Hypervisorとは
Hypervisorとは、物理コンピュータ上で複数の仮想マシン(Virtual Machine)を実行するためのソフトウェアです。
これにより、1台の物理コンピュータで複数の異なるオペレーティングシステムを同時に動作させることができます。
Hypervisorは、物理リソース(CPU、メモリ、ストレージなど)を仮想マシンに割り当て、同じ物理コンピュータ内で複数の異なるOSを並列に動作する環境を提供します。
Hypervisorのシステムをたとえてみるとオーケストラの指揮者を想像するとイメージしやすいと思います。
- 物理コンピュータは、オーケストラ全体にたとえられます。
- 仮想マシンは、各楽器セクション(弦楽器、管楽器、打楽器など)にたとえられます。
- Hypervisorは、オーケストラの指揮者にたとえられます。
オーケストラの指揮者(Hypervisor)は、オーケストラ(物理コンピュータ)全体を統率し、各楽器セクション(仮想マシン)が調和して演奏できるようにします。
同様に、Hypervisorは、物理コンピュータのリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)を各仮想マシンに適切に分配し、全体のパフォーマンスを最適化します。
身近なところで使われているHypervisor
Hypervisorは皆さんの身近なところでも使われており、スマートフォンやデジカメ、車載インフォテインメントシステムなどを意識せずともHypervisorの恩恵を受けている方がほとんどだと思います。
これらは、Hypervisorを活用することで、セキュリティの向上やパフォーマンスの最適化、複数の機能の効率的な管理を実現しています。
Hypervisor利用のメリット、デメリット
Hypervisorのメリットは、以下の3点が大きいと言われています。
1.効率的なリソース利用
Hypervisorを使用することで、物理コンピュータのリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)を複数の仮想マシン間で効率的に分配できます。
これにより、物理コンピュータのリソースを最大限に活用し、無駄を減らすことができます。
2.柔軟なスケーラビリティ
Hypervisorを使用すると、仮想マシンの作成、削除、クローン作成が容易になります。
これにより、必要に応じて迅速にリソースを追加したり、削減したりすることができ、ビジネスのニーズに応じた柔軟な対応が可能です。
3.コストの削減
Hypervisorを使用することで、物理コンピュータの数を減らすことができ、ハードウェアコストや電力消費、冷却コストを削減できます。
逆にデメリットを挙げると、以下となります。
1.パフォーマンスのオーバーヘッド
Hypervisorは物理ハードウェアと仮想マシンの間に位置するため、リソースの管理や仮想化の処理に追加のオーバーヘッドが発生します。
これにより、仮想マシンのパフォーマンスが物理マシンに比べて低下する可能性があります。
2.セキュリティリスクの上昇
Hypervisorが侵害されると、すべての仮想マシンが危険にさらされる可能性があります。
仮想マシン間での隔離が不十分な場合、1つの仮想マシンでセキュリティが侵害されると他の仮想マシンに波及するリスクもあります。
ネットワークや記憶領域の分離設計が重要になります。
3.複雑な管理と運用
Hypervisorを使用する環境では、物理マシンと仮想マシンの両方を管理する必要があり、運用が複雑になります。
特に、大規模な仮想化環境では、リソースの割り当てやパフォーマンスの監視、セキュリティ対策など、多くの管理タスクが発生します。
代表的なHypervisor製品
1.VMware vSphere
VMware vSphereは、エンタープライズ向けの仮想化プラットフォームで、広範な機能と高い信頼性を提供します。
多くの企業で採用されており、市場シェアが非常に高いです。
クラウドサービスやサーバー、エッジコンピューティングの分野で活用されています。
2.Microsoft Hyper-V
Microsoft Hyper-Vは、Windows Serverに組み込まれている仮想化プラットフォームです。
Windows環境との親和性が高く、コストパフォーマンスに優れているため、多くの企業で利用されています。
Windows ServerやMicrosoft Azureのインフラストラクチャサービスの一部として使用されています。
3.QNX Hypervisor
BlackBerry QNXが提供するHypervisorで、組み込みシステム向けに特化しています。
自動車、医療機器、産業機器などのリアルタイムシステムで広く使用されています。
Hypervisorを使用したシステム設計で注意すべき点
1.リソース管理
各仮想マシン(VM)に割り当てるCPU、メモリ、ストレージなどのリソースを適切に管理し、過剰なリソース割り当てや不足を防ぐ必要があります。
2.セキュリティ
Hypervisor自体のセキュリティを確保し、仮想マシン間の隔離を徹底する必要があります。
仮想マシンごとに適切なセキュリティポリシーを設定します。
3.ネットワーク設計
仮想ネットワークの設計を行い、仮想マシン間の通信や外部ネットワークとの接続を適切に設定します。
ネットワークの帯域幅や遅延も考慮が必要です。
4.スケーラビリティ
システムの負荷が増加した場合に、仮想マシンを追加することでスケールアウトできるように設計します。
オートスケーリングの仕組みを導入することも可能です。
5.パフォーマンス監視
仮想マシンおよびハイパーバイザーのパフォーマンスを監視し、リソースの使用状況やボトルネックを把握します。
必要に応じてリソースの再割り当てを行う必要があります。
おわりに
Hypervisorは、現在のITシーンにおいて幅広く、かつ重要な役割で活躍しています。
開発者の方は今後も触れる機会がさらに増えてくることでしょう。
構築するハードウェア、対象となる業務分野、使用するHypervisorによって性質や検討範囲が変化します。
必要な情報を正確に収集し、Hypervisorメーカー、チップメーカー、OSメーカーとの整合を図り、適切なシステム設計を進めていきましょう。