はじめに
生成AI(GenAI)とモデルベース開発(MBD)は、現在「ソフトウェア開発の自動化」という共通の目標に向けて、急速に統合が進んでいる領域です。
これまでのMBDは、Simulinkなどのグラフィカルなモデルから決定論的にコードを生成する手法が主流でしたが、生成AIの登場により「曖昧な要求から厳密なモデルへの変換」や「複雑な検証プロセスの自動化」といった新たなフェーズに突入しています。
この2つを組み合わせることのメリットには以下のようなものがあります。
生成AIとMBDの親和性
MBDと生成AIは、互いの弱点を補完し合う関係にあります。
- 「曖昧さ」から「厳密さ」への橋渡し
生成AIは自然言語(曖昧な要求)の理解に長けていますが、出力の正確性に課題があります。
一方、MBDは「モデル」という数学的に厳密な形式を扱うため、AIが生成したモデルをシミュレーションで検証することで、AIの不確実性を排除できます。 - 構造化データの活用
MBDで使われるSysMLやMATLAB/Simulinkのデータは構造化されているため、テキストベースのコードよりもAIが構造を学習・生成しやすく、精度の高い成果物が期待できます。
現在では自動車業界はもとより航空、FAといった業界で実践的な取り組みが既に進んでいます。
- 要求仕様からモデルの自動生成
自然言語で書かれた仕様書をAIが読み取り、SysMLのダイアグラムやSimulinkのブロックを自動構築する試み。 - モデルベース・テスティング(MBT)の高度化
MBDの利点である「早期検証」をAIで加速させる取り組み。 - Legacy Assetのモデル化(リバースモデリング)
過去に蓄積された膨大な「手書きコード(C言語など)」を、生成AIを使ってMBD用のモデルに変換する取り組み。
これにより、古いシステムの保守性を高め最新のMBD環境へ移行させるコストを大幅に削減しています。
今後の課題と展望
技術的な親和性は高いものの、実際に取り入れるとなると課題も浮き彫りになっています。
- 信頼性の保証: AIが生成したモデルが、ISO26262などの厳しい安全規格を遵守しているか。
- ドメイン特化型LLM: 汎用的なAIではMBD特有の言語や物理制約を理解しきれていない。
※工学特化型LLMというものの開発が進んでいるようです。
ソフトウェア開発において生成AIとMBDの融合は自動化、高速化を実現するだけではなく、より上流工程への思考を深め人による仕様・設計を早期に完成させる新たな手法として私たちが相対する日もそう遠くないと考えさせられます。
以上です。

