ディープラーニングとは? 仕組みや活用方法を詳しく解説
ディープラーニング(深層学習)とは
ディープラーニングとは、AI(人工知能)技術における機械学習の一つです。コンピューターが自動的に膨大な量のデータを学習し、データに含まれるルールやパターンなどの特徴を発見する技術を指します。
ディープラーニングの仕組み
ディープラーニングは、人間の脳神経回路の構造を模したニューラルネットワークがベースになっています。ニューラルネットワークとは、データを受け取る「入力層(input layer)」、データを処理する「隠れ層(hidden layer)」、処理結果を出力する「出力層(output layer)」の3つで構成されており、これらがつなぎ合わさってデータ処理や伝達が行われます。
従来のニューラルネットワークはこの隠れ層が2~3層程度であるのに対し、ディープラーニングのニューラルネットワークはさらに多くの層を持ちます。この多層化された隠れ層により、大量のデータの中に含まれる特徴を段階的により深く学習することができ、認識精度の著しい向上につながっています。
ディープラーニングとAI・機械学習の違い
前述のとおり、ディープラーニングはAI技術の一つであり、機械学習の一種で、機械学習の発展型とも捉えられています。まず、AIと機械学習について、その意味を確認します。
AIとは
AIは、一般的に人の言葉の理解や認識、推論、学習といった知覚や知性を人工的に再現する技術ですが、実際には決まった一つの定義があるわけではありません。ディープラーニングもAI技術の一つであり、その中でもデータに基づいた機械学習を飛躍的に向上させた技術です。現在、AIは自動運転、医用画像診断、気象予測、自動翻訳、生成AIなど、非常に幅広い分野で実用化されています。
機械学習とは
機械学習はAI技術の一つであり、人による明示的な指示によるのではなく、AIが自律的に学習を行うための技術です。大量のデータを取り込みアルゴリズムに従って分析し、パターンや規則性といった特徴を見つけ出すことで、予測や分類などの精度を向上させることができます。機械学習はビッグデータ時代といわれる現代において、膨大なデータを効率的に処理するために重要な役割を担っています。
ディープラーニングと一般的な機械学習の違い
機械学習を用いたシステムの場合、データを学習し、それを基に何らかの予測を行ったり、作業を自動化したりするなど、特定のタスクをこなせるようになります。しかし、一般的な機械学習ではデータを学習させる際に、物事を判断する基準(特徴量)をあらかじめ人間が指定する必要があります。ディープラーニングを用いたシステムの場合、ディープラーニングは自ら学習する能力があるため、物事を判断する基準もディープラーニングの過程で決定するという特徴があり、機械学習よりもさらに自律的に学習を行う技術だといえます。
ただし、ディープラーニングの技術を活用するためには、学習させるための膨大な量のデータが必要です。大量のデータを確保できる場合はディープラーニングの技術を活用できますが、確保することが難しい場合は機械学習の技術を活用することになります。
ディープラーニングは、なぜ重要なのか?
ディープラーニングが重要視されている理由の一つに、認識精度の高さが挙げられます。現在、ディープラーニングは人間の認識精度を超えるほどの高いレベルに到達しており、自動運転や医療システムなどさまざまな分野での実用化に向けて、世界中で研究・開発が進められています。
ディープラーニングがこれほどまで注目されるようになったのは、2016年、囲碁のチャンピオンに勝利した人工知能の囲碁プログラム「AlphaGo」による影響が大きいといわれています。この囲碁プログラムにディープラーニングの技術が用いられており、それまでの機械学習では困難だった快挙を成し遂げたことで注目を集めました。
ディープラーニングの種類
ひと口にディープラーニングといっても、いくつかのアルゴリズムが存在します。それぞれに得意とする分野があり、システム開発で活用する際はどれを選ぶべきか、しっかり検討する必要があります。ここでは、代表的なアルゴリズムをご紹介します。
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
畳み込みニューラルネットワークとは、主に画像認識で用いられるアルゴリズムで「CNN(Convolutional Neural Network)」とも呼ばれます。画像の特徴情報を失うことなく、そのまま2次元で処理できるのが特徴です。
再帰型ニューラルネットワーク(RNN)
再帰型ニューラルネットワークとは、過去のデータから学習した結果を次の層の入力として利用し、時系列にデータを扱えるようにしたもので、「RNN(Recurrent Neural Network)」とも呼ばれます。例えば、店舗の日次売上データやホームページのアクセス数など、時間の経過とともに値が変化していく時系列データを扱うことに適したアルゴリズムです。
敵対的生成ネットワーク(GAN)
敵対的生成ネットワークとは、画像データから特徴を学習し、実在しない画像データを生成するアルゴリズムで、「GAN(Generative Adversarial Networks)」とも呼ばれます。2つのニューラルネットワークで構成され、それらがアルゴリズム内で互いに競合し、偽物のデータを作り出すことと、それが本物かどうかを見抜くことを自動で繰り返し学習して、精度を向上させます。
Transformer(トランスフォーマー)
エンコーダとデコーダに畳み込みニューラルネットワークや再帰型ニューラルネットワークを用いず、Attentionというモデルのみで結んだアルゴリズムです。人間の話し言葉や新聞の書き言葉などを含む自然言語を高い精度で認識でき、画像認識などにも応用されています。生成AIの一種である「ChatGPT」のベースにもなっています。
ディープラーニングは何に使えるの?
さまざまな分野で実用化が進められているディープラーニング。ここでは、私たちの身の回りにある活用例をご紹介します。
自動運転
車載カメラに映った障害物や人を認識して自動で停車する、車線からはみ出さずに前の車に続いて走る、といった基本的な運転支援や、特定条件下での自動運転機能を実現するADAS(先進運転支援システム)の開発に活用されています。
医療
CTスキャンやレントゲン、MRIなどで撮影された医用画像を読み取り、自動的にがん細胞を検出するなど、多種多様な病変や臓器の診断を支援するシステムに活用されています。また、新薬を開発するまでの時間を短縮させることを目的に、薬の分子構造などを学習させるなどの活用例もあります。
製造
製造業においては、製品の製造過程で発生する不純物の検出などに活用されています。ディープラーニングの画像認識を用いて製品の特定のパターンを認識させることで、外観検査などでひび割れや欠損といった問題点を素早く正確に検出します。
エレクトロニクス
エレクトロニクスの分野では、主に音声認識に活用されています。人の声に反応して命令の内容を理解し、連携する家電製品を操作する「ホームアシスタントデバイス」などが挙げられます。
情報セキュリティ
情報セキュリティの強化のためにも、ディープラーニングが導入されることがあります。例えば、過去のサイバー攻撃のデータを学習させ、ネットワーク内の監視を強めるといったことに活用されています。
ディープラーニングの活用事例
Sky株式会社では、ディープラーニングを活用したさまざまなシステム開発に携わっています。ここでは弊社の主な開発事例をご紹介します。
車載(AD / ADAS)
自動運転や先進運転支援システム(ADAS)向けの開発に携わっています。具体的には、車載カメラに映った車外の映像から、歩行者や自動車、白線や標識などとの位置関係および速度差を自動で検出。自動車の車間調整やレーンキープ、車線変更や自動駐車、衝突回避などの運転支援に役立てています。また、車載カメラに映った車内の状況も自動で認識。ドライバーの表情を認識してよそ見や居眠り運転を検知したり、バスの乗客の姿から立っているか座っているかなどを判断したりすることで危険予知につなげています。
Sky株式会社の車載(AD / ADAS)の実績紹介について詳しくはこちら
車載(AD / ADAS)
外観検査 / ロボティクス
生産ラインに流れてくる製品を認識し、傷やラベルずれ、へこみ・ひずみを自動で検出したり、ミリ精度の計測を行ったりするなど、製品を検品することができます。また、ロボットアームなどの産業用ロボットを、ディープラーニングを用いて制御。例えば、製品のパーツを認識して落下させないよう正確につかみ、取りつけや組み立てを行うなど、製造ラインにおけるさまざまな作業の自動化に役立ちます。
Sky株式会社のロボットアームによる部品搬送の例について詳しくはこちら
ロボティクス
医療
高精度の医用画像診断支援システムの開発では、まず医用AIに学習させる高度な学習データの作成(アノテーション)が必要となりますが、弊社では医用画像に写った病変の着目点など、医師が無意識に判断している情報を細かく引き出し、データの品質向上につなげています。
また、それらデータによる医用AIの学習は段階ごとに異なる手法を適用し、実現性や学習データのバランスなどの観点から分析・改善を実施。さらに、単純な交差検証では見えないウイークポイントを見つけて対策することで、さらなるロバスト性の向上と高精度化を図っています。
Sky株式会社の医療向けAIシステムの構築方法について詳しくはこちら
医療向けAI開発
AI-OCR
手書きや印刷データ、画像などのテキスト部分を認識し、文字データに変換する光学文字認識機能を指す「OCR」。弊社が開発に携わるAI-OCRでは、対象に合わせて学習させた専用のAIモデルに文書画像を読み込ませるだけで、項目分類されたテキスト(構造化テキスト)を取得。レイアウトが異なる文書や、同じ項目を意図しているものの単語表現が異なる「表記揺れ」にもAIで対応することが可能です。自治体などで提供される証明書や、病院の診断書、公共料金の明細など、紙の資料をデータ化する際に役立てられます。
生成AIソリューション
多くの企業や自治体がDX化に向けてAI活用を活発化させており、生成AIの試験運用を開始させているところもあります。弊社では、Microsoft Azureの生成AIサービス「Azure OpenAI Service」を活用した、業務系システムの開発を支援。高いセキュリティでお客様の機密情報を守りながら、社内で利用するチャットボットツールや蓄積されたデータの利活用環境などを構築し、組織のDX化をサポートします。
AI・画像認識システムの開発ならSky株式会社
事業内容
Sky株式会社では、AI・画像認識技術者が数多く在籍するほか、車載・医療などさまざまな分野におけるシステム開発に携わっており、技術やノウハウを蓄積しています。技術者を育成する独自カリキュラムの研修を土台とし、運用シーンに合わせたシステム検討や、認識率改善に向けた高品質なアノテーションの実施など、要件定義から納品までシステム開発を全面サポートします。
Sky株式会社が携わる領域
組込み / 制御 / アプリケーション開発
弊社は、創業時から組込み / 制御システム開発を強みとし、アプリケーション開発など幅広い開発実績を有しています。サービス分野についても、カーエレクトロニクス開発やモバイル開発、デジタル複合機開発、デジタルカメラ開発、社会インフラ、医療機器開発、FAシステム開発など、さまざまな領域に携わっています。
Sky株式会社の組込み / 制御 / アプリケーション開発について詳しくはこちら
組込み / 制御 / アプリケーション開発
ソフトウェア評価 / 検証・サポート
ソフトウェア評価 / 検証事業は、組込みソフトウェアの品質テスト(第三者検証)を中心としたサービスとして始まりました。現在は、自動車関連システム / サービスや、業務系システム、社会インフラや通信システムなど、幅広い分野でシステムの品質保証業務に携わっています。
Sky株式会社のソフトウェア評価/検証について詳しくはこちら
ソフトウェア評価/検証
業務系システム開発
金融・保険業界のコールセンターシステムや、医療業界の内視鏡ITシステム、建設業界の生産管理システムを開発するなど、多様な業界・業種で実績を積み重ねてきました。主要メーカー製品や各種スマートデバイスなどと連携するシステムをはじめ、クラウドサービスの利用を進めることで、ビジネス環境の急速な変化にも迅速かつ柔軟に対応できるシステムを開発しています。
Sky株式会社の業務系システム開発について詳しくはこちら
業務系システム開発
まとめ
この記事では、ディープラーニングの仕組みや種類、機械学習との違いや活用例などについてご紹介しました。業務効率化や自動化に向けて、ディープラーニングを用いたシステム開発のニーズは今後ますます高まるとともに、業界・業種問わず活用の幅がさらに広がることが予想されます。弊社としても今後の発展に注目してまいります。
Sky株式会社は、幅広い分野においてディープラーニングを活用したシステム開発実績を有し、豊富な経験で培った技術やノウハウを生かした、高品質で高効率な開発を行うことが可能です。ディープラーニングのビジネス活用をご検討でしたら、ぜひSky株式会社までご相談ください。
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