クラウドとは? 図解で初心者にもわかりやすく解説
クラウドとは?
クラウドとは、データをインターネット上に保管する考え方のことです。「クラウドコンピューティング」とも呼ばれます。この考え方を基に、インターネットを通じてサーバーやストレージ、ソフトウェアなどをユーザーに提供し、必要なときに必要な分だけ使用できるようにしたサービスを「クラウドサービス」といいます。
コンピューターの利用には、データを保管しておくためのサーバーやストレージが必要です。クラウドが普及する前は、各企業でサーバーやストレージを購入し、会社の中に設置して自分たちで運用を行う「オンプレミス」という方式が一般的でした。
一方クラウドを利用する方式では、サーバーやストレージ、ソフトウェアなどの提供者(クラウドベンダー)が一括して必要な環境の準備・運用を行い、「クラウドサービス」として資源を貸し出します。借りる側はインターネットにアクセスできる端末だけを用意すればいいので、社内にサーバーやストレージを設置したり、管理したりする必要がなく、コストや手間を削減できます。インターネットにアクセスできる環境であれば、時間や場所を問わずデータを扱うことができます。
一説では、インターネット上にあって実体がないサービスのイメージを表現するために、雲(クラウド)を用いて図解をしたことが、クラウドの語源といわれています。
身近な例としては、GmailやYahoo!メールのようなメールサービスが挙げられます。従来型のサービスでは、パソコンに専用のソフトウェアをインストールして使用していましたが、クラウドサービスとして提供されているものは、アカウントを登録しておけばインターネットでログインするだけで閲覧できます。データはインターネット上に保存されているため、いつもと違う端末からメールを確認したいときも、データの移動は不要です。家ではPC、出先ではスマートフォンでメールを確認する、という使い方もできます。
クラウドの利用目的
2006年にAmazonが「Amazon Web Services(AWS)」というクラウドサービスを開始してから、Googleの「Google Cloud Platform(GCP)」やMicrosoftの「Microsoft Azure」なども誕生し、企業におけるクラウドサービスの活用は急速に進みました。
総務省が公開している調査結果では、令和3年時点で約7割の企業がクラウドサービスを利用していると回答しています。企業におけるクラウドサービスの利用内訳では、「ファイル保管・データ共有」を目的とした利用が最も多く、必要に応じて使用する容量を増減できる点やどこからでもアクセス可能な点が、クラウドの利用価値として重要であることがうかがえます。
出展:総務省 「企業におけるクラウドサービスの利用動向」
クラウドの定義とは
ここまで、クラウドとはどんなものかを大まかにご紹介してきましたが、具体的にはどのような基準を満たしたものを「クラウド」と呼ぶのでしょうか。クラウドの定義はやや曖昧で、人によって解釈が分かれることもありますが、世界的な共通認識として最も広く知られているのは、NIST(アメリカ国立標準技術研究所)が公開しているガイドラインだといわれています。NISTでは、クラウドを以下のように定義しています。
「クラウドコンピューティングは、共用の構成可能なコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービス)の集積に、どこからでも、簡便に、必要に応じて、ネットワーク経由でアクセスすることを可能とするモデルであり、最小限の利用手続きまたはサービスプロバイダとのやりとりで速やかに割当てられ提供されるものである。このクラウドモデルは5つの基本的な特徴と3つのサービスモデル、および4つの実装モデルによって構成される」
クラウドの5つの特徴とは
NISTでは、クラウドの定義として「5つの基本的な特徴」がすべて満たしていなければならないとしています。実際に、クラウドと誤解されやすい「レンタルサーバー」などの類似のサービスは、この条件を満たしていません。それでは、「5つの基本的な特徴」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。NISTで挙げられているのは、以下の5つです。
1.オンデマンド・セルフサービス
クラウドサービスでは、クラウドベンダーの手を借りずに容量の増減などを実行できる仕組みが整えられており、ユーザーがWeb上で自由に設定の変更を行えます。これを「オンデマンド・セルフサービス」といいます。
サーバーの容量を変更したい場合、レンタルサーバーでは追加のサーバーを契約するための手続きが必要になりますが、クラウドサービスなら「クラウドベンダーに連絡をして許可を取る」といった手間が不要です。
2.幅広いネットワークサービス
パソコンだけでなく、さまざまな端末からアクセスしてサービスを利用できることも、クラウドサービスの特徴の一つです。出張や在宅勤務、共同作業にも対応できるという利点がある一方で、インターネットに接続できない状況では使用できないという注意点があります。
3.リソースの共用
クラウドサービスでは、サーバーなどのITリソースを複数のユーザーで共有します。余分を融通し合うかたちで成り立っているため、リソースの使用効率が最適化され、コストを抑えやすいのがメリットです。
また、ユーザーはリソースの限度については気にせず、特に制限を受けることなくサービスを利用することが可能です。
4.スピーディーな拡張性
設定変更が容易なため、手続きなどの手間が削減されるだけでなく、システムの拡張や縮小(スケールアップ・スケールダウン)をスピーディーに行えるという利点につながります。
「アクセスが集中したからサーバー数を増やす」「落ち着いたから減らす」といった状況に応じた調整も可能なため、対応が遅れてビジネスチャンスを逃すこともありません。オンプレミスのように、予備のサーバーを保有しておく維持費がかかることもないため、コストは必要最低限に抑えられます。
5.サービスが計測可能
クラウドサービスでは、CPUやストレージなどの利用量が常に計測されています。これにより、使った分だけ料金を支払う「従量課金制」が成立しています。そのため電気料金のように、ユーザー側でも利用状況の変動を把握しやすく、用途や規模に適したサービスを選んで運用していくことが可能です。
クラウドのサービスモデル
「サービスモデル」とは、クラウドサービスの利用形態の種類を指します。何が提供されているのか、どんなことが可能なのかなど、それぞれに特色が異なるため、クラウドサービスを利用する際には、目的に合わせた形態のものを選ぶ必要があります。
NISTの定義では、サービスモデルを以下の3種類に分類しています。
SaaS ソフトウェア・アズ・ア・サービス
「SaaS」とは、インターネットを通じてソフトウェアを利用できるサービスのことです。例えばGmailやYahoo!メールのような、ソフトウェアのインストールをせずに使用できるWebメールなどは、これに当てはまります。
すでにソフトウェアとして完成されたものを利用するため、管理が不要で導入しやすい点がメリットです。その反面、独自のカスタマイズは行いにくく、セキュリティ対策もクラウドベンダーにゆだねるかたちになる点に注意が必要です。
PaaS プラットフォーム・アズ・ア・サービス
「PaaS」とは、アプリケーションの開発や実行に必要なプラットフォームを提供するものです。データベースの管理システムや開発支援ツールも含めて利用できるため、後述するIaaSよりも導入のハードルが低く、初期費用を抑えられます。
自由度が低いのが難点ですが、コストや手間を省いて開発・運用に集中でき、スペック変更も柔軟に行えます。提供されているサービスの範囲内で事足りるケースであれば、有効に活用できる利用形態です。
IaaS インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス
「IaaS」とは、ストレージやサーバーなど、基本的なITインフラのみを提供する形態のことです。SaaS、PaaSと比べて導入のハードルは高くなりますが、自由にカスタマイズできるのが利点です。
データの保管場所であるストレージやサーバーの管理はクラウドベンダーが行いますが、IaaSを利用して開発したアプリケーションやプラットフォームについては、自分たちの手でセキュリティ対策などを行う必要があります。
クラウドの実装モデル
サービスモデルが利用形態を指すのに対し、提供形態のことを指すのが「実装モデル」です。NISTの定義では、実装モデルは「プライベートクラウド」「パブリッククラウド」「コミュニティクラウド」「ハイブリッドクラウド」の4つに分けられています。
プライベートクラウドは一つの組織のために提供されるものであるのに対し、パブリッククラウドは一般的に利用できるよう広く公開されます。コミュニティクラウドの場合、共通の関心事を持った複数の組織が集まったコミュニティとなり、共同でクラウドを利用します。そしてハイブリッドクラウドは、プライベート・パブリック・コミュニティのうち異なる2種類以上を組み合わせたものです。
中でも特によく比較対象となるのが、プライベート・パブリック・ハイブリッドの3種類です。プライベートクラウドとパブリッククラウドの主な違いとしては、前者は自由度が高くてコストがかかり、後者は自由度が低くてコストが抑えられるという特徴があります。
またプライベートクラウドには、従来の方式のように自社内で構築する「オンプレミス型」と、一般に公開されているクラウドの一部を占有する「ホスティング型」という2つのパターンがあります。プライベートクラウドには、パブリッククラウドに比べて導入までに時間がかかるという難点がありますが、ホスティング型であれば自社で機器の用意などを行う必要がないため、オンプレミス型よりは時間を短縮できます。
一方で、パブリッククラウドを選んだ場合に気をつけなければならないのが、カスタマイズがしづらいためにセキュリティ要件を細かく設定できないという点です。そのためハイブリッドクラウドを選択し、機密性の高い情報を扱う業務のみをオンプレミスで構築して、それ以外をパブリッククラウドで構築するといった運用方法もあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、導入する目的や企業の規模に応じた実装モデルを考えることが重要です。
まとめ
身近なところで耳にする機会も増えている「クラウド」は、データの保管・共有をはじめとした、さまざまなサービスの提供に活用されている考え方です。クラウドサービスと呼ばれるものは、利便性に関わる5つの特徴を満たしており、正しく活用すれば業務の効率化やコストの削減につながります。
一口にクラウドサービスといっても、利用形態や提供形態によって特徴は異なるため、状況に合ったサービスを選択することが求められます。Sky株式会社では、クラウド環境の構築支援も行っていますので、クラウドサービスの導入についてお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。