QAエンジニアとは? 業務や重要性、必要なスキルについて解説

更新:2024.10.3
著者:Sky株式会社


QAエンジニアとは?

「QAエンジニア」とは、システムやソフトウェアを開発する際に、品質保証(Quality Assurance)を担当するエンジニアのことです。開発した製品が仕様どおりになっているか、不具合がなく使いやすいものになっているかなど、品質を左右するチェックポイントを洗い出し、テスト結果の分析やフィードバックまで行います。

プロジェクトや企業によって「品質」の定義は異なり、それぞれの定義に合わせた品質チェックを行う必要があることから、QAエンジニアが担う業務の内容は状況によりさまざまです。そのため、同じ品質保証の仕事でも別の名称で呼ばれていたり、役割をより細分化したかたちで求人が出されたりするケースもあります。

また、QAエンジニアはテスターと混同されることがありますが、後者は主にテストを実施して不具合を発見することを目的としているのに対して、前者は総合的な品質保証を担っています。業務内容が似ていることから、企業によっては特に区別しない場合もあります。

QAとは

QAは「Quality Assurance」の略称です。日本のソフトウェアテストの資格認定団体であるJSTQBが加盟する国際機関のISTQBの用語集では「品質保証」と訳され、「品質要件が満たされるという確信を提供することに焦点を当てた活動」と定義されています。なお、「テスト」を意味する用語として「品質保証」が使われることもありますが、正確には定義が異なり、JSTQBのシラバスでも「関連してはいるが同じではない」と明記されています。

QAテストとは

開発した製品の品質を測定し、目標とする品質を確保することを目的として行われるテストを、「QAテスト(品質保証テスト)」といいます。一般的なソフトウェアの開発工程のなかで、主にテストエンジニアによって行われるテストです。これは、開発担当者がセルフチェックとして行う「デベロッパーテスト」や、開発関係者以外が使用感を確かめる「受け入れテスト」などと区別するために使われる言葉です。

QAエンジニアの重要性

ソフトウェア開発では、小さな欠陥が大きな損害につながる可能性があります。製品の品質を担保することは、リリース後の不具合によるトラブルや返金、企業の信頼の低下といった事態を防ぐためにも年々重要度が増しています。

品質をテストするうえで、QAエンジニアのように品質保証のプロフェッショナルとしての視点を持つ人材が求められる背景には、以下のようなものがあります。

“ユーザーにとって価値ある利用体験”が重視される

近年のソフトウェア開発では、ユーザーが製品を利用することで得られる体験や経験を意味する「UX(ユーザーエクスペリエンス)」の視点が重視されています。操作性に関わるデザイン設計(UI:ユーザーインタフェース)はもちろん、機能性やパフォーマンス、安心感、信頼性など、さまざまな観点からユーザー満足度の高いシステムを設計するのが、UXデザインです。

UXデザインによって得られる満足度は、感覚や感情といったユーザーの主観に左右されます。そのため、より深くユーザーに共感し、ユーザー視点で品質をチェックして、理想的な体験ができるシステムとなっているかを確認することが求められます。

しかし開発を担当するエンジニアは、システムについて深い知見がある分、実際に製品を利用するユーザーと同じ視点に立つことが難しいのが実情です。そのため、開発担当者が品質テストを行うと結果が偏ったり、開発時点では想定できない箇所を見落としたりする恐れがあります。そこで活躍するのが、開発に関する知識や技術を持ちながら、開発担当者とは異なる視点でチェックが行える「QAエンジニア」です。

QAエンジニアは一人のユーザーとして製品を使用し、あらゆる観点からシステムやソフトウェアを評価します。QAエンジニアにとっては、「仕様書どおりになっていること」が正解とは限りません。このようなユーザー視点のチェックを開発工程のなかで行えると、改善点を早い段階で見つけ出せるため、修正にかかる工数を抑えられるという利点もあります。

開発手段の多様化によるテスト頻度の増加

ビジネス環境の変化により、顧客のニーズの移り変わりは激しくなっています。こうした環境下では、不都合が発生しても臨機応変に方向転換ができる開発手法を採用したほうが、スピード感を持って需要に対応できると考えられます。

そのため、従来は全体の計画を立ててから順番に開発を進める「ウォーターフォール開発」が主流だったのに対し、近年は柔軟かつ迅速に仕様変更が行える「アジャイル開発」が採用されるケースが増えています。

アジャイル開発では、機能単位で区切って開発プロセスを進めることで、より早くユーザーに価値を届けることを目指します。リリースまでの流れが高速化される一方で、テスト頻度の増加に対応しながら、柔軟に方向性を判断する姿勢が必要になることから、QAエンジニアのような品質保証をリードする人材が求められています。

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QAエンジニアの具体的な業務

QAエンジニアはテスターとは異なる役割を担い、総合的に品質の管理を行います。実際にテストを実施するだけではなく、テストの準備段階から結果の分析、改善に向けた提案まで広く携わり、品質を保証できる仕組みづくりに貢献します。

ここでは、QAエンジニアの具体的な業務について、主要なものを4つご紹介します。

品質保証テストの計画・設計

QAエンジニアの業務は、そのシステムにおける品質の定義について分析することから始まります。システムの特性に合わせて求められる品質や必要なテスト内容、スムーズにテストを行うための手順などを考え、テスト計画を立てます。テスト計画ができたら、関係各所と連絡を取ってスケジュールを調整し、より具体的な作業内容を定めるテスト設計の段階へと移ります。

テストに必要な機材や人員を確保するのに期間を要することもあるため、QAエンジニアは初期段階から開発に関わり、テスト計画を考え始めます。また、計画や設計を行っている途中でシステムの細かい仕様が決定することも多いため、その時々の進捗に応じて柔軟に計画・設計を進めることが求められます。

テストの実施・評価

システムが出来上がれば、テスト計画に沿って動作や品質のチェックを進めます。QAエンジニア自身は実務を行わないケースもありますが、対応領域の一つとして把握しておかなければならない大切な工程です。

仕様書どおりになっているかどうかはもちろん、ユーザーにとって快適に使用できるシステムになっているかなど、多角的な視点でチェックを行います。テストが完了したら、結果に応じてシステムの品質を評価します。

自動化の検討

前述のとおり、近年のソフトウェア開発はスピード感を求められる傾向にあります。そこで、テストにかかる期間を短縮するために取り入れられているのが「テスト自動化」です。自動化することで時間を短縮できるほか、人員不足の解消や人為的ミスの削減につながるというメリットがあります。

テスト自動化には相応の準備が必要となることから、プロジェクトによって導入が適さない場合もあるため、テスト自動化の要不要を判断することも、QAエンジニアの業務の一つだといえます。また、テスト自動化ツールの管理をQAエンジニアが担うケースもあります。

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テスト結果の分析・フィードバック

テスト後には、テストで発見された不具合や問題点を分析し、開発者へフィードバックを行います。不具合の数や内容を報告するほか、改善案についても提示します。

QAエンジニアは、製品の品質について責任を負う立場です。そのため、明らかな不具合を見つけるだけではなく、さまざまな側面から「品質基準をクリアしているといえるか」を厳しい目でチェックしなければなりません。ときには、さらなる品質向上を目指して新たな提案を行うこともあります。

QAエンジニアに必要なスキル

「品質保証」という重要な責任を背負う職種のため、一般的には未経験でQAエンジニアを目指すのはハードルが高いといわれています。プログラマーやシステムエンジニアなどの関連スキルを習得した後に、キャリアアップの選択肢としてQAエンジニアの道を検討するという場合も少なくありません。しかしSky株式会社では、さまざまな評価 / 検証業務に携わるなかで経験を積み、QAエンジニアとして活躍するキャリアパスがあります。

なお、QAエンジニアを目指す上で役立つ関連スキルには、次のようなものが挙げられます。

プログラミングスキル

QAエンジニアは、製品の仕様や構造を把握したうえでテスト計画を立案し、レビューや評価を行わなければなりません。そのためには、開発に使用された言語を理解し、開発資料を読み解く能力が要求されます。

システムやソフトウェアの開発には「プログラミング言語」が使われます。プログラミング言語には多くの種類があり、それぞれに特色があるため、担当するプロジェクトで使用される言語に対応できるよう幅広く知識を持っておくことが大切です。

また、改善案などを提示する際も、プログラミングの実務経験があれば実際の業務内容に即した提案が可能になります。また、テスト自動化ツールの運用にあたって、自身でツールを作成する場合にもプログラミングスキルが役立ちます。

ソフトウェア開発に関する知識

ソフトウェア開発は、要件定義や設計、開発といった工程を踏んでテスト工程に進みます。さらにリリース後には、運用・保守を継続しなければなりません。品質テストの計画・設計を行う際には、テストの流れだけでなく開発プロセス全体の概要を把握して、各工程で何が行われるのかを理解しておくことで、テスト業務をよりスムーズに進めることが可能になります。

また状況によっては、工程の見直しや開発プロセスそのものの問題点について、QAエンジニアから指摘をすることもあります。プログラマーやシステムエンジニアとのやりとりも多い職種のため、開発プロセスに関する知見は不可欠といえます。

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テストの技法に関する知識

品質テストには複数の技法があり、どのような技法が推奨されるかはプロジェクトの特色によって異なります。そのため、品質テストの計画・設計を担うQAエンジニアは、さまざまなテスト技法に精通している必要があります。

また、起こり得るパターンを網羅し、そのすべてをテストすることは難しいため、品質テストは基本的に必要最低限のリソースで実行できるように設計します。漏れがなく無駄もないテスト計画を考案するためには、各テストにどのようなメリット・デメリットがあり、どんな結果が得られるのかをきちんと理解しておくことが大切です。

代表的な技法としては、ブラックボックステストやホワイトボックステスト、境界値分析、状態遷移テスト、ストレステストなどが挙げられます。チェックしたいのは状態の変化なのか、入力条件の組み合わせなのか、組み合わせのパターンはどこまで考慮すべきかなど、テストの目的やスケジュールに合わせて技法を選択します。

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品質保証・マネジメントのスキル

QAエンジニアとして務めを果たすためには、ソフトウェア開発全般に関わる知識のほか、品質保証に関する知識やマネジメントのスキルを養うことも大切です。

満足度の高い品質を保てるように管理したり、開発工程全体をコントロールしたりと、QAエンジニアは高い管理能力が求められる場面が多い職種です。そのため、マネジメントスキルやコミュニケーションスキルを身につけることが推奨されます。

また品質保証の知識としては、国際的な規格である「ISO」について学ぶことで、開発にあたって遵守すべき要件の理解につながります例えば、品質に関する代表的な規格として「ISO9001(品質マネジメントシステム)」があります。ISOでは品質マネジメントシステムをはじめとして、システムの開発に関わるさまざまな規格を定めています。開発現場によっては、QAエンジニアとして働くためにISOの知識が必須条件となるケースもあります。

まとめ

QAエンジニアは、ソフトウェア開発における品質保証を総合的に担っている、責任ある職種です。開発プロセスに関する知識やプログラミングスキルなどを役立てながら、高いユーザー満足度を獲得するために大きく貢献します。

Sky株式会社では、ソフトウェア開発における評価 / 検証業務の支援を行っており、QA業務に関する技術や経験を生かしたサービスのご提供が可能です。QAエンジニアの不足や品質向上についてお困りの際は、ぜひお問い合わせください。

著者 Sky株式会社

Sky株式会社は、家電のシステム開発を手掛けたのをきっかけに、デジタル複合機やカーエレクトロニクス、モバイル、情報家電、さらに自社商品として教育分野における学習活動ソフトウェアや、公共・民間向けクライアント運用管理ソフトウェアなど、幅広い分野でのシステム開発を展開しております。

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