組込み製品の設計段階でも使われるリスク管理手法「 FMEA(故障モード影響解析) 」について紹介します。
FMEA(故障モード影響解析)とは?
FMEA(Failure Mode and Effects Analysis) は、製品の設計段階や製造プロセスの潜在的なリスクに対して、
故障モードの観点から影響を解析、評価しリスクを事前に取り除いていく手法で、組込み製品だけでなく、
電力業界や医療分野など幅広い分野で活用されています。
その中でも製品の設計段階での潜在的な故障モードを特定し、影響を評価する手法を「設計FMEA(Design FMEA)」と言います。
今回は、ソフトウェア開発における設計FMEAについて紹介します。
設計FMEAのメリットや効果
1.早期発見と対策
設計段階での問題を早期に発見し、対策を講じることで、後工程での手戻りを防ぎます。
これにより、開発プロセス全体の効率が向上します。
2.コスト削減
問題の早期発見により、修正コストを削減できます。
設計段階での修正は、製造段階や市場投入後の修正に比べてコストが低く抑えられます。
3.信頼性向上
製品の信頼性と安全性を向上させることができます。
潜在的な故障モードを事前に特定し、対策を講じることで、製品の品質が向上します。
設計FMEAの実施手順
1.システムの理解
対象となるシステムや製品の構造、機能を理解します。
2.故障モードの特定
各コンポーネントや機能の潜在的な故障モードを洗い出し、ソフトウェアのモジュールごとに考えられるエラーや不具合をリストアップします。
3.影響の評価
各故障モードがシステム全体に与える影響を評価します。
影響の大きさや範囲を定量的に評価し、優先順位をつけます。
4.原因の特定
故障モードの原因を特定し、発生確率を評価します。
これには、過去のデータや経験を基にした分析が含まれます。
5.対策の検討
故障モードの発生を防ぐための対策を検討し、実施します。
具体的な対策としては、設計変更や追加のテストが考えられます。
6.フォローアップ
対策の効果を確認し、必要に応じて再評価を行います。
例えば、組込みシステムの一部であるセンサーの故障モードを特定し、その影響を評価する場合を考えます。 センサーの故障モードとしては、「データの読み取りエラー」や「電源供給の不安定」などが考えられます。 これらの故障モードがシステム全体に与える影響を評価し、対策を講じます。
FTAとの違い
FMEAと混同されやすいものとして、FTA(Fault Tree Analysis) があります。
FTAは、特定の故障事象に至るまでの原因をツリー構造で解析する手法です。
FMEAが各コンポーネントの故障モードを個別に評価する(ボトムアップアプローチ)のに対し、
FTAはシステム全体の故障原因を体系的に解析(トップダウンアプローチ)します。
最後に
FMEAはチームで実施することが重要です。異なる視点からの意見を取り入れることで、より包括的なリスク評価が可能になります。
また、設計FMEAは一度実施して終わりではなく、設計の進行に応じて継続的に見直しを行うことも重要になってきます。
製品の信頼性と安全性の向上に設計FMEAの活用を検討してみてはいかがでしょうか。