はじめに
2024年4月実施の情報処理技術者試験で情報処理安全確保支援士に合格しました。ITほぼ未経験の状態でSky株式会社に新卒入社し、業務や自己学習を通して少しずつ知識を身につけてきました。
これから合格に向けて頑張ろうとされている方にとって、少しでも参考になればと思い合格体験記を記載します。
※ 私自身がサーバーエンジニアであるため、インフラエンジニア目線の体験記となります。
自己紹介
2021年に自社製品のプリセールスエンジニアとしてSky株式会社に新卒で入社しました。その後自社製品の運用担当として情報システム部門へ異動し、かれこれ新卒4年目となりました。
現在は自社製品の運用のほか、社内インフラである仮想化基盤やファイルサーバー、メールサーバーの管理など主にサーバー寄りの仕事をしています。工学部卒の理系ではあるものの、研究分野は半導体(物性物理)で徹夜でレーザーの実験ばかりしていました(めっちゃ大変でした)。
大学卒業時点では「サブネットマスク…?DNS…?ファイアウォール…?なんそれ…」という感じで、いま思えばこうやって働けているのが不思議なくらい何も知らない状態でした。
入社が近づくにつれ、社会で働くことに対する恐怖と焦りを感じたので、入社式の直前にITパスポートを取得しました。また、自己研鑽のため、社会人2年目の秋には応用情報技術者試験に取り組み合格しました。
↑入社前のレベル感。ITパスポート受験で1000点満点で695点(これからプリセールスエンジニアとして働くにはやや不安な点数…)
受験の目的
情報処理安全確保支援士を取得しようと思った理由はいくつかあります。
① ITエンジニアとして知っておいた方が良い基礎知識を補填したい
突然ですが、皆さんはわからない用語を調べた際に、その用語がさらにわからない用語で解説されており、結局よくわからなかった、という経験はないでしょうか。
私にはあります。
というより業務で頻発していました。昨今は便利なもので、わからない用語はググったらある程度解説が出てきますし、今ではAIに質問するだけでも詳しく解説してくれます。しかし、少し高度な概念を正しく理解するにはどうしても最低限の知識は必要だと感じます。極端な例ですが、DNSを理解するのにIPアドレスがわからないと、どれだけ詳しく解説されても根本的な理解は難しいと思うのです。
私は情報システム部に異動したての頃、メーカーや先輩との打ち合わせで分からない用語が多く、打ち合わせ後にわからなかった用語を調べても結局よくわからずに終わる、のような経験が増えてしまいました。
このままではいつまで経っても自身が中心となって業者との折衝やプロジェクトの推進、新規導入システムの設定値決定やセキュリティ的な懸念の洗い出しなどなど、これから取り組みたいことが誰かの手助け前提でないとできないと感じ焦りを感じました。また、基本的な内容を都度調べるようでは業務効率が悪く、もう少し知識があったほうが便利であるように感じました。
② 午前Ⅰ試験の免除があるうちに取得したい
応用情報技術者試験に合格すると2年間、情報処理技術者試験の高度試験の午前Ⅰ試験が免除になります。午前Ⅰ試験の試験範囲は応用情報技術者試験とほぼ同じで設定されており、範囲がとても広く、いざ焦りだして重い腰を上げ勉強しようと思っても、午前Ⅰ試験の範囲の広さが一層焦燥感を駆り立ててきます。
私は直前に短期集中で勉強するタイプであるため、このタイプの人間が午前Ⅰ試験をスムーズに合格できるビジョンが持てず、先に応用情報技術者試験に合格する作戦にしました。応用情報技術者試験に合格しても2年以内に次の試験に合格しないといけないので必死です。
学習方法
いざ勉強を始めようと思い立ち書店に立ち寄りました。資格の参考書コーナーに複数種類取り揃えてあります。さっと参考書に目を通した感じでは、試験範囲の7割くらいはわからない感じがしました。
この時点でだいぶ心が折れそうになりましたが、決めたからにはやるしかありません。普段はできるだけ薄い参考書を複数回読む戦略を取りますが、今回は理解度が不足していたため、置いてある参考書の中で一番かみ砕いて解説してあるものを選ぶことにしました。
私の周りの合格者の方はベテランの方が多く、業務を通して予備知識が豊富にある方が多いです。予備知識が豊富な方は過去問だけで合格されている方もおられます。
書店で参考書にざっと目を通して、6割以上わかれば過去問演習がメインで、わからないことは都度ネットなどで調べる、という戦略が良いように思います。私は6割以上わからない派だったため、参考書で基本的な理解を深めました。利用した参考書は下記のものです。
○ 参考書1(全体的な知識習得)
情報処理安全確保支援士の参考書の中では一番分厚いですが、その分解説が丁寧で非常にわかりやすいです。あまりにもわかりやすく、私はこれ以降も技術評論社の本を積極的に選ぶようになりました。参考書を見ながらであれば、記載している内容を一通り説明できるくらいまで読みました。
○ 参考書2(午前Ⅱ試験対策)
[改訂新版]要点早わかり 情報処理安全確保支援士ポケット攻略本
こちらも技術評論社の参考書ですが、小さい本で用語暗記のために持ち歩きました。参考書1の内容が小さくまとまっていて試験直前に全体を思い出すためにも使いました。十分勉強していても数点の差で合否が決まる場合もあるので油断せず知識を詰め込みました。
○ iOSアプリ(午前Ⅱ試験対策)
非常によくできたアプリですべての問題が解説付き、網羅率や正答率まで表示されます。平均正答率が8割くらいになるくらいまで通勤中に取り組みました。 試験の直前は間違えやすい問題だけ抽出してひたすら暗記していました。
○ 過去問演習(午後試験対策)
IPAのサイトや過去問道場などから問題を印刷して解いていました。私は過去問演習をしようとしていた試験直前期に会社業務が忙しくなり想定していたほどは演習ができませんでした。4~5年分しかできなかったと思います。
○ その他
私独自のものですが、自宅で勉強すると思いのほか集中力が続かない性格であるため毎回職場か自宅近くのカフェで勉強をしていました。平日はコメダかドトール、土日はドトール→マクドナルドで昼食→そのまま勉強の続き、という感じでした。自宅で勉強するよりお金はかかりましたが、自宅ではリラックス、外ではちゃんと勉強する、という感じでメリハリはつけれてよかったです。
ご自身の特性に合わせて、ルールを決めて取り組むのも大事かと思います。
試験当日と2024年春試験の傾向
試験当日を迎えました。応用情報技術者試験の時よりも周りの受験者の年代層があがり、明らかにベテラン感が漂う方が増えます。
※ 応用情報技術者試験の平均合格年齢は28歳くらいですが、支援士は32歳くらいです。こんな中で自分が受かるんか?と不安に思いつつ試験会場へ向かいます。
試験当日、私は下記のことに気をつけました。
- 会場近くのコンビニは大変混雑するため、事前に食事は用意しておく
- トイレに行きたくならないようにカフェインは控えめにする
- 午後は知らない内容でも国語力でなんとかできる場合も多いため、前日は悪あがきせずちゃんと寝て、昼休みも最後の詰め込みをするのではなく、外を眺めながら音楽を聞いてなるべく脳を休ませる
※ 私の会場でそんな余裕をかましてるのは私だけでしたが…(内心全然余裕じゃない)。 - 昼休み時間に午前の解答速報などをネットで検索しない
解答速報は間違えていることが多く一喜一憂することに意味がないため。
午前はこれまでと変わらず、とりあえず過去問で8割取れるくらい勉強しておけば手ごたえを感じることができます。新しい問題は毎回出題されますが、iOSアプリ問題集などで十分に取り組んでおけば6割は確実に取得できます。
午後試験は統合された関係で若干傾向が分かりづらくなっています。午後試験は4つの大問から2問選択する形式で、得意な分野を選べます。これまではセキュアプログラミング系×2とネットワーク/インシデント/監査系×2の出題だったので、インフラエンジニアは後者×2を選ぶのが通例でした。
しかし今回は特に予告もなくセキュアプログラミング系×3、ネットワーク系×1に変更されたため、プログラミングやWebサーバー構築をしない人にはかなり取り組みにくい内容でした。
よく読めばヒントもたくさんある出題形式でしたが、一番解きやすい問題でも題材がサーバーサイドリクエストフォージェリだったので、この手の問題に抵抗がある人は問題に目を通した時点で頭真っ白だったことでしょう(私はギリギリ意識がもちました)。上記の変更もあり難易度が上がったため、今回は合格率が20%を切る結果となりました。
試験後の支援士に関するネット掲示板も阿鼻叫喚だったのを覚えています。今後はインフラ系の人もプログラミング系の知識に関してもっと勉強する必要があるかもしれません。個人的に今回はメールセキュリティ関係が午後に出題されると予想していましたが、全く出題されず残念でした…。合格発表当日はそわそわしていましたが、合格者一覧に自分の受験番号が載っていて、同じ日にIPAの試験を受験した先輩(同じく合格)とめちゃくちゃ喜びました。
最後に
結構勉強したので、打ち合わせでわからないことが減りました(年次が上がってきただけかもしれませんが)。机上で取得した知識を前提として実環境の設定を決定することもあり、勉強した内容への理解も日々深まっているように思います。業務後に勉強したり、土日返上で勉強したり大変でしたが試験に取り組んでよかったです。
長文にも関わらずここまで読んでいただきありがとうございます。
私も受験する前はネットでいろいろと調べて、皆さんの話を参考にさせていただきました。今回は運よく合格することができましたが、問題の傾向にも左右されるので、不合格になっても何度でも挑戦したらよいと私は思います。
※ IPA試験はベンダー試験と比較したら安価です。
これまでIPAの資格以外にも複数の資格取得に取り組んできた私ですが、資格取得が絶対的に必要だとは思っていません。元々実力がある人や地頭がよく覚えがいい人は資格を取得しなくてもエンジニアとして活躍できるように思います。
しかし、私はあまり要領がいいわけでもなく泥臭く頑張るしかないタイプなので、学習などを通して少しずつレベルアップしていこうと思います。同じように資格取得を通して能力を身につけたいという方はとても尊敬しますし、心から応援しています。頑張って習得した知識はいつかどこかで自身の手助けをしてくれるように思います。
以上です。よろしくお願いいたします。