Amazon Quick Sight には、ダッシュボードやビジュアルを自社アプリケーションに埋め込む機能があります。
「埋め込み分析(Embedded Analytics)」と呼ばれるこの機能を使うと、ユーザーがアプリケーションから離れることなくデータを分析・操作できるようになります。
ただし、埋め込みにはいくつかの種類があり、ユースケースによって最適な選択肢が異なります。
本記事では、Amazon Quick Sight が提供する 4 つの埋め込み方式 を整理し、それぞれの特徴と選定のポイントを解説します。
前提 : Amazon Quick Sight の埋め込み機能は Enterprise Edition で利用可能です。
埋め込みの全体像
Amazon Quick Sight の埋め込みは、大きく API ベース と 1-click の 2 系統に分かれます。
| # | 方式 | 認証 | コーディング | 主なユースケース |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Anonymous Embedding | 不要(匿名) | 必要 | SaaS アプリ、公開ポータル |
| 2 | Registered User Embedding | Amazon Quick Sight ユーザー必須 | 必要 | 社内アプリ、SaaS アプリ |
| 3 | 1-click Enterprise Embedding | Amazon Quick Sight ユーザー必須 | 不要 | 社内イントラネット |
| 4 | 1-click Public Embedding | 不要(公開) | 不要 | 公開 Web サイト |
1. Anonymous Embedding(匿名ユーザー埋め込み)
概要
アプリケーションのユーザーを Amazon Quick Sight に登録する必要がない埋め込み方式です。
GenerateEmbedUrlForAnonymousUser API を使って埋め込み URL を生成します。
埋め込み可能なコンテンツ
- ダッシュボード
- 個別のビジュアル
- Q 検索バー / Generative Q&A
特徴
- ユーザー管理の手間がない(Amazon Quick Sight 側にユーザーを作成しなくてよい)
- RLS(行レベルセキュリティ)は タグベース で対応可能
- CLS(列レベルセキュリティ)は利用不可
- 大規模なユーザーベースにスケールしやすい
- Capacity Pricing(セッション課金) との組み合わせが一般的
向いているケース
- SaaS アプリケーションに分析機能を組み込みたい
- ユーザー数が多く、Amazon Quick Sight 側でのユーザー管理を避けたい
- 認証はアプリケーション側で完結させたい
2. Registered User Embedding(登録ユーザー埋め込み)
概要
Amazon Quick Sight に登録されたユーザーに対して埋め込みを行う方式です。
GenerateEmbedUrlForRegisteredUser API を使います。
埋め込み可能なコンテンツ
- ダッシュボード
- 個別のビジュアル
- Q 検索バー / Generative Q&A
- Amazon Quick Sight コンソール
特徴
- RLS(行レベルセキュリティ)と CLS(列レベルセキュリティ)の両方に対応
- ブックマークなどのパーソナライズ機能が使える
- コンソール埋め込みにより、ユーザーがアプリ内でダッシュボードを作成可能
- ユーザーをAmazon Quick Sightに登録・管理する必要がある
向いているケース
- ユーザーにダッシュボードの作成・編集権限を与えたい
- 列レベルのきめ細かいアクセス制御が必要
- ブックマークやお気に入りなど、ユーザーごとの体験をカスタマイズしたい
3. 1-click Enterprise Embedding(ワンクリック社内埋め込み)
概要
Amazon Quick Sight のコンソールから取得した静的な埋め込みコード(iframe)を、社内アプリケーションに貼り付けるだけで利用できる方式です。
コーディングは不要です。
埋め込み可能なコンテンツ
- ダッシュボード
- 個別のビジュアル
特徴
- コーディング不要 — iframe のコードを貼るだけ
- ユーザーはアクセス時に Amazon Quick Sightへのサインインが必要
- RLS に対応
- カスタマイズの自由度は低い
- 外部向け(SaaS)には非推奨
向いているケース
- 社内イントラネットや Wiki にダッシュボードを素早く埋め込みたい
- 開発リソースが限られている
- 全社員が既に Amazon Quick Sight ユーザーとして登録されている
4. 1-click Public Embedding(ワンクリック公開埋め込み)
概要
ダッシュボードを一般公開し、誰でもアクセスできる形で埋め込む方式です。
Amazon Quick Sight の共有設定から公開を有効にし、取得した埋め込みコードを Web サイトに貼り付けます。
埋め込み可能なコンテンツ
- ダッシュボード
- 個別のビジュアル
特徴
- コーディング不要、認証不要
- 誰でもアクセス可能(完全公開)
- RLS は利用不可(公開なので当然)
- 共有設定から即座に公開を取り消し可能
- 最もシンプルだが、セキュリティ制御は最小限
向いているケース
- オープンデータの可視化を公開 Web サイトに掲載したい
- IR 情報やレポートを広く公開したい
比較まとめ
| 観点 | Anonymous | Registered User | 1-click Enterprise | 1-click Public |
|---|---|---|---|---|
| コーディング | 必要 | 必要 | 不要 | 不要 |
| Amazon Quick Sight ユーザー登録 | 不要 | 必要 | 必要 | 不要 |
| RLS | ○(タグベース) | ○ | ○ | × |
| CLS | × | ○ | ○ | × |
| コンソール埋め込み | × | ○ | × | × |
| Q / Generative Q&A | ○ | ○ | × | × |
| SaaS アプリ向け | ◎ | ◎ | △ | × |
| 社内アプリ向け | ○ | ◎ | ◎ | × |
| 公開サイト向け | △ | × | × | ◎ |
| カスタマイズ性 | 高 | 高 | 低 | 低 |
おわりに
Amazon Quick Sightの埋め込みは、ユースケースに応じて適切な方式を選ぶことが重要です。
まずは「誰に」「何を」「どの程度のカスタマイズで」見せたいかを整理し、上記の比較表やフローチャートを参考に選定してみてください。
小規模な社内利用であれば 1-click 系で十分ですし、SaaS プロダクトへの本格的な組み込みであれば API ベースの Anonymous / Registered User Embedding が適しています。
Amazon Quick Sightの埋め込みを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

