はじめに
ROS(Robot Operating System)は、名前から想像されるOSではなく、ロボット開発のためのオープンソースソフトウェアフレームワークです。
ROS1とROS2の大きな違いは、アーキテクチャと設計思想にあります。
ROS1は2007年に開発され、シングルプロセス中心の設計を採用しています。
ROS2は2014年に開始され、マルチプロセス環境やリアルタイム処理に対応する設計がなされています。
ROS2は、ROS1に比べて多くの改善点があり、特にリアルタイム性やセキュリティ、分散システムのサポートが強化されています。
これにより、ROS2への移行が加速しています。
2023年のデータによると、ROS2は全ダウンロードの約58%を占めています。
現在の活用状況
ROS2は、リアルタイムプログラミングのワークショップやデータフロー拡張など、技術的な進展が続いており、サポートやドキュメントの整備が進み、コミュニティによる貢献が増えています。
こういった背景から製造業において、ROS2を活用した自動化システムが増加しており、これにより生産プロセスの柔軟性が向上しています。
以下のような分野で活用が進んでいます。
農業
収穫ロボットや農薬散布ドローンなど、農業作業を自動化するためのロボットにROS2が使用されています。
これにより、労働力不足の解消や作業効率の向上が期待されています。
医療
手術支援ロボットやリハビリテーションロボットにROS2が利用されています。
これにより、手術の精度向上や患者のリハビリテーションの効率化が図られています。
物流
倉庫内でのピッキングロボットや自動搬送ロボットにROS2が使用されています。
これにより、物流プロセスの自動化と効率化が進んでいます。
自動運転車
自動運転車のセンサー融合や経路計画、制御システムにROS2が使用されており、安全で効率的な自動運転の実現に貢献しています。
ドローン
ドローンの制御システムにもROS2が利用されています。
特に、複数のドローンを協調して制御するシステムや、ドローンの自律飛行システムにおいてROS2が活用されています。
教育
学生や研究者がロボット技術を学ぶためのプラットフォームとしてROS2が利用されています。
例えば、TurtleBotやRaspberry Pi Mouseなどの教育用ロボットにROS2が搭載されており、プログラミングやロボット工学の教育に役立っています。
身近なコンシューマー製品では、家庭用ロボット掃除機で活用されています。
ROS2のリアルタイム性や分散システムのサポートを利用して、より効率的でインテリジェントな掃除機能を実現しています。
今後の発展、活用
今後、ROS2の発展において以下の点が期待されます。
リアルタイム性の向上
ROS2はリアルタイム性の向上を目指しており、これにより産業用ロボットや自動運転車など、リアルタイム性が求められるアプリケーションでの利用がさらに広がると期待されています。
セキュリティの強化
ROS2はROS1に比べてセキュリティ機能の強化が図られていますが、ROS2ベースのアプリケーションには、データの不正な注入、不正アクセス、サービス拒否攻撃などのセキュリティ脆弱性が存在することが示されています。
適切なセキュリティ対策を講じることで、これらのリスクを軽減する必要があります。
これにより医療ロボットや家庭用ロボットなど、セキュリティが重要な分野での採用が進むと考えられます。
エコシステムの拡充
OSS(オープンソースソフトウェア)全般にも言えることですが、企業やサービスプロバイダー、製品開発者などが連携し、相互により多くのライブラリやツールが提供され、開発者がより簡単にロボットアプリケーションを開発できるようになると期待されています。
上記の発展が進むことで、さらなる活用が進むことが予想されます。
産業界での普及
産業用ロボットや自動化システムにおいて、ROS2の普及が進むことで、生産性の向上やコスト削減が期待されます。
特に、製造業や物流業界での利用が増加すると予想されます。
教育と研究の促進
ROS2は教育や研究の分野でも広く利用されており、これにより次世代のロボットエンジニアの育成が進むと期待されています。
特に、大学や研究機関での利用が増加することで、新しい技術やアプリケーションの開発が促進されるでしょう。
コンシューマー市場への進出
コンシューマー向け製品においても、ROS2の利用が進むと期待されています。
特に、家庭用ロボットやスマートホームデバイスなどでの採用が進むことで、一般消費者にもROS2の恩恵が広がるでしょう。
また、開発に際して特別な知識が必要と思われますが、そこまでハードルは高くない印象です。
OS:Linux、開発言語:C++、Pythonが中心のため、その開発経験があることが前提として、ROSの基本的な概念(ノード、トピック、サービス、アクションなど)やAPIの使い方を習得する必要はありますが、デバッグやテストを支援するツールが多数用意されているので、それらの情報をキャッチアップできればスムーズに開発に入れると思います。