行うことになった場合に、スケジュールが大幅に遅延してしまうリスクがあります。

スパイラル開発

スパイラル開発とは、設計・実装・テストなどの開発工程を繰り返し、システムの品質を上げていく手法です。アジャイル開発とよく似た手法ですが、スパイラル開発は品質がまだ保証されていない段階で依頼者へ提示するという点に違いがあります。

スパイラル開発図

一つの開発工程が完了するごとに、依頼者の評価や声を反映していくことができ、比較的効率良く開発を進められる点が特徴です。ただし、アジャイル開発と同様にスケジュールやコストの見通しが立てにくく、開発・改良を繰り返すためコストが膨らみやすい場合もあります。

DevOps

DevOps(デブオプス)とは、「Development(開発)」と「Operations(運用)」を組み合わせた造語です。開発現場においてはしばしば、機能の開発を担当するチームとサービスの安定的な運用を担当するチームに分かれて作業を行っていることがあり、各チームに課せられた目的が異なることから対立を生む要因となる場合もあります。価値あるサービスを依頼者に届けるという共通の目的の下、対立するのではなく双方が協力しながら開発していこうとする手法、およびその概念をDevOpsといいます。

DevOps図

開発担当と運用担当が緊密に連携し合うことにより、柔軟かつスピーディーにシステム開発を進め、品質向上や工数削減などを実現します。手法としてはアジャイル開発と似ており、設計・実装・テストの小さな開発工程を回して製品をリリースし、依頼者の声を反映させていく流れとなります。

MVCモデル

MVCモデルとは、「Model(モデル)」「View(ビュー)」「Controller(コントローラー)」の頭文字から名づけられた開発手法です。システムの処理を担当する「Model」と、画面表示や入出力などユーザーインタフェースを担当する「View」、それら2つの制御を担当する「Controller」に分け、別々に開発していくのが特徴です。

MVCモデル図

プログラムの種類ごとに分けて開発を進めていくことで、システムの保守性や生産性の向上を図ることができる反面、処理速度の低下や準備の手間が発生することもあります。開発手法というより、システム開発における設計思想として用いられることもあります。

6つの開発手法のメリット・デメリット

代表的な6つの開発手法の特徴についてご紹介しましたが、ここではそれら手法のメリット・デメリットについてそれぞれを詳しく解説していきます。

開発手法 メリット デメリット
ウォーターフォール開発 計画どおりに進めやすい、必要な人材を確保しやすい 不具合発生時に開発が長期化しやすい
アジャイル開発 機能追加や修正がしやすい、開発期間を短くしやすい 開発の方向性がずれやすい、進捗確認がしにくい
プロトタイピング開発 柔軟性の高い開発が可能、試作品によってイメージどおりのシステムを開発できる 試作品を再作成する場合の時間とコストがかさむ
スパイラル開発 臨機応変に仕様変更しやすい 時間とコストがかさむ場合がある
DevOps システムの機能性と安定性を両立しやすい 開発担当と運用担当の連携が乱れると進捗や品質に影響しやすい
MVCモデル 分業で開発を進めやすい コードを分割する作業に手間が発生する

ウォーターフォール開発のメリット・デメリット

ウォーターフォール開発のメリットは、計画どおりに進めやすいことです。綿密に組み立てたスケジュールに沿って、一つの工程が終わったら次に進んでいくため、進捗状況も管理しやすいといえます。また、人材を確保しやすい点もメリットです。企画からリリースまでの全行程の計画をあらかじめ立てるため、費用やプロジェクトにかかる人数を予想しやすく、必要な人材を集めやすいといえます。

デメリットは、不具合が発生した場合の手戻りが大きいことです。基本的には、前工程の作業をベースに開発を進めていくため、不具合が見つかった際は前工程から見直しが入ります。初期の工程で不具合が見つかった場合、手戻りは少なく済みますが、後期であればあるほどスケジュールの遅延や追加費用などが大きくなります。

アジャイル開発のメリット・デメリット

アジャイル開発は、規模の小さい単位で開発を繰り返していくため、依頼者の要望などによる機能追加や修正を反映させやすいメリットがあります。また、優先順位の高い機能から開発しリリースしていくため、短納期で依頼者にシステムを届けることができます。柔軟性とスピード感がある開発手法のため、流行に左右されやすいゲームアプリ開発などで真価を発揮します。

デメリットとしては、途中段階での仕様変更を前提とした開発手法のため、開発当初の方向性がずれやすいこと、進捗やスケジュールが把握しにくいことが挙げられます。

プロトタイピング開発のメリット・デメリット

プロトタイピング開発は、試作品に修正を加えて完成に近づけていくため、柔軟性の高い開発が可能なところがメリットです。また、依頼者に対して試作品を提示することで、具体的なイメージを開発側と共有しやすくなるのもメリットといえます。

一方で、試作品の作り直しが繰り返し発生すると、開発側にとって大きな負担となります。試作品を提示したことで依頼者の期待値が上がってしまい、さらなる修正と試作品の作成を繰り返すことで開発工数が増え、納期に間に合わなくなる可能性もあります。

スパイラル開発のメリット・デメリット

スパイラル開発は、アジャイル開発と同様に比較的小規模の開発工程を繰り返しながら、依頼者の要望を反映させていくため、仕様変更がしやすく満足度の高いシステムを提供できるのがメリットといえます。

デメリットとしては、修正が何度も発生してしまった場合はその分の時間とコストが膨らみ、全体スケジュールにも影響を及ぼす点です。

DevOpsのメリット・デメリット

DevOpsは開発担当と運用担当が連携することにより、システムの機能性とリリース後の安定性を両立したシステム開発が可能となるのがメリットです。また、密な連携によって、余計な工数の削減にもつながり、リリースまでの期間を短縮できる効果もあります。

開発担当と運用担当との連携を前提とした開発手法のため、どちらか一方に作業ミスや不具合などが生じてしまうともう一方への影響は大きく、スケジュールの遅れやシステムの品質低下を招きやすいというデメリットがあります。

MVCモデルのメリット・デメリット

MVCモデルは前述のとおり、「Model」「View」「Controller」ごとに、担当者やプログラミングのコードを分けるため、開発メンバーの役割分担がしやすかったり、コードをわかりやすく管理できたりするメリットがあります。コードが適切に管理されていることで、例えば開発担当が急に変わったとしても引き継ぎがしやすいほか、「View」に問題が起きたとしてもほかのパートへ影響を及ぼしにくいといったメリットもあります。

ただし、コードが管理されているということは、そのための準備が当然欠かせません。機能ごとにコードを整理するなどの作業によって、かえって時間がかかるケースもあります。

システム開発における2つのトレンド

数あるシステム開発手法ですが、時代の移り変わりによるトレンドも存在します。ここでは日本企業における開発手法のトレンドをご紹介します。

日本ではDevOpsを採用する企業が増加

海外ではアジャイル開発を採用する企業が多いと言われていますが、日本では長年ウォーターフォール開発が主流とされています。しかし、近年はDevOpsを採用する国内企業が増えているとの報告もあります。

2022年 国内DevOps/開発プラットフォーム ユーザー動向調査」によると、2017年からの国内企業におけるDevOpsの利用率は年々上昇しており、2022年の調査では59.3%に達したとのこと。また、DevOpsの利用を計画、または評価、検討していると回答した企業は21.7%という結果も報告されており、今後もDevOpsを利用する国内企業が増えることが考えられています。

サイバー攻撃への対策が追加された「DevSecOps」

DevOpsを採用する国内企業が増加しているなかで、新たな課題も挙げられています。それは脆弱性を狙ったサイバー攻撃への対策です。DevOpsにはセキュリティの概念が組み込まれていないケースが多く、システムのリリース直前に脆弱性が発見された場合に、その修正に多くの手間と時間がかかり、リリースが妨げられてしまう点が問題視されていました。

そこで登場したのが「DevSecOps」です。これは「Development(開発)」「Operations(運用)」に、「Security(セキュリティ)」の頭文字が組み合わさった造語のこと。開発対象のシステムに脆弱性を組み込んでしまうリスクを軽減するため、「設計」「実装」「テスト」などの各工程にセキュリティ対策を組み込むことで、機能性と安定性を両立させるDevOpsのメリットを享受しつつ、セキュリティも担保することができます。DevOpsを利用する企業が増加している日本にとって、今後はDevSecOpsが国内企業における主流となるかもしれません。

開発手法を選ぶ際の2つのポイント

ここではシステム開発の手法を検討する際の、考慮すべきポイントを2つご紹介します。

システムとの相性を第一に考える

開発手法の優劣ではなく、開発したいシステムとの相性を考えることが最も重要です。例えば、運用中の既存システムに機能を追加したい場合は、機能追加による運用への影響を最小限に抑えるよう、部分的に開発でき短期間での納期が見込めるアジャイル開発を選んだり、そもそもシステムを一から作り直したいといった場合はウォーターフォール開発を選ぶなど、プロジェクトの内容に応じて手法を選びます。

手法ごとで依頼者側の対応も異なる点に注意

システム開発を依頼する側の立ち場として、開発手法ごとに対応が異なるという点も理解しておく必要があります。例えば、開発がスピーディーに進むアジャイル開発では、依頼者側が開発側から要求や意見を求められることがあります。また、ウォーターフォール開発では後々の仕様変更が難しいため、開発中よりも開発前に開発側とコミュニケーションを取って要件定義を行う必要があります。このように、開発手法によって依頼者側が取るべき対応が異なるため、プロジェクトの内容や自社が割ける時間などを加味し、無理のないスタンスで開発側と連携できる手法を選ぶことが大切です。

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Sky株式会社は、家電のシステム開発を手掛けたのをきっかけに、デジタル複合機やカーエレクトロニクス、モバイル、情報家電、さらに自社商品として教育分野における学習活動ソフトウェアや、公共・民間向けクライアント運用管理ソフトウェアなど、幅広い分野でのシステム開発を展開しています。お客様先へのソフトウェアエンジニアの派遣や受託開発などをはじめ、要件定義から設計、開発、検証、運用・保守まであらゆるフェーズで技術を提供しています。

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Sky株式会社:業務系システム開発

まとめ

いかがだったでしょうか。システム開発における6つの開発手法の特徴とメリット・デメリット、開発手法のトレンドなどをご紹介しました。トラブルを回避し、スムーズにシステム開発を進めていくためには、スケジュールや人的リソース、コストなどさまざまな要素を加味し、最適な開発手法を選ぶことが大切です。この記事でご紹介した内容が、皆さまのシステム開発に少しでもお役に立てれば幸いです。

著者 Sky株式会社

Sky株式会社は、家電のシステム開発を手掛けたのをきっかけに、デジタル複合機やカーエレクトロニクス、モバイル、情報家電、さらに自社商品として教育分野における学習活動ソフトウェアや、公共・民間向けクライアント運用管理ソフトウェアなど、幅広い分野でのシステム開発を展開しております。

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