RASIC(ラシック) は、プロジェクトや業務の役割/責務を明確化するためのフレームワークです。
RASICチャートやRASCI(ラスキー) とも呼ばれます。
RASICの5つの役割
役割は以下5つ。
それぞれの頭文字をとって「RASIC」と呼ばれています。
役割 | 役割(日本語) | 概要 | 具体例 | 設定人数 |
---|---|---|---|---|
R: Responsible |
実行責任者 | タスクを遂行し完了させる担当者 | システム開発やテストを行うエンジニア | 1名 |
A: Accountable |
説明責任者 | タスクに最終的な責任を持つ人 | プロジェクトマネージャ、プロダクトオーナー | 1名 |
S: Support |
支援者 | 実行責任者をサポートし、必要なリソースや助言を提供する人 | PMO、スクラムマスター | 0名以上 |
I: Informed |
報告先 | 進捗や結果について情報を受け取る人 | 上層部、他部署関係者、クライアント | 0名以上 |
C: Consulted |
相談先 | 意見や助言を求められる専門家や関係者 | 法務、ある分野のスペシャリスト | 0名以上 |
「人」や「~者」と記載していますが、チームや企業の場合もあります。
特に、企業間の責務分担を明確化するためにRASICが使用されることも多いです。
複数企業での開発となると、規模が大きく、抜け漏れが発生すると大きな問題となってしまうためです。
RASICの具体例
「い社」があるシステムの開発を「ろ社」に依頼したとします。
- い社:要求元
- ろ社:要求元からの請負
- は社:仕様書作成~実装
- に社:最終的なテスト実施
あくまで一例ですが、この場合以下のようなRASICとなります。
タスク | い社 | ろ社 | は社 | に社 | 補足 |
---|---|---|---|---|---|
要件定義 | A/R | C | - | - | 実現性可否などは「ろ社」へ相談が必要 →実現できない要件は、実現可能な要件に変更する必要あるため |
機能仕様書作成 | I | A | R | I | テストを実施する「に社」に仕様書の報告が必要 →機能仕様書をもとに、テスト仕様書を作成する必要があるため |
設計、実装 | I | A | R | I | テストを実施する「に社」にテスト開始時期の報告が必要 →「に社」の環境構築やリソース調整が必要なため |
テスト実施 | I | A | S/C | R | 「に社」では困難なテストやテストで問題発生した場合は、「は社」へ相談や「は社」の支援が必要 |
RASICを決める際の注意点
-
Responsible(実行責任者)とAccountable(説明責任者)は、必ず1名/チーム/社のみとする
→責任の所在が不明確にならないようにするため。 -
Support(支援者)やInformed(報告先)、Consulted(相談先)は、必要最小限とする
→「念のため」として設定し過ぎると、これも責任が不明確になる要因となるため。 -
タスクの粒度を適切に
→細かすぎると、RASICが巨大になり、誰が何を担当するのかが分かりづらくなるため。
→粗すぎると、漏れが発生してしまうため。 -
必要あればRASICを見直す
→様々な変化により、途中で役割変更が必要となる時もあります。
その変更時にRASICも更新しないと、漏れや問題発生した際の責任の所在が不明確になるため。
最後に
RASICで責務明確化できることにより、 漏れをなくし、適切なコストやリソースを計画することができます。
開発の数人日で終わるような細かいタスクでRASICを使用するのは過剰と思いますが、 数人月以上の規模で、ステークホルダーが自社以外の方も含まれるのであれば、 RASICは威力を発揮してくれます。
使用されたことない方は、ぜひ一度使用してみてください。