システム開発と構築の違いを解説|工程や4種類の手法も紹介

更新:2024.4.26
著者:Sky株式会社


そもそも「開発」と「構築」の違いは?

システム開発とシステム構築の違いを解説する前に、そもそも「開発」と「構築」という言葉にどのような違いがあるのかを確認していきます。

「開発」とは

開発という言葉には「新しいものを作り、実用化する」「新しく活用できるようにする」といった意味合いがあります。そのため、新規性があるものに対して使われることが多いです。開発の使い方としては、以下のような例が挙げられます。

  • 新商品を開発する
  • 従業員の能力開発に取り組む

「構築」とは

一方、構築という言葉は「組み立てて築き上げる」といった意味合いがあります。そのため、部品や人材など、組み立てるための材料がすでに存在していることを前提として使われることが多いです。構築の使い方としては、以下のような例が挙げられます。

  • 従業員の能力に応じて賃金が上がる仕組みを構築する
  • 長期的な関係を構築する

システム開発とシステム構築の違いは?

開発と構築の言葉の違いから考えると、システム開発は新しいシステムの開発を指す一方で、システム構築は開発した成果物を基にシステムを組み立てることを指すと言えます。ここでは、システム開発とシステム構築のそれぞれの定義について詳しくご紹介します。

システム開発とは

システム開発とは、システムやプログラムを設計し、プログラムを作ってテストするまでの一連の作業を指します。新しい仕組みを作り、業務の効率化につなげることなどが主な目的です。

例えば、従業員が手作業で行っている労務管理をオンラインシステム化することも、システム開発に含まれます。労務管理用のプログラムを作成することで、従業員の出退勤や残業時間の管理などをシステム化し、業務の効率化を図ります。

システム構築とは

システム構築とは、システムやプログラムを設計し、プログラムを作ってテストした後、実際にシステムを運用できるようにするまでの一連の作業を指します。そのため、システム構築の一部にシステム開発が含まれていると言えます。

先ほど挙げた例で考えると、労務管理用のプログラムを作るだけでなく、実際に社員が利用し、組織内で運用できるようにするのがシステム構築になります。

システム構築を行う企業によっては、システム開発にあたる業務を外注しているケースもあります。

システム開発・構築の工程

先ほどご紹介したように、システム開発はシステム構築の一部と言えます。そのため、着手していく工程において大きな違いはありません。一般的に、システム開発・構築は以下の流れで行われます。

  • 要件定義
  • 基本設計
  • 詳細設計
  • 開発
  • テスト
  • リリース
  • 運用・保守

ここでは、それぞれの工程について詳しくご紹介します。

要件定義

要件定義とは、どのようなシステムを開発するのか、明確に定義する工程です。システムを実際に利用する部署や社員が、現在どのような課題を抱えていて、どのようなシステムを求めているのかをヒアリングします。

万が一、本来求められていたものとは異なるシステムを開発してしまうと、追加費用や納期遅延が発生する可能性もあります。そのため、要件定義の段階で、要望を正確に把握することが大切です。ヒアリングした後は、その内容を基にシステム要件を定義して、要件定義書を作成します。

基本設計

基本設計とは、要件定義書を基に、システムの構成や実装する機能などを決める工程です。システム画面の見た目など、ユーザーインタフェースを設計します。システムの外側から見える部分を設計していく工程でもあることから、「外部設計」と呼ばれることもあります。システムの発注者に対し、システム完成後のイメージを提示する重要な役割も担います。

基本設計に不備があると、ユーザーにとって使いづらいシステムになってしまい、業務効率の悪化や顧客の満足度の低下につながりかねません。そのため、基本設計ではユーザーの視点に立つことが大切です。

設計内容が固まった段階で、基本設計書を作成します。基本設計書にまとめる内容として、以下が挙げられます。

  • 機能一覧
  • システム構成図
  • 業務フロー
  • 画面設計図
  • 帳票設計書
  • バッチ処理設計書
  • テーブル一覧
  • 外部インタフェース仕様書

詳細設計

詳細設計とは、基本設計書を基にシステムの機能や内部の仕様を詳細に定義する工程です。システム内部を設計することから「内部設計」と呼ばれることもあります。基本設計がしっかりしていても、設計した内容を正しくプログラムに反映させられなければ意味がありません。そのため、内部設計は開発者の視点からプログラムの設計を進める必要があります。

内部設計に不備があると、システム内の必要な機能が使えないということも起こり得ます。一方、内部設計が正しく行われれば、ユーザーにとって安心して使えるシステムになり、高い評価を得ることにつながります。

設計内容がある程度固まった段階で、詳細設計書を作成します。詳細設計書は、システム開発・構築を担当するエンジニアに向けて作成するもので、開発指示書としての役割を果たします。詳細設計書にまとめる内容として、以下が挙げられます。

  • クラス図
  • モジュール構成図
  • アクティビティ図
  • シーケンス図
  • テスト計画書および設計書

開発

開発とは、詳細設計の内容を基にエンジニアがプログラミングしていく工程のことです。プログラミング言語を使って、ソースコードを作成していきます。プログラミング言語は、作るシステムの種類や開発者のスキルに応じて使い分けるのが一般的です。ただ、どの言語にも共通して言えるのは、誰が見てもわかるようにソースコードを整理しながら記述することが大切だということです。

システムは開発して終わりではなく、安定的な運用が求められます。もし、開発者しか理解できないソースコードの書き方でプログラミングしてしまうと、トラブルが発生した際に運用者の対応が遅れてしまう可能性があります。

テスト

テストとは、開発したプログラムやシステムの動作に不具合がないかをチェックする工程です。システムをリリースした後でバグや故障が見つかると、ユーザーに迷惑を掛けるだけでなく、会社の信頼を損ねてしまう可能性もあるため、念入りにテストを行う必要があります。

テストは、「単体テスト」「結合テスト」「総合テスト」に加え、ユーザーの本番環境で行う「受け入れテスト」の4つに分けられるのが一般的です。単体テストで機能ごとに動作検証を行い、結合テストで機能同士の連携やシステム全体の動きを確認します。その後、実環境を想定した総合テストで仕様どおりにシステムが動けば、受け入れテストへ移行します。

リリース

テストを終え、システムに問題がないことを確認できたら、本番環境に移行して公開します。その際、ユーザーが困らないよう、操作方法について研修を行ったり、システムの設計書や運用マニュアルなどのドキュメントを渡したりするのが一般的です。

また、すでに稼働している旧システムがある場合には、新システムへの切り替え作業が発生します。システムを一度に移行する一斉移行や、徐々に切り替えていく順次移行など、ユーザーの環境に応じて移行方法を使い分ける必要はありますが、移行後にシステムが正しく動作すればリリースは成功です。

運用・保守

システムは完成して終わりではありません。安定して稼働するように、システムの稼働状況や異常の有無を監視しておく必要があります。また、システムの細かな部分を改善したり、不具合が起きたときには改修をしたりしなければなりません。

システム監視を怠っていると、不具合が発生したときに、原因の究明や復旧作業への対応が遅れてしまいます。システムが使えない期間が長くなると、ユーザーの業務に支障をきたすだけでなく、顧客との信頼関係に悪影響を及ぼすリスクがあります。リスクを最小化するためにも、定期的なメンテナンスやアップデートが大切です。

システム開発・構築の方法4種類を紹介

システム開発やシステム構築の方法は、大きく分けて4種類あります。それぞれ「ウォーターフォール」「アジャイル」「プロトタイプ」「スパイラル」と呼ばれ、メリットやデメリットが異なります。そのため、プロジェクトに合わせて適切な方法を使い分けることが大切です。ここでは、それぞれの方法について詳しくご紹介します。

ウォーターフォール

ウォーターフォール開発とは、一連の開発プロセスを段階ごとにフェーズで分け、各フェーズを順番に進めていく方法です。上流工程から下流工程に向けて、滝のように流れるイメージで進めていくことが名前の由来です。システム構築やシステム開発における古典的な手法の一つで、各フェーズは前のフェーズが完了してから始めるため、次のフェーズに進むと前のフェーズには戻れないのが特徴です。

ウォーターフォール図

この手法では、要件定義から始まる工程にのっとって開発を進めるため、進捗状況や成果物の管理が容易になり、予算やエンジニアの確保、業務の引き継ぎもしやすくなります。一方で、一つひとつの工程を確実に完了させていくため、システムの完成に時間がかかるというデメリットがあります。また、要求の変更に対応するのも難しく、途中で変更が発生した場合は膨大なコストと時間がかかってしまうリスクがあるため、変更が起きやすいプロジェクトには適さないこともあります。

アジャイル

アジャイル開発とは、開発を機能ごとの小さな単位に分け、「計画」「実装」「テスト」「リリース」という流れを何度も繰り返し行う開発方法です。継続的に顧客のフィードバックを取り入れながら開発を進め、仕様変更にもスピーディに対応できます。ただ、顧客やユーザーとの密接な連携や、継続的な改善が可能になるというメリットがある一方で、全体の最適化が難しく工数がかさみやすいというデメリットもあります。

アジャイル図

アジャイル開発は2001年にプログラマーや技術者によって提唱されました。背景にあるのは、ビジネス環境の変化です。インターネットが急速に普及したことで、世の中や企業を取り巻くビジネスモデルも急速に変化しました。こうした変化に対し、柔軟に対応できる開発手法が重要視されるようになったのです。近年のシステム開発・構築では、このアジャイル開発が主流になりつつあります。

以下では、アジャイル開発の主な手法と、それぞれの特徴をご紹介します。

スクラム

スクラムとは、開発プロセスを「スプリント」と呼ばれる短期間の周期で区切り、スプリントごとに機能を追加していく方法です。スプリントの期間は一般的に2週間から4週間で、各スプリントの開始前に要求事項の中から優先度の高い項目を選びます。スプリントごとに機能の実装と成果物の評価を行い、それを何度も繰り返してシステムを開発していきます。

スプリントごとに限られた仕事量と時間が設定されるため、タスクの優先順位を把握しやすくなる一方、短いサイクルを繰り返すことでプロジェクトの全体像を見失ってしまうリスクもあります。

カンバン

カンバンとは、タスクの流れをビジュアルボード上に可視化し、各タスクの進捗状況や作業量を管理する方法です。個別のタスクを記した「カード」と、「進行中」「完了」などの作業工程を表す列を用意し、作業の進捗に合わせてカードを移動させます。

この方法は、プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで確認しやすくなり、特定のスプリントや周期に縛られることなく進捗を管理できるというメリットがあります。一方、タスク同士の依存関係が把握しづらく、長期間におよぶプロジェクトの管理には向いていないのがデメリットです。

エクストリームプログラミング

エクストリームプログラミングとは、全体の作業を細かく区切り、開発プロジェクトが変更されることを前提に進める方法です。要件定義からテストまでを繰り返し、ユーザーとのやりとりを増やすことで、ユーザーの要望に柔軟に対応します。1台のPCを2人で利用してプログラミングをする「ペアプログラミング」や、テストプログラムを作成した後で本プログラムを作成する「テストファースト」などを行うのが一般的です。

仕様変更に柔軟に対応できるというメリットがある一方で、長期のスケジュールを組みにくいのがデメリットです。先述したスクラムと手法が似ていますが、スクラムが「複数の開発を並行して進めて効率化を図る」ことを重視するのに対し、エクストリームプログラミングは「柔軟な調整で製品を改善し続ける」ことを重視する点に違いがあります。

リーン開発

リーン開発とは、工程からできる限り無駄を除き、必要最低限の資源で最大限の利益を上げることを目的とした方法です。トヨタ自動車が生産現場で用いた「トヨタ生産システム(リーン生産方式)」に由来しています。

できるだけ短い期間で、反復的に開発サイクルを繰り返し、顧客の要望を反映しながら何度も改善を重ねていくのが特徴です。必要最低限の機能を備えたプロトタイプから作成し、顧客の反応を確かめながら改善していくことで、顧客のニーズから大きく外れることなく、効率的に開発を進めることができます。

一方で、顧客のニーズを把握しようと開発を繰り返すうちに、何を目的としたサービスなのかわからなくなり、当初の開発目的とのズレを引き起こしかねないというデメリットもあります。

プロトタイプ

プロトタイプ開発とは、システムの試作品となるプロトタイプを素早く作成し、ユーザーや顧客のフィードバックを反映しながらシステムを完成させていく方法です。

プロトタイプ図

ユーザーや顧客とのコミュニケーションを増やすことで、要求や仕様の理解を深めることができ、完成イメージのずれなどを早期に修正することができます。また、プロトタイプを実際に操作するため、バグや不具合も早期に発見することが可能です。近年のシステム開発ではUIやUXが重要視される傾向にあるため、プロトタイプ開発はこれからますます活用される手法と言えます。ただ、プロトタイプの開発と評価を重ねるため、開発期間が長引きやすいというデメリットがあります。

プロトタイプ開発の主な流れは以下のとおりです。

1.要求収集と分析 プロトタイプの目的と要求を整理し、システムの基本的な仕様を決めます。
2.プロトタイプの設計 システムの機能やインタフェースの基本的な設計をします。
3.プロトタイプの作成 設計を基に、プロトタイプを作成します。動作を確認するため、一部の機能や画面を実装します。
4.プロトタイプの評価 ユーザーにプロトタイプを提供し、実際に操作してもらいます。ユーザーからのフィードバックを収集し、機能やデザインの改善点を明確にします。
5.プロトタイプの修正 評価で明確にした改善点を基に、プロトタイプに新機能の追加や機能拡張を行います。

スパイラル

スパイラル開発とは、開発するシステムを機能ごとに分割し、重要な機能から開発を進めていく方法です。機能ごとに要件定義、設計、開発、テスト、評価、改善という工程を繰り返し、システムの完成度を徐々に高めていくのが特徴です。

スパイラル図

スパイラル開発のメリットとして、機能ごとに開発計画を立てていくため、仕様変更や追加要件が発生した場合でも対応しやすく、開発スケジュールの変更も容易なことが挙げられます。一方、プロジェクトのスタート時に緻密な計画を立てないため、プロジェクトの全体像が見えにくくなり、開発コストの増加やリリースの遅延につながってしまうリスクがあります。

開発工程を反復するという点で、スパイラル開発とアジャイル開発は共通していますが、リリースのタイミングに違いがあります。スパイラル開発は、機能ごとに開発と改良を繰り返し、最終的にすべての機能の品質が保証されたタイミングでシステム全体を一挙にリリースします。

一方、アジャイル開発では、1つの機能の開発が完了した段階でその都度システムをリリースし、リリースを重ねるごとに機能を増やしてシステムを完成させます。そのため、アジャイル開発の方がスパイラル開発よりも短い期間でシステム全体を開発することができ、双方を比較するとスパイラル開発はあまり普及していないのが実情です。

Sky株式会社のシステム開発・構築の事例

Sky株式会社は、幅広い業界や業種でさまざまなシステム開発・構築に携わっています。ここでは、その事例についてご紹介します。

事例:業務系システム開発

金融・保険業界や医療業界など、多様な業界・業種で多くの実績を積み重ねてきたことで、さまざまな技術要素を駆使して幅広いニーズに対応するノウハウを蓄積しています。主要メーカー製品や各種スマートデバイスなどと連携するシステムをはじめ、クラウドサービスの活用を進めることで、ビジネス環境の急速な変化にも迅速かつ柔軟に対応できるシステムを開発します。

事例:車載インフォテインメントシステム開発

初期のカーナビゲーション開発への参入に始まり、その後はAndroidに代表されるプラットフォームの変化にも対応しつつ、サーバー開発やコックピット開発など、ナビ開発以外の領域でも経験を積んできました。現在は、Android / Linuxにおけるカーナビゲーション、オーディオ開発をはじめ、メーターやHUDなど多くの製品開発に携わっています。車載機器とつながるスマートフォンアプリやサーバー側の開発についてもサポートしています。

事例:組込み / 制御 / アプリケーション開発

スマートフォンやデジタルカメラ、デジタル複合機などの組込み / 制御システム開発や、AndroidにおけるOSやドライバ換装からアプリケーション開発に至るまで、幅広い開発実績があります。また、各分野で培った技術を基に、エネルギー、航空、宇宙、通信など、人々の社会活動を支えるインフラの開発にも携わっています。

まとめ

ここまで、システム開発とシステム構築の違いや、システム構築の工程や開発手法、Sky株式会社のシステム開発・構築の事例などについてまとめました。本記事でご紹介したように、システム開発はシステムの設計からテストまでの一連の業務を指すのに対し、システム構築はテスト後にシステムを運用できるようにする業務も含むという違いがあります。

このような違いはありますが、開発会社によって定義やフローが異なる場合もありますので、細かなニュアンスは気にせず、システム開発・構築についてお困りごとがあれば、ぜひ一度Sky株式会社までお問い合わせください。

著者 Sky株式会社

Sky株式会社は、家電のシステム開発を手掛けたのをきっかけに、デジタル複合機やカーエレクトロニクス、モバイル、情報家電、さらに自社商品として教育分野における学習活動ソフトウェアや、公共・民間向けクライアント運用管理ソフトウェアなど、幅広い分野でのシステム開発を展開しております。

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