AIに奪われる仕事とは? 共通点や特徴、奪われないために必要なスキルについて徹底解説
AI(人工知能)は、私たちの生活に大きな変革をもたらしています。特にChatGPTやMicrosoft Copilotなどの生成AIは、日常生活やビジネスの場で広く利用されるようになりました。しかし、AIやロボットによる第4次産業革命が進むなかで、労働力不足の緩和やコスト削減を目的とした自動化が推進され、「AI大量失業時代」が到来する可能性が指摘されています。 このような時代において、AIに仕事を奪われないためには、どのようなスキルが求められているのでしょうか。本記事では、AIに奪われる仕事の共通点や特徴、そしてAIに代替されないために必要なスキルについて解説します。
AIに奪われる仕事がある理由
近年、人手不足の緩和や業務効率の向上を目的として、多くの企業がAI技術の導入・検討をしています。ただ、そうしたAI技術の発展が注目される一方で、「AI失業」に対する懸念も高まっています。
AIは「物事を計算するスピードと正確性」「膨大なデータの蓄積・活用」「機械の正確な操作」といった点で、人間よりも優れた処理能力を持っています。反復作業や成果物の形式が明確に定められている処理、または正しい手順が決められている業務はAIが得意とする分野であり、そのような業務内容の仕事は代替される可能性が高いです。
単なる機械化や自動化にとどまらず、AIは与えられたデータを基に、アイデアを生成したり、非定型的な業務を実施したりすることも可能であるため、その影響力は広範囲に及びます。
日本企業のAI導入率
総務省の調査によると、2021年時点で「業務においてAI技術を活用している」と回答した日本企業の割合は24.3%でした。日本企業のAI導入率は主要7か国で最下位であり、グラフからも見て取れるように、国際的な観点からもまだ初期段階であるといえます。
日本のAI導入が遅れている主な原因は、AIを扱える人材や研究者が少ないことにあり、今後もAIの活用を促進していくためには、より多くのAI人材を確保する必要があります。
AIに奪われる確率が高い仕事
今後AIに代替される可能性が高いといわれている職業は多岐にわたります。2015年12月、野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究では、「AIの導入によって、日本の労働人口のうち、49%の仕事が10~20年以内になくなる」と予測されています。
特に単純作業の繰り返しや、条件分岐によりパターン化される作業はAIが得意とする分野であり、人間が仕事を奪われる確率が高いといわれています。具体的には、以下のような職種が挙げられます。
- 事務職(経理事務、医療事務、保険事務、行政事務など)
- 接客業(ホテルスタッフ、ホールスタッフ、スーパーやコンビニの店員など)
- 銀行員
- 電車・タクシーの運転手
- 警備員
- 会計監査員
- オペレーター業務
これらの中には「セルフレジ」「自動配膳機」「自動オペレーター」「自動運転」など、すでに無人化が進んでいる業務も含まれています。
AIに奪われる確率が高い仕事の共通点
AIに奪われる確率が高い仕事に共通しているのは、情報処理の「正確性」「速度」「一貫性」が求められる作業であるということです。具体的には、以下のような業務が該当します。
- 事務における入力作業
- スーパーなどでのレジ打ちや品出し
- 銀行における複雑な計算や膨大な金銭データの管理
AIに奪われる確率が低い仕事
「AIは万能」といったイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、AI技術はまだまだ発展途中のため、不得意なことも少なくありません。AIに奪われる確率が高い仕事が存在する一方で、AIが取って代わることのできない仕事も数多く存在します。例えば、以下のような職業です。
- カウンセラー
- 医師
- 介護職
- 教育関係
- 営業職
- コンサルタント
- クリエイター
AIはデータに基づいてパターン化された対応は得意ですが、高度な対人スキルが必要な業務はあまり得意ではありません。そのため、上記のような人間同士の直接的な関わり合いや共感、創造性が求められる仕事に関しては、AIによる失業リスクは低いといえるでしょう。
ヒューマンエラーが発生しやすい単純作業や膨大なデータ管理は、人間よりもAIの方が優れています。また、このような業務をAIに任せることで、労働時間の制限を受けることなく業務効率化が進められるため、労働力不足の緩和や、そのほかの必要な業務に時間を割くことができるようになります。
AIに奪われる確率が低い仕事の共通点
コストがAIより低い仕事
AIを活用することで、業務効率化やヒューマンエラーの削減などのメリットを得られますが、AIを扱える人材の確保・育成や、導入・運用にかかるコストはまだまだ高いのが現状です。そのため、特に個人経営や家族経営の店舗などでは、AI導入にかかる費用対効果が見込めない場合もあり、そのようなケースでは人間が引き続き担う方が経済的なため、AIに代替される確率が低いといわれています。
感情が関わる仕事
感情が関わる仕事は、AIには再現できない人間らしさが求められます。例えば、介護職やカウンセラーなどの仕事は、他者との共感や感情的なサポートが必要な職業です。AIは共感しているように装うことはできても、人間自身の経験から生まれる「本当の共感」を感じることはできません。
現在のAI技術では、人の気持ちに寄り添って適切に対応するのは困難であり、人間の方が対応力は優れています。そのため、今後も人間が業務を行う必要があるといえるでしょう。
複雑で臨機応変な動作が必要な仕事
介護、医療、建設などの現場では、状況に応じて複雑かつ臨機応変な動作が求められる場合があります。現在のAIはビッグデータを分析することで各種対応ができるレベルであり、元々データのないイレギュラーな作業が多い仕事は不得意としています。特に介護や医療の現場ではそれぞれの利用者に応じた対処が必要であり、パターン化された業務だけでは代替することは不可能です。
また、経営コンサルタントやクリエイティブディレクターなどの仕事でも柔軟な判断力や想像力が必要であり、人間の関与が欠かせません。
AIに仕事を奪われないために必要となるスキル
AIは業務効率の向上に役立つ便利な技術である一方、その進化によってさまざまな業界で失業者の発生が懸念されています。しかし、現在AIに奪われる確率が高い職業に就いている場合でも、適切な対策を講じることで失業リスクを低減することが可能です。ここでは、今後も需要が高まり続けると考えられる3つのスキルを紹介します。
AIを活用するスキル
AIの導入や運用、メンテナンスにはAI自体を扱える専門的な人材が不可欠です。AI人材に必要な要素として、「Pythonなどのプログラミング知識」「機械学習・ディープラーニングに関する知識」「数学知識」「データサイエンス力」などが挙げられます。
現状、これらのスキルを持つ人材は依然として不足しており、今後さらに多くの企業がAIを導入すると予測されるなか、これらのスキルを持つ人材への需要は一層高まることが予想されます。
感情を動かすスキル
AIには、人間の持つ豊かな感情を理解して対応することは不可能であり、人間の心に響く感動や共感を生み出すことはできません。広告やマーケティングでは消費者の共感を捉える力が、芸術やエンターテインメントでは人々に感動やインスピレーションを与える能力が求められます。このスキルはAIにはない人間独自の強みであり、今後も需要が見込まれます。
また営業活動においても、顧客から「この人だから買おう」という感情的動機を引き出すことはAIにはできません。感情を理解し、適切なコミュニケーションをとることができるのは、人間にしかない貴重な能力の一つです。
クリエイティブなコンテンツを作成するスキル
AIはビッグデータを分析し、その都度適した組み合わせをアウトプットすることは得意ですが、ゼロから創造することは不得意としています。2022年にAIが絵画コンテストで優勝したという報道がありましたが、実際には作家がAIに指示を与え、さらに自ら描き足した作品であり、AIが独自に創造したものではありませんでした。
人間によって創造されたものには、人間特有の感性や直感を駆使したアイデアが含まれており、AIには表現できない価値があります。そのため「創造性」や「独創性」があり、クリエイティブなコンテンツを作成できるスキルを持つ人材は、今後も引き続き需要があるといえます。
AIによって生まれた仕事や需要が高まる仕事
AIは仕事を奪うだけでなく、新たな仕事が生まれるきっかけにもなっています。これから紹介するデータサイエンティスト、AIエンジニア、アノテーターは、いずれもAI技術の進歩に伴って需要が高まっている職種です。これらがどのような役割を果たしているのか詳しく紹介します。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、大量のデータを分析して有用な情報や洞察を引き出す専門家です。統計学やプログラミング、機械学習の知識を活用し、企業がデータに基づいて課題解決や意思決定を行うためにサポートする役割を担っています。
また、AIモデルを構築するためのデータ準備、データクリーニング、解析を行い、その結果を基に予測モデルやアルゴリズムの開発を行います。AI活用が進むなかで、ビジネス価値を引き出すためのデータサイエンススキルを持つ人材は、企業にとって欠かせない存在となっていくことが予想されます。
AIエンジニア
AIエンジニアは、AIシステムの設計・開発・運用を行う専門家です。主な業務内容としては、機械学習アルゴリズムを実装し、AIモデルのトレーニングやテスト、最適化を行います。加えて、データサイエンティストが準備したデータを用いて、AIが実際に動作する環境を構築することもAIエンジニアの役割です。
「2045年問題」として、AIが人間の知能を超える「シンギュラリティ」の時代が到来することが予測されていますが、それは未来学上の一説に過ぎません。少なくともそのような時代が到来するまでは、AIエンジニアは技術の進歩に欠かせない存在であるといえます。
アノテーター
アノテーターの主な業務内容は、AIモデルを訓練するためにデータを整理し、正確な判断基準の下で、大量のデータそれぞれに特定の意味を与える「タグ付け」を行うことです。この業務をアノテーションと呼びます。このデータは「教師あり学習」に使用される、例題と正解がペアになっているようなデータで、翻訳や異常検知などに活用されています。
例えば、画像認識AIの開発では、何千もの画像に「犬」「猫」などの正確なラベルをつけて教師データを作成し、AIに学習させることで、AIが犬や猫を判断できるようになります。アノテーションはAIの「品質」に関わっており、この作業の正確性が高いほどAIの性能が向上するため、データの選定がとても重要です。
Sky株式会社のシステム開発
車の自動運転や医療用の画像診断支援、工場での外観検査など、近年ではあらゆる現場でAI・画像認識を活用したシステムの実用化が進められています。
Sky株式会社では、急成長を続けるAI・画像認識システムを用いた開発について、技術面や知識面でのサポートを行うことが可能です。車載や医療、オフィス、ファクトリーオートメーションといった幅広い分野でAIに関する開発に携わっており、新たな技術やノウハウを蓄積し続けています。
弊社が扱う技術は、画像認識やデータの作成・分析、エッジデバイスを用いたクラウドソリューションの構築などさまざまです。開発の全工程にわたるサポートから、個々のフェーズにおける数名単位でのエンジニア不足のカバーまで、柔軟な対応が可能です。
まとめ
ここまで、人間がAIに仕事を奪われるといわれる理由や、今後なくなる確率の高い仕事と低い仕事、AI失業に巻き込まれないように今後必要なスキルなどについて紹介しました。
AIは便利な技術である一方、幅広い分野で失業者を発生させる恐れもあります。現在のAIには不得意な分野もあるため、その能力を身につけることが、AI失業から自身の仕事を守るために重要な手段となります。今後はAIと共存し、自身の強みを生かすことが重要です。