音声認識で操作できる家電、カーナビ、スマートスピーカといった、便利な”音声UI”の裏側には、人の声を正しく拾い、ノイズを取り除き、意図通りに伝えるための高度な音声制御技術が存在します。
前回の記事
前回は音声認識技術を4つの技術領域に分類し、音響処理技術の中でも「音声変換」について触れさせて頂きましたが、今回は音響処理技術の中でも「音声制御」に着目し解説します。
- 音響処理技術
- 対話処理技術
- ソリューション制御技術
- 性能改善技術
音声制御とは? 声のやり取りを裏で支える仕組み
音声制御とは、ユーザの声をマイクで受け取り、適切に処理して認識させ、その結果を音声(それ以外の情報の場合もあり)として返す、双方向の音声インターフェース技術です。
以下のような技術要素により構成されています。
1.音声入力の制御 ー入ってくる音も、出ていく音も正確に届ける
■マイクからの音声取得
- ユーザの発話をキャッチ。複数マイクから音を拾う技術やビームフォーミング技術も利用。
■フォーマット変換
- 音声認識エンジンやクラウド連携に適した形式(PCM/WAVなど)に変換。
音の入り口と出口を如何に安定させるか。声をしっかり拾い、途切れなく再生することがUXに直結します。
2.音声品質の改善 ーノイズの中でも「人の声」だけをクリアに
■ノイズ抑制(Noise Reduction)
- 車内の走行音、エアコンの風、周囲の話し声などを除去
■エコーキャンセリング(AEC)
- スピーカ音がマイクに回り込むハウリング現象を防止
■ゲイン制御
- 小さい声でも適切な音量に調整。遠距離・近距離の声を均質化。
音の”下処理”が良いと、音声認識の精度も飛躍的に向上します。
3.音声データ通知
■処理結果の通知
- 音声認識の結果やコマンド、キーワード検出などを、アプリケーション側にリアルタイム通知。
■スピーカ制御
- 応答を音声として再生。再生タイミングや優先制御など、UI制御との連動も必要。
■音声ログの出力・保存
- デバッグやUX改善のために、音声データ・処理ログの記録・管理が可能な設計。
音声制御は、単にマイクとスピーカを使うだけでは実現できません。このような複数の技術要素が密接に連携することで、はじめてユーザにとって自然な操作体験が提供されています。