今回構築したファイルサーバーはいろいろな技術を使って成り立っていますので、 1つ1つ紹介させていただきます。
連載予定は以下のとおりで、今回は③を紹介いたします。
前回の記事
連載予定
①:フェールオーバークラスター
②:クラスター共有ボリューム
③:記憶域スペース【今回の記事】
④:記憶域スペースダイレクト
⑤:入れ子になったミラー加速パリティ
⑥:データ重複除去
⑦:シャドウコピー
⑧:BitLockerの解除キー(ADとリカバリキー)
番外編:DFS名前空間
今回はフェールオーバークラスターからちょっと離れたお話となります。
簡単に言うと、Windows標準の拡張性があるソフトウェアRAIDのような機能の紹介です。
特徴を順番に紹介します。
1. サイズ・種類の違う 物理ディスクをまとめて管理できる。
余っている「HDD」や「SSD」、「外付け USB HDD」なんかも含めて全部まとめて再構成できるので既存の資産を有効活用するうえではとても活躍します。
複数の仮想ディスクに分けることも可能
いったんまとめたうえで、その範囲内で好きな単位で分けることができます。
2. RAID0として速度重視の仮想ディスク(シンプル)の作成
仮想ディスクを作成する際に、データの格納方法について選択が可能です。複数の物理ディスクに分散して書き込み、読み込みを行うため、読み書きのアクセス速度が向上します。
しかし、1つでも物理ディスクに障害がおきるとデータが破損してしまうという諸刃の剣となっています。格納するデータに関しては、「ディスクアクセス性能」のみを重要視する一時的に格納される中間データなどで使用することをお勧めします。
3. RAID1のように耐障害性を高めた仮想ディスク(ミラー)の作成
1台HDDが壊れても大丈夫な構成です。その代わり容量が2分の1になります。
具体的には、同じデータを必ず2つの別の物理ディスク上に格納します。
後述するRAID5(パリティ)構成よりも書き込みが早いため、「耐障害性」と「ディスクアクセス性能」を重視する場合はこちらを選択することが多いです。
3方向ミラーにも対応
こちらは同じデータを3つの物理ディスクに書き込むので、さらに耐障害性が高いです。もちろん、3か所に書き込むので、容量は3分の1になります。
4. RAID5のように物理ディスク容量効率性を上げつつ、耐障害性も高めた仮想ディスク(パリティ)の作成
先ほどの「ミラー」構成は容量が2分の1(3方向の場合3分の1)になってしまいます。それを解消したのがパリティ構成です。
複数の物理ディスク分散してデータを書き込み、そのパリティ(誤り検知・補正)情報をデータとは別の物理ディスクに格納することで、「耐障害性」と「容量効率」を上げたものとなります。
読み込む際は、複数の物理ディスクから並行して読み出しを行うため早いのですが書き込み処理に関してはパリティ計算の処理が入るため、「ミラー」よりも性能が大きく劣ります。
書き込み頻度が少なく「耐障害性」と「容量効率」を重要視する場合に選ばれます。
ハードウェアRAIDとの違いは以下のようになります。
負荷という概念ではさすがに負けてしまいますが、それ以外の使い勝手がかなり上昇しますのでWindows限定であれば選択しない手はないのかなと思っています。
○ ディスク
記憶域プール | RAID |
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容量が違うディスクを使用することができ、全容量が使用可能となる | 容量が違うディスクを使用すると、一番容量の少ないディスクの容量が全ディスクで利用される |
○ 仮想化
記憶域プール | RAID |
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シンプロビジョニングがサポートされる 複数ボリュームの設定が簡単 |
シンプロビジョニングのサポート製品は少ない |
○ 増設
記憶域プール | RAID |
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記憶域プールは、ディスクの増設は容易 | RAIDは基本的にRAIDの再構築が必要となる |
○ コントローラー
記憶域プール | RAID |
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WindowsOSがディスクを管理するため、RAIDコントローラーなどのパーツは不要 | RAIDコントローラーが必要 |
○ システム負荷
記憶域プール | RAID |
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WindowsOSがディスクを管理するため、パソコン・サーバーのCPUが利用される CPU負荷によってアクセス速度や他のアプリケーション速度に影響が出る可能性がある |
RAIDコントローラー内のCPUが使用されるため、パソコン・サーバーのCPUは利用されない |
○ 環境依存
記憶域プール | RAID |
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記憶域プールはOSに依存しているため、他のOSでは利用できない | RAIDは基本的にOSに影響しない |
今回のファイルサーバーでは、この記憶域スペースの技術を基盤にさらにキャッシュや入れ子回復性なども含めた構成にしました。
そのあたりの詳しい解説は、また後程の記事で紹介いたします。