ソフトウェア開発において「QCDの達成」は非常に重要です。特に先頭のQ(Quality:品質)が最重要と言われていますが、Q(Quality:品質)とD(Delivery:納期)が達成できたとしても、C(Cost:コスト)が達成できていなければ、プロジェクトが成功したとは言えません。
CとDの達成を目指すうえで非常に有効な『EVM』による管理方法について説明します。
EVMとは
『Earned Value Management』の略でプロジェクト管理を「進捗」と「コスト」の両面からチェックしておこなう手法です。予定工数、進捗工数、消化工数を比較することでプロジェクトの進捗状況を把握し、妥当性を評価する手法になります。
EVMの構成要素と評価指標
以下に、EVMを構成する基本要素と評価指標をまとめます。
基本要素
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PV(Planned Value):出来高計画値
各時点までに完了すべき作業の予定工数。 -
AC(Actual Cost):コスト実績値
各時点までに消化した工数。 -
EV(Earned Value):出来高実績値
各時点の完了した作業に対する工数=進捗工数。
EVMで管理する上で最も重要な基本要素。
評価指標
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SV(Schedule Variance):スケジュール差異
算出式:SV = EV - PV
各時点の計画と実績の差。
上記計算によりプラスであれば前倒し、マイナスであれば遅延となります。 -
CV(Cost Variance):コスト差異
算出式:CV = EV -AC 各時点の消化したコストと出来高としてコストの差でコストパフォーマンスを表します。
上記計算によりプラスであればコスト以上の成果を出していることになりますし、マイナスの場合はコストパフォーマンスが低いと言えます。
EVMによるプロジェクト管理
基本要素、評価指標を用いたプロジェクトの管理方法について説明します。
① PVの設定
計画値となるPVの設定をまずは行います。WBS等で作業項目の細分化を行い、各作業ごとにかかるコスト(工数)を積算する形で各時点のPVを算出します。全作業完了時のPVの値がBACとなります。
② EVの算出
EVはEVMで管理を行う上で最も重要な基本要素で、EVの精度が低いと正しい状況把握ができません。EVは各時点の出来高を示す値であるため、各作業項目ごとの完了分のコストを算出し、これらを積算したものがEVとなります。このため、WBS等で作業項目を定義する際にコストの大きい項目を作ってしまうと、完了分のコストの算出の精度が下がってしまいます。
例えば、「5人日の作業項目」と「50人日の作業項目」を比較した場合、前者は現時点の進捗工数を計ることは容易ですが、後者は完了した作業の把握、完了した作業に対する工数の算出が難しくEVの精度が低くなります。計画時点で進捗工数を正確に算出できるレベルまで作業項目を細分化することが重要です。
③ グラフによる可視化
上図のようにグラフ化することで各時点の進捗とコストの状況を容易に把握できるようになります。上図では、EVがPVを下回っており、SVがマイナス=遅延状態 にあることがわかります。
また、ACがEVを上回り、PVをも上回っている状況ですので、コストパフォーマンスが低く、予算もオーバーしており非常に危険な状態であることが分かります。
このように進捗とコストが計画に対してどのように推移しているか、このままどうなっていくのかを早期に把握することで適切な対策を打って行くことができる点でEVMは非常に有効です。
Sky株式会社として
ソフトウェア開発におけるプロジェクトを遂行する上で品質(Q)と納期(D)の達成に意識がいき、コスト(C)に対するチェックを疎かにしてしまう傾向があると思います。
弊社では、Q・C・Dのいずれに対しても高い意識をもって管理することで、常にお客様目線で業務遂行することを心掛けております。
補足
- その他の評価指標
EVMの評価指標として SV と CV をご紹介しましたが、他にも以下のような指標があります。
CPI(Cost Performance Index):コスト効率指数 CPI=EV/AC
SPI(Schedule Performance Index):スケジュール効率指数 SPI=EV/PV
ETC(Estimate To Completion):残作業コスト予測 ETC=(BAC-EV)/CPI
EAC(Estimate At Completion):完了時コスト予測 EAC=AC+ETC
VAC(Variance At Completion):完了時コスト差異 VAC=BAC-EAC
これらの指標も併せることでより効率的にプロジェクト状況を可視化・把握することができますので、ぜひ活用してみてください。