データ分析とは何? メリットや手法、分析ツールや注意点を解説
現代のビジネス環境では、ビッグデータをはじめとする各種データをうまく活用できるかどうかが、企業の成長を左右する鍵を握っています。市場が激しく変動し、顧客のニーズが日々変わっていくなかで、従来のような経験や勘に頼った企業経営は不安定さが拭いきれません。明確な根拠に基づいた透明性が高い意思決定を行うことにより、継続して企業価値を高めていくためにもデータ分析は重要な取り組みです。この記事では、データ分析の概要から具体的な分析手法や押さえておくべきポイントまでを紹介します。
データ分析とは何?
データ分析とは、さまざまな方法でデータを収集し、収集した大量のデータを整理・加工・分類したのちに、分析を行うプロセスです。市場の動きや顧客のニーズなど、ビジネスに必要なデータを適切にデータ分析することで、数値に基づいた意思決定が可能になります。また、今まで気づけなかった課題などを見つけるきっかけにもなり、ビジネスチャンスの拡大にもつながります。
データ分析の目的と重要な理由
データ分析をする目的は、データという「明確な根拠に基づき、透明性が高い意思決定をすること」「問題解決を迅速に行うこと」などが挙げられます。加えて、データ分析で仮説と検証を繰り返すことで、意思決定自体の精度を高めることもデータ分析の大きな目的です。
消費者の価値観が多様化し、ビジネスの市場が加速している現代において、データ分析の重要性は非常に高いです。変化の激しい市場の中でも自社の課題を効率的かつ効果的に解決し、企業価値を高めていくため、データ分析は必須ともいえる取り組みです。
部門ごとのデータ分析項目
それでは実際にデータ分析を行う際、どのようなデータを収集・分析すればよいのでしょうか。ここでは一般的な企業における各部門を例に、データの分析項目の例を紹介します。
部門 | データ分析の項目(例) |
---|---|
営業部門 | ・売上予測 ・顧客の属性(性別、年齢、居住地域など) ・顧客満足度の評価 |
マーケティング部門 | ・キャンペーンに参加した人々の情報 ・ブランド認知度・好感度の推移 ・競合他社の商品やサービスの情報 |
人事部門 | ・従業員の情報(名前、住所、生年月日など) ・採用への応募状況や応募者の情報 ・社内研修制度やセミナーの進捗度 |
経理部門 | ・予算と実績の比較情報 ・資金調達の状況 ・財務データ(収益、経費、資産推移など) |
在庫管理部門 | ・商品の在庫数 ・需要予測に合わせた生産計画 ・商品製造に関する材料の数量や費用 |
サポートセンター部門 | ・顧客からのお問い合わせ内容 ・問題解決までの所要時間 ・サポートセンターを利用した顧客からのフィードバック |
データ分析の手法10選
続いて、データ分析に用いる主な手法を紹介します。データ分析で活用される手法は数多くあるため、目的や状況に合った分析手法を選択することが重要です。ここでは10個の手法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
クロス集計分析
クロス集計分析とは、集めたデータを属性や設問で細分化して分析する手法です。データの関連性やパターン、傾向を分析するのに適しており、アンケート分析の基本といえます。例えば、性別や年代別の軸で分析することで、男性30代と女性30代の比較など、差異を明確に判断することも可能です。昨今ではエクセルなどの表計算ソフトウェアを活用することで、手軽にクロス集計分析を実施できます。
バスケット分析
バスケット分析とは、スーパーやコンビニなどの小売店で、それぞれの商品の同時購入に着目し、効果的に併売ができているのかを分析する手法です。顧客がレジに持っていく買い物かご(バスケット)の中身を分析することから、バスケット分析と呼ばれています。バスケット分析では、「同時購買率(支持度)」「指定商品同時購買率(信頼度)」「関連商品購買率(期待信頼度)」「リフト値」という4つの指標を用いて分析するのが一般的です。
クラスター分析
クラスター分析とは、さまざまな異なるデータが混ざり合っている状態から、似たものを集めてグループ(クラスター)分けし、対象を分析する手法です。人間に限らず、企業や商品、地域など、幅広い分野を対象としています。市場やターゲットのセグメント分けやポジショニングの確認などに活用されるのが一般的です。見込み客の潜在ニーズの把握やニーズに合わせた商品開発を行うための情報を得やすいこともクラスター分析の特徴といえます。
ABC分析
ABC分析とは、商品や売上、顧客などの指標の中から重視する評価軸を決めて分類し、A・B・Cの3段階でランク付けして分析する手法です。例えば、月に1,000個以上売れている商品をA、1,000~500個の商品はB、500個以下はC、という具合です。ABC分析の最大のメリットは、商品や顧客などの優先度を把握できることにあります。上記の例だと、Aの商品の売り場を拡大し、Cの商品の売り場を縮小するという対応を取ることで、売上の向上を図ります。
ディシジョンツリー分析
ディシジョンツリー分析とは、収集したデータを樹形図の形に整理して、複数の検証結果を導き出す分析手法で、決定木分析とも呼ばれます。データの中から特定の情報を取り出して整理する場合などに活用され、目的変数(分析したい大本のデータ)に影響を及ぼしている説明変数(分析したいデータをより細かく分類したもの)を見つけ出すのに適しています。目的変数に最も影響を与えている説明変数を見つけることで、ターゲット選定などのマーケティング施策に応用することが可能です。
因子分析
因子分析とは、統計学上のデータ分析手法の一つであり、データの背後に潜んでいる要因(因子)を明らかにする分析手法です。アンケート結果を分析し、消費者や回答者の「潜在意識」「隠れた思い」のようなものを分析するのに適しています。企業イメージや顧客満足度などのデータから、そのデータが生まれた背景や潜在意識に関する共通因子を見つけ、消費者の心理を細かく分析することで、より効果的なプロモーションが実施できます。
回帰分析
回帰分析とは、結果と要因の数値関係を調べ、それぞれの関係性を明らかにする統計的な分析手法です。要因の数値は「説明変数」、結果の数値は「被説明変数」と呼ばれます。説明変数が1つで、被説明変数との主に2つの変数の関係を分析する「単回帰分析」と、説明変数が2つ以上あり、複数の変数の関係性を分析する「重回帰分析」があります。例えば、売上を被説明変数、商品価格や値引き額を説明変数とした場合、商品価格や値引き額によって売上がどう変わるのかが分析できます。
アソシエーション分析
アソシエーション分析は、ビッグデータの中から相関関係を見つけ出す分析手法です。購買データなどを分析し、顧客の購買行動の関連性を検証するのに適しています。主に小売業界で効率的な販売施策を立てるために活用され、先述したバスケット分析もアソシエーション分析の一種です。
一見すると関連性が見当たらないような商品同士でも、分析の結果、深い関係性が見つかることも珍しくありません。アソシエーション分析を行うことで、効果的にアップセル(高単価商品の提案)やクロスセル(関連商品の提案)が行えます。
主成分分析
主成分分析は、多数の変数データの情報を少量のデータに要約し、分析する手法です。データの本質を捉える強力な手法であり、多数のデータがある状態では見えづらいデータの本質も、要約することで認識しやすくなります。
データの分散が最大となる方向を見つけ、それを新たな軸(主成分)とすることで、データを要約します。データ量が少なくなることで分析時間も削減できるため、効率的に分析できることも主成分分析のメリットといえます。
グレイモデルによる分析
グレイモデルによる分析とは、曖昧なデータを明確なデータと不明なデータから予測する分析手法です。白(明確なデータ)と黒(不明なデータ)、どちらにも属さない灰色(曖昧なデータ)と、データを色分けすることからグレイモデルと呼ばれています。リスクマネジメントなどに用いられることが多いグレイモデルですが、グレイモデル単独で分析を行うことは少なく、一般的には別の分析手法と一緒に活用されます。
データ分析を行うことのメリット
ここまでデータ分析の目的や具体的なデータ分析手法について紹介してきましたが、実際にデータ分析を行うことで企業はたくさんのメリットを享受できます。ここではデータ分析のメリットについて紹介します。
細かな分析で課題を見つけられる
今までのビジネスの現場では、経験に基づいて課題を見つけるのが主流でした。しかし、データ分析では人間の力だけでは難しいような細かな分析を行うことができ、これまで想定もしていなかったような課題が見つかることも珍しくありません。
このようにデータを活用することで現状が見える化されて、企業の課題を見つけやすくなることは、データ分析のメリットの一つといえます。データ分析を行うことで、データの相関関係なども理解でき、より詳細に解決すべき課題を洗い出すことが可能です。
データに基づいた客観的で適切な意思決定が行える
データ分析を実施することで、データに基づいた客観的で透明性が高い意思決定が行えます。企業での意思決定は、企業の今後を左右する重要な事項であるため、勘や感情によってそれらが判断されることは好ましくありません。また、主観が入り込む余地をできる限り減らすことで、迅速に意思決定できることも大きなメリットといえます。
ビジネスチャンスの拡大に役立つ
データ分析はビジネスチャンスの拡大にも役立ちます。上記のメリットでも述べたような、課題を発見することでも新たなビジネスチャンスは生まれますが、データの組み合わせによって新しい価値を創出することも可能です。
単体のデータでは一見価値がないように見えても、データ分析を行い、ほかのデータと統合することで新たな価値が生まれる可能性があります。そのようなデータはビジネスチャンスの拡大に貢献し、結果として売上や利益の向上につながる可能性が高いです。
データ分析を行うことのデメリット
データ分析にはたくさんのメリットがありますが、「データ分析に要する業務の増加」や「コストの発生」といったデメリットも少なからず存在します。ここではデータ分析を行うことによるデメリットを紹介します。
データ分析に要する業務が増加する
データ分析を行う場合、データの収集・加工・蓄積・統合・分析・可視化などが必要となり、必然的に業務量が増加します。さらにデータサイエンスやビジネスに関する知識も必要なことから、特定の人材に負担が偏りやすい業務ともいえます。増加したデータ分析の業務負荷を軽減するため、データ分析を行う際には効率的にデータを可視化したり分析したりできる「BIツール」などを積極的に活用していくことがお勧めです。
スキル育成などのコストが発生する
前項で述べたように、データ分析にはさまざまなスキルが必要であり、属人化しやすい業務です。そのため企業としては、データ分析に必要なスキルを有した人材の採用や育成に力を入れる必要があります。また、社員間でデータ分析に関する知識に大きなギャップがあると、業務がうまく回らなかったり、コミュニケーションコストが増加したりする可能性が高くなります。このような、人材の採用や育成にコストが発生することも、データ分析を行う上でのデメリットといえます。
データ分析の進め方
続いて、データ分析の進め方について紹介します。分析目的によって、やや手順が異なる場合もありますが、基本的には「データ分析の目的を決める」「データ分析の手法を選ぶ」「データを収集する」「分析の結果を評価して改善する」という4つのプロセスで進めます。
1:データ分析の目的を決める
最初に決めるべきは、データ分析を行う上での目的です。データ分析で「何を解決したいのか」をはっきりさせることで、目的を果たすために必要なデータや分析手法も明確になります。目的が不明瞭のままでデータ分析を進めても、期待していたような結果を得られなかったり、かえって業務効率の低下につながったりします。自社が抱える課題を明確にし、しっかりと目的意識を持った上でデータ分析を進めることが重要です。
2:データ分析の手法を選ぶ
目的を決めた後は、その目的に即したデータ分析の手法を選びます。例えば、売り場のレイアウトを見直すために顧客の買い合わせを分析したい場合は、「バスケット分析」や「アソシエーション分析」が適しています。ほかにも、顧客の行動パターンをグループ分けして分析したい場合は、「クラスター分析」を活用するのが良いといわれています。自社で必要なデータを洗い出し、目的を達成するためにどの手法が最適かを検討することが大切です。
3:データを収集する
手法が決まったら、設定された目的のために必要なデータを収集します。データの収集にはアンケート調査やWebサイトのログ、POSデータなどが役立ちます。また、外部のデータとして、市場調査結果や競合情報などを活用する方法もあります。データを収集する際は、データの偏りや情報セキュリティに注意して行いましょう。場合によっては、データの欠損や重複を修正する「クレンジング」や、データが一定の範囲に収まるようにする「スケーリング」も必要になります。
4:分析の結果を評価して改善する
最後に、分析の結果から、最初に決めた目的に対して効果があったかどうかを評価します。データ分析は一度実施したら終わりではなく、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善していくことが大切です。また、改善していくことで、分析したデータが着実に自社へ蓄積されていきます。データ分析でもPDCAサイクルを回すことで、さらなるビジネスの発展や課題解決につながっていきます。
データ分析を行う際のポイント
ただ漠然とデータ分析を行っても、期待するような結果を得ることはできません。ここではデータ分析を行う際に押さえておくべきポイントを紹介します。
目的・目標はできるだけ細かく明確に設定する
前項の「データ分析の進め方」でも紹介しましたが、データ分析を行う際には、目的・目標をできるだけ細かく明確に設定することが重要です。分析手法の選択から分析結果の評価まで、そのすべてで最初に決めた目的や目標が基準になります。そのため、より細かく明確に設定するに越したことはありません。もし、明確に決められない場合でも大まかな目標は決めておきましょう。その場合は取り組みを進めながら目的を絞り込み、より細かく目標を設定していくことが大切です。
仮説を立ててからデータ分析の手法を選ぶ
データ分析では、どの場面においても仮説を立てることが重要です。仮説とは、文字どおり仮に立てる説を意味します。仮説をすべて洗い出そうとすると作業量が膨大になるため、実際にデータ分析を行う際は、ある程度優先順位をつけて絞り込んでいくことが必要です。また、仮説をしっかりと立てることで検証がしやすくなり、分析後の評価もより有意義なものになります。意味のあるデータ分析を実施するためにも、必ず仮説を立ててからデータ分析の手法を選びましょう。
データ分析の後は必ず評価を行う
導き出した仮説が正しいかどうかは、分析するだけでは判断できません。そのため、データ分析の後は必ず評価を行う必要があります。収集したデータは適切であったかどうか、そもそも選択した分析手法に問題がなかったか、といったことを確認します。また、データ分析後の評価は客観的な判断を得るため、可能であれば直接分析に関わっていない人物に評価してもらうのが好ましいです。
BIツールを活用して効率化を図る
前述したとおり、データ分析は工程が多いため業務負担が増えることが課題となります。そのようなデータ分析業務を効率化するために、「BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)」の活用が推奨されています。BIツールは特にデータの収集と可視化に役立ち、社内の各種システムから横断的にデータを収集したり、分析しやすいようデータをグラフ化したりすることが可能です。データの収集や集計における人為的ミスを防ぎながらも効果的にデータ分析に取り組めるBIツールを活用することが、データ分析を効率化するための近道といえます。
Sky株式会社のデータ分析
データ分析をはじめ、データの有効活用は企業の発展に大きく貢献します。そのため企業としては、データを収集・蓄積するといったデータ分析に必要な仕組みづくりや、データの管理や規制に取り組むことが求められています。Sky株式会社では、コンサルティングやマネジメント、構築、活用支援など、さまざまなフェーズでお客様のデータ活用を支援しており、データ分析プロジェクトの立ち上げ期間の短縮が可能です。データ分析やデータ活用にお困りの場合は、ぜひSky株式会社までお問い合わせください。
まとめ
この記事では、データ分析について紹介しました。データ分析は明確な根拠に基づいた透明性が高い意思決定をするために不可欠な取り組みです。また、近年では市場の変化が激しく、顧客のニーズも日々変化することから、その重要性がますます増しています。データ分析では仮説を立てて、目的意識をしっかり持ちながら進めていくことが重要です。企業として成長していくためにも、データ分析をしっかり行い、分析結果をマーケティング活動などに活用していただければと思います。