はじめに
クラウド環境の高度化が進む中で、インフラ構築・運用のあり方も急速に変化しています。
従来のGUI手動操作から、コードベースによる自動化へ
それが「Infrastructure as Code(IaC)」の概念です。
本記事では、AWS環境におけるIaCの本質とベストプラクティス、
さらには導入の勘所までを、現場視点で深掘りしていきます。
IaCとは何か?
Infrastructure as Code(IaC)とは、インフラリソースの構成をコードとして記述し、 ソースコード管理・再現性・自動化を実現するアプローチです。
キーワードは以下の3点です。
- 再現性:同じコードから常に同じインフラを再構築可能
- 可読性・変更履歴:バージョン管理による変更の可視化とレビュー体制
- 自動化:人手によるミスを排除し、CI/CDと連携可能な運用フロー
なぜAWS環境にIaCが必須なのか?
AWSはGUI操作でもリソース構築が可能ですが、手動作業には、以下のようなリスクがあります。
手作業の属人化
オペレーションの記録が残らず、「誰が」「何を」「どこで」行ったか不透明。 IaC化により、GitHub上のPull Requestで全変更を記録・レビュー可能に。
再現性の欠如
複数環境(dev/stg/prd)での環境差異が発生し、バグの再現や検証が困難に。 IaCでテンプレート化すれば、完全に同一の構成を複数環境にデプロイ可能。
ガバナンスとセキュリティ統制の困難さ
誰でも変更可能なGUI構築では、セキュリティリスクが放置されがち。 コードレビューやCIによる静的解析で、セキュリティ統制も可能になります。
AWSにおける主要なIaCツール群
AWS CloudFormation
AWS純正のIaCツール。YAML/JSON形式でリソース構成を定義可能。
特徴) スタック分割(ネットワーク/アプリ/監視など) Nested Stackによるモジュール化 Drift Detectionによる乖離検知
Terraform
HashiCorpが提供するマルチクラウド対応のIaCツール。
特徴) HCL(独自言語)による直感的な記述 terraform plan による事前差分確認 モジュール化とレジストリによる再利用性向上 AWS外のサービス(Datadog/Sentryなど)も統合可能
CDK(Cloud Development Kit)
TypeScriptやPythonなどの言語でIaCを書く開発者向けツール。
特徴) 高レベル抽象化で記述量を削減 テストコードと統合可能(Jestなど) 学習コストはやや高めだが、再利用性は抜群
Pulumi
プログラミング言語でインフラを記述する次世代IaCツール。
特徴) TypeScript、Python、Go、C#などの汎用言語を使用可能 CI/CDやユニットテストとの高い親和性 状態管理にはバックエンドとしてPulumi CloudまたはS3/DynamoDBなどを選択可 チームでのアプリケーション開発とIaCを同一言語で統一可能な点が魅力
現場で見落とされがちなIaC導入の落とし穴
コードレビュー体制が未整備 → PRベース運用を徹底し、Infraチームでレビュー体制を確立
CI/CDと未連携 → GitHub ActionsやCodePipelineと連携し、terraform plan / apply の自動化へ
状態ファイルの衝突 → terraform workspaceや S3バックエンド の導入で解決
モジュール乱立とブラックボックス化 → モジュール設計は「単一責任・構成の明確化・ドキュメント併記」が鉄則
まとめ:IaCの導入は“仕組みづくり”そのもの
IaCは単なるコード化ではなく、「チーム開発としてのインフラ運用」への進化です。 属人性の排除、セキュアな運用、マルチアカウント環境へのスケーラブルな展開──これらを実現するために、 IaCはもはや“選択肢”ではなく“必然”となっています。
おわりに
Sky株式会社では、Terraform/CDK/CloudFormation/Pulumi等を活用したIaC実装支援、 CI/CD構築、マルチアカウント戦略との統合支援までを包括的に提供しています。
IaC導入に関してお悩みの際は、お気軽にご相談ください。 “インフラは書く時代へ”──その第一歩を、ぜひ一緒に踏み出しましょう。