フロントエンドとバックエンドの違いは? 図や具体例を用いて徹底解説
私たちが日頃から利用する機会が多いWebシステムやWebアプリケーションは、ユーザーが目にしたり、操作したりするフロントエンドと、データを格納したりさまざまな処理を行ったりするバックエンドに分かれます。この記事では、フロントエンドとバックエンドの役割の違いや、それぞれを担当するエンジニアが行う仕事の内容、将来性について紹介します。
フロントエンドとバックエンドの違いとは?
私たちが普段使用しているWebシステムやWebアプリケーションなどは、情報がインターネットを通じてフロントエンドとバックエンドを行き来することで利用できる仕組みになっています。そのため、システム開発ではフロントエンドとバックエンドの開発が不可欠です。ここでは、それぞれのシステムの役割や違いについて紹介します。
フロントエンドの役割
フロントエンドとは、WebシステムやWebアプリケーションなどでユーザーが直接触れる部分を指します。ボタンやグラフィックス、テキストなどの視覚的な要素が含まれており、それらを見たり操作したりすることで、ユーザーはシステムを使用することが可能です。
また、フロントエンドはUX(ユーザーエクスペリエンス)にも大きく影響するため、ユーザビリティの高いデザインの実装などにより、顧客満足度の向上やコンバージョン率の改善を見込むことができます。
フロントエンド開発に使用する言語としては、Webページを制作するためのマークアップ言語である「HTML」、色や文字サイズなどを変更するための「CSS」、Webページに動きをつける「JavaScript」を使用するのが一般的です。これら3つの言語のほかにも、「PHP」や「TypeScript」、JavaScriptライブラリである「React」などを使用するケースもあります。
UIとフロントエンドの関係は?
直接ユーザーの目に触れる部分という意味で、UI(ユーザーインタフェース)とフロントエンドは切っても切り離せない関係にあります。時折混同されるこの2つの言葉ですが、焦点が当てられる対象の違いによって区別されます。UIはシステムの外観や操作性などの「デザイン」に着目するのに対し、フロントエンドはシステムが正しく利用できる状態に実装されているかどうかなどの「機能」に焦点を当てます。
近年ではフロントエンドエンジニアであっても、UIのデザインスキルを求められる機会が多々あるため、実際にサービスを利用するユーザーのことを考慮しながら開発を進める意識が重要です。
バックエンドの役割
バックエンドは、ユーザーからは見えない部分であり、アプリケーションを機能させるデータやインフラストラクチャーのことです。サーバーやデータベースなどで構成されており、ユーザーがフロントエンドを通じて入力した内容の情報処理や各種データの保存、リクエストに応じてデータの出力を行う役割を持っています。
バックエンドの開発言語は幅広く、「Ruby」「Python」「JavaScript」「PHP」「Java」などが挙げられます。また、システム開発を効率化するために、各言語のフレームワークを活用するのが基本です。フレームワークの例としては、Rubyの「Ruby on Rails」、Pythonの「Django」、PHPの「Laravel」などがあります。
フロントエンドとバックエンドの仕事は?
開発領域が違うことから、実際の業務もフロントエンドとバックエンドで作業を分担し、それぞれ別の工程で開発を進めることが多いです。ここでは、フロントエンドとバックエンドの各開発工程と実際に行う仕事について紹介します。
フロントエンドの仕事
一般的には、以下のような手順でフロントエンドを開発していきます。
1:画面全体の初期設定
最初に「ユーザーにどのような情報を提示するのか」「どのような機能を実装するのか」など、Webページの土台となる構成を定義していきます。ワイヤーフレーム(画面の設計図)を用いて全体的なレイアウトを決めたり、サイトマップ(ページ遷移の地図)を作成したりするのもこの段階です。Webページ全体の完成度を左右する重要な工程であるため、時間をかけてでも入念に取り組む必要があります。
2:画面コンポーネントの定義
続いて、ボタンやナビゲーションなど、共通して複数のページにわたって使用されるパーツをコンポーネント化します。事前に共通パーツをまとめておき、「マークアップの負担軽減」「仕様変更の際の保守性の維持」につなげることが目的です。
3:アクション・レスポンス定義
ボタンをクリックするなど、ユーザーが特定のアクションを起こしたときに、どのように応答するのかを定義する工程です。アクションに対しての画面遷移はもちろんのこと、情報が表示されるまでの時間や、PCやスマートフォンなどのデバイス別での表示差異も定義する必要があります。UIやUXに直結する部分でもあるため、非常に重要な工程です。
4:HTML / CSSでマークアップ実装
いよいよ実装の工程です。これまで定義してきた内容やデザインを、HTMLとCSSを使って形に起こしていきます。基本的にこの段階では、Webページに動きをあまりつけません。デザインや表示内容に問題がなければ、次の工程に進みます。
5:JavaScript・TypeScriptなどの実装
前の工程で実装したWebページに動きをつける段階です。各種アニメーションのほか、アクション・レスポンス定義で決めた機能を実装していきます。
6:ブラウザ検証
最後に、画面表示に不具合などが発生しておらず、ブラウザ上で問題なく動くかどうかを検証します。クライアントに実際の動作やユーザビリティを確認してもらうことも有効です。
バックエンドの仕事
バックエンドの開発の流れは、一般的なシステム開発の流れとほぼ同じです。具体的には、以下の流れで開発を行います。
1:要件定義
フロントエンド同様、バックエンドにおいても各種定義は最初に行うべき重要な工程です。クライアントにヒアリングを実施し、目的や要望を考慮しながら、「どんな機能が必要なのか」を定義していきます。バックエンドはシステムを動かす根幹部分の開発であるため、クライアントのニーズを丁寧にくみ取って要件定義することが重要です。
2:設計
次に、要件定義したシステムをどうやって開発するのかを設計していきます。これ以降の工程を進めやすくするためにも、可能な限り詳細に設計することが大切です。また、開発に携わる全員が把握しやすいような状態にすることで、実装やテスト段階でのトラブル防止にもつながります。
3:実装
実装工程では、設計した内容に合わせてプログラミングを行い、システムを形にしていきます。この工程で重要になるのは、「プログラミングコードの簡潔さとわかりやすさ」です。コードの長さは、そのままシステム動作の重さにつながります。コードをより簡潔に書くことで、システムがスピーディーに作動し、バックエンドだけでなくフロントエンドの動きも軽くすることが可能です。また、わかりやすくコードを記載することで、チームでの分担作業が進めやすくなるという利点もあります。
4:テスト
最後の工程として、サーバー環境で実際にシステムが動くかをテストしていきます。テストの流れとしては、機能ごとにテストを行う「単体テスト」、機能同士を組み合わせた「結合テスト」、本番環境で行う「総合テスト」の順番で進めるのが一般的です。テストではシステムが正常に動くかを確認するのはもちろんのこと、仮に異常が発生した場合にかかる復旧時間なども検証する必要があります。
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアの将来性は?
昨今の労働市場では人手不足が深刻な問題になっています。それはIT業界においても同様で、WebサービスやIT技術の進化が止まらないこともあり、エンジニアにおいては企業間で人材の取り合いが発生するほど需要が高まり続けています。ここでは、フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアの将来性について紹介します。
フロントエンドエンジニアの将来性
フロントエンドエンジニアの将来性を端的に表せば、「短期的な将来性はあるが、長期的な将来性は不透明」といえます。世の中にはすでに数え切れないほどのWebサイトが存在していますが、依然としてその数は増加の一途をたどっています。また、近年ではスマートフォンやタブレットなどのインターネットにアクセスできる端末が増えたことも、フロントエンドエンジニアの需要が高まっている要因です。
このように、フロントエンドエンジニアに短期的な将来性があるのは確かです。一方、AI技術の普及やノーコード・ローコードツールなどによって、誰でも簡単にWebサイトを作成できる時代がすぐそこまで来ているという事実もあります。実際に、フロントエンド開発をAIに学習させて、プログラミングコードを自動生成するサービスがすでに存在しています。また、基本的な言語を習得すれば実務に携われることから、参入障壁が低く、必然的にライバルが増えやすいことにも注意が必要です。
長期的な将来性が不透明ななか、フロントエンドエンジニアとして生き抜くためには、ほかの専門的なスキルと掛け合わせるのがお勧めです。UI / UXに関係するデザインスキルや、バックエンド開発も請け負えるプログラミングスキルなど、より活動の幅を広げていくことがフロントエンドエンジニアとして長く活躍し続けるためのポイントです。
バックエンドエンジニアの将来性
バックエンドエンジニアの将来性は明るく、Webサービスやアプリケーションの市場が大きくなるにつれて、バックエンド開発の需要も高まり続けます。バックエンドエンジニアはシステムのより根本的な土台を設計するため、仕事の幅が広く、求人数も多いのが特徴です。
加えて、バックエンドエンジニアになるためには必要な知識やスキルが多く、フロントエンドエンジニアと比較しても参入障壁が高いため、ライバルが少ない環境でもあります。このことからも、人手不足な状況が続くことが見込まれ、バックエンド開発の需要は長期的に上がり続けると予測されます。
市場が激しく変化する現代では、日々新しい技術が登場しています。そのため、今後も需要が見込めて将来性の明るいバックエンドエンジニアであっても、スキルの研さんは継続して行っていく必要があります。バックエンドエンジニアとして活躍し続けるためには、常にアンテナを張って最新の技術を勉強したり、今持っているスキルを磨き続けたりすることが重要です。
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアに必要なスキル
フロントエンドとバックエンドはそれぞれ対応領域が違い、業務に必要なスキルも異なります。ここでは、各エンジニアにとって必要なスキルを紹介します。
フロントエンドエンジニアに必要なスキル
フロントエンドエンジニアに必要なスキルとして、「開発スキル」「デザインに関する知識」「コミュニケーション能力」などが挙げられます。
開発スキルとしては、実装の際に必要になるHTML・CSS・JavaScriptなどの言語をはじめ、Gitのようなバージョン管理システムを扱う技術などが求められます。また、JavaScriptで実装した部分に関しては、バックエンドエンジニアと共同でテストを行うこともあるため、各種テストに関する知識も必要です。
デザインに関する知識もフロントエンドエンジニアにとって必要なスキルです。フロントエンドを開発する過程では、異なるデバイスや画面サイズに合わせて調整するレスポンシブ対応が必要になります。PC版のデザインしかない場合は、フロントエンドエンジニアがスマートフォンやタブレットに合わせて、デザインを調整しなければなりません。また、業務のなかでデザイナーと意見交換をする機会も多いため、デザインに関する知識をひととおり持っておくに越したことはありません。
さらに、業務を円滑に進めるためのコミュニケーション能力も、フロントエンドエンジニアには必要です。システムを開発する上で、チームやほかの開発者とのコミュニケーションは避けて通れません。また、コミュニケーション能力と併せて、タスク管理やタイムマネジメントなどのプロジェクト管理能力も必要なスキルといえます。
バックエンドエンジニアに必要なスキル
バックエンドを開発するためには、「プログラミング言語の習得」「開発に関わる幅広い知識」「問題解決能力」などのスキルが必要です。
バックエンドエンジニアには、Ruby・Python・PHPなど、バックエンド開発に適したプログラミング言語の習得が求められます。フロントエンドで使用するHTMLやCSSに比べて習得の難易度は高いものの、いずれかの言語を習得すれば、ほかの言語であってもある程度対応することが可能です。
また、データベースやサーバー、セキュリティ対策などの開発に関わる幅広い知識もバックエンドエンジニアには必要です。特にデータベースにおいて、データを取得したりテーブルを構築したりするSQLに関する知識は必須のスキルといえます。
バックエンドを開発していると、システムの障害やエラーが発生するのは日常茶飯事です。そのため、バックエンドエンジニアにはそれらの不具合を解消する問題解決能力も求められます。発生する問題を一つひとつひもとき、デバッグをしながらより質の高いシステム開発を進めることが大切です。
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まとめ
今回はフロントエンドとバックエンドの違い、それぞれの仕事内容やエンジニアについて紹介しました。フロントエンドとバックエンドの開発は分担して行われるのが一般的です。しかし、双方には密接な関係があり、お互いの連携があってはじめて魅力的なシステムを開発できるといえます。
また、近年ではフロントエンドとバックエンドの業務の境目がなくなりつつあり、場合によっては両方の知識が必要となるケースも増えてきました。エンジニアには、それぞれの専門分野だけでなく、対応領域を広げるようなスキルアップが求められています。