車載製品の開発において、EMC(Electromagnetic Compatibility)試験は避けては通れない重要なプロセスです。
多くのソフトウェアエンジニアにとっては、EMCは「ハードウェアの課題」であり、他人事と感じているケースが多いです。
しかし、近年のSDVにおいては、ソフトウェアのウェイトが大きくなっており、EMCはソフトウェアにとっても他人事ではなくなってきています。
この記事では、EMC試験とソフトウェアの関係性について、まとめていきます。
第1章:EMC試験の基礎知識
まず、土台となるEMC試験とは何かを簡単にまとめます。
1. そもそもEMC試験とは?
EMCとは「Electromagnetic Compatibility(電磁両立性)」の略です。
電子機器が「①他人(他の機器)に電磁的な迷惑をかけず」、かつ「②他人(他の機器)からの電磁的な妨害に耐えられる」という、2つの性質を両立させているかを確認するための試験です。
2. EMC試験の主な種類
EMIとEMS、それぞれに「線(ケーブル)経由」か「空間(アンテナ)経由」かで、代表的な試験が分かれています。
| 分類 | 試験の種類 | 概要 |
|---|---|---|
| EMI(ノイズを出すな) | 伝導エミッション | 電源線や信号線に漏れ出すノイズの量を測定する。 |
| 放射エミッション | 機器から空中へ放射されるノイズの強さをアンテナで測定する。 | |
| EMS(妨害に負けるな) | 伝導イミュニティ | 電源線や信号線に意図的にノイズを注入し、誤作動しないかを確認する。 |
| 放射イミュニティ | 機器にアンテナから強力な電磁波を浴びせ、誤作動しないかを確認する。 | |
| ESD(静電気) | 人体からの静電気などを想定した、高電圧のパルスを印加し、耐性を確認する。 |
ソフトウェアがEMCに与える影響
SDVという思想が発展してきていますが、高度な制御を行うために、高性能なマイコンなどが使われてきています。
マイコンを制御するためにソフトウェアの振る舞いが重要になっています。
1. マイコン自身がノイズ発生源
マイコンは、内部で非常に高速なクロックで動作しており、このクロック信号自身やその高調波が、ノイズとして外部に放射されます。
2. ソフトウェアはマイコンの振る舞いを決めるノイズの指揮者
マイコンというノイズ発生源を、どのように振る舞わせるかを決めているのが、ソフトウェアです。
I/Oポートのスイッチングや、処理負荷に応じた消費電流の変動は、すべてソフトウェアの命令によって引き起こされ、ノイズの発生に直結します。
3. 「意図しない動作」がノイズを生む
使っていないピンを入力のまま放置(フローティング状態)すると、予期せぬ発振を起こし、新たなノイズ源となることがあります。
これも、ソフトウェアによる適切な初期化処理で防ぐことができます。
まとめ
記載してきた通り、ソフトウェアの振る舞いが、近年EMC試験に与える影響は大きくなってきています。
EMCはもはやハードウェアだけの課題ではありません。
設計の初期段階から考慮に入れるべき品質要素の一つとして、ソフトウェアでも検討していく必要があります。
普段の開発の中でも、意識を持って取り組んでいきましょう。

