ADASとは? 自動運転との違いや機能を徹底解説!

更新:2024.4.16
著者:Sky株式会社


ADASとは?

ADAS(エーダス)とは「Advanced Driver-Assistance Systems」の略称で、日本語では「先進運転支援システム」と呼ばれています。ドライバーや歩行者の安全性と快適性を高めるために運転操作を支援する、さまざまなシステムの総称です。なお、あくまでも運転の主体はドライバー(人)であり、ADASが行うのはサポートに過ぎません。

人は自動車を運転するとき、周囲を見渡して交通状況を確認し、加速や停止などの判断を行い、手足を用いて正確に自動車の動きを制御しています。この「認知」「判断」「操作」と呼ばれる3つの動作のいずれかをサポートするのが、ADASの役割です。例えば走行中、衝突防止のため車間距離に応じて速度を制御する機能や、前方に人を検知したときに警告音を鳴らす機能などが挙げられます。

自動運転との違いとは?

ADASは「自動運転」と並べて語られることが多く混同されやすいですが、両者は「人が運転に関与する度合い」によって区別されます。自動運転の最終的な目的は、運転システムが主体となり、人が運転にまったく関与せず自動車の判断のみで目的地にたどり着くことです。一方でADASの場合は、人の意思を優先して運転をサポートすることが目的であるため、自動運転よりもドライバーの裁量が大きいといえます。

SAE(アメリカ自動車技術会)は自動運転の程度を以下の6段階に区分しており、レベル2「部分運転自動化」までは運転支援(ADAS)、レベル3「条件付運転自動化」からは自動運転に分類されています。この定義は現在、日本を含む世界における主流となっています。

レベル 技術名称 運転主体 走行領域
0 運転自動化なし 適用外
運転支援
(ADAS)
1 運転支援 限定的
2 部分運転自動化 限定的
自動運転 3 条件付運転自動化 システム 限定的
4 高度運転自動化 システム 限定的
5 完全運転自動化 システム 限定なし

出典:内閣官房IT総合戦略室「官民ITS構想・ロードマップ2017

また、ADASと自動運転には車載カメラやセンサーなど共通する技術も多く、ADASに関連する技術開発は完全自動運転の実現と密接につながっています。

ADASの機能とは

ADASの各機能が生み出された背景には、ドライバーの負担軽減や事故防止といった、快適性や安全性の向上を目指してきた歴史があります。そもそも「安全運転」は、ドライバー自身が周囲の状況を確認し、適切に判断・操作することで成立します。しかし、不注意や認知機能の低下による誤操作といった人為的なミスを完全に防ぐことは容易ではありません。

そこで事故への対策として、例えば3点式シートベルト、強いブレーキ中でもハンドル操作を可能にするABS、強い衝撃で作動して身を守るエアバッグなど、「異変が起きた後に」機能する支援システムが生み出されてきました。

これに対してADASは、先進技術の活用によって「異変が起きる前に」自律的に作動するシステムです。ADASの機能を実現する技術には、外部環境を認識するセンサー、車体を電子制御するECU、各種ECU同士を連携させる車載ネットワーク、自車位置を特定する車載ロケータなど、さまざまな種類があります。

このような技術の発展によって、これまでドライバーのみが背負っていた安全運転の役割を、一層効果的なかたちで自動車も一緒に担えるようになりました。ここでは、そんなADASの代表的な機能についてご紹介します。

ACC(Adaptive Cruise Control System:車間距離制御装置)

ACCは、車載センサーからの情報に基づき、ECUによってアクセルとブレーキを自動的に操作する機能です。ACCにより、前方を走行する車両との車間距離を一定に保つ「追従走行」が可能となります。これは特に、一定速度での長時間にわたる走行が求められる高速道路で、ドライバーの疲労軽減に役立つ機能です。

また、近年では「全車速追従機能」も知られています。前方車両が減速した場合でも追従を解除せず、減速した速度に合わせた走行が可能です。ACCは現在、量産車両にオプションとして搭載される場合が多く、ADASの中でも代表的な機能です。

FCW(Forward Collision Warning:前方衝突警告)

FCWは、前方を走行する車両と衝突する危険性が高まった場合に、ドライバーに警告を出して回避動作を促す機能です。例えば、車間距離の狭まりや、急ブレーキによるブレーキランプ点灯といった変化を検知します。交通量の多い状況で最も一般的な事故である「衝突」を防ぐのに有効です。

ミリ波センサやステレオカメラなど、FCWの実現に用いられる機器の選択肢は幅広く、ADASの中でも採用されやすい機能です。なお、FCWはあくまでも警告をするのみであり、衝突を自動的に回避する機能ではない点に注意が必要です。

AEBS(Advanced Emergency Braking System:衝突被害軽減制動制御装置)

AEBSは、前走車との衝突が避けられないと判断された場合に、自動的にブレーキを作動させる機能です。異変を検知し、前述のFCWがドライバーへ警告し衝突回避を促したにもかかわらず、それでもブレーキ操作が行われなかった場合に作動します。衝突を事前に回避するのはもちろん、もし事故が起きた場合にも、被害を最小限にする上で重要な役割を果たします。

なお、AEBSの規格は国土交通省により定められています。2021年11月以降、国産の新型車の一部に対して自動ブレーキの搭載が義務付けられており、2028年までにはすべての新車に自動ブレーキが搭載される予定です。

NV/PD(Night Vision/Pedestrian Detection:ナイトビジョン / 歩行者検知)

NV/PDは、夜間や荒天、濃霧の発生などで視界が悪い状況でも、歩行者や障害物の熱源をリアルタイムに感知し、その存在をドライバーに知らせて注意喚起する機能です。検知できる対象が前方を走行する車両のみであるFCWとは異なり、歩行者の検知が可能な点で優れています。

たとえ普段から走り慣れている道であっても、視界が悪いとまったく異なる風景に見えるもの。特に昼間と比べて事故の発生件数が増える夜間の走行において、NV/PDは強い味方になります。ただし、本機能では高価な遠赤外線カメラや専用ディスプレイを用いるケースが多く、搭載は高級車に限られているのが現状です。

TSR(Traffic Sign Recognition:交通標識認識)

TSRは、道路上に点在する交通標識を車載カメラで認識し、ドライバーに対して適切な交通規制情報を提示、警告する機能です。例えば「車両進入禁止」の標識を検知するとディスプレイ上にメッセージを表示する、それでも禁止区域に入った場合には警告音を鳴らすなど、車種によってさまざまな方法が用いられます。

TSRは、ドライバーが不注意で標識を見逃してしまうことで起こる事故を防ぐのに役立ちますが、すべての標識を漏れなく検知することは難しいと言わざるを得ません。運転する地域で遵守すべき交通ルールをドライバー自身が頭に入れ、標識にも常に気を配ることが大切です。

LDW(Lane Departure Warning:車線逸脱警報)

LDWは、道路上の車線を車載カメラで検知して画像解析し、車両が車線から意図せずはみ出してしまうことを防ぐ機能です。例えば、道路でウインカーを出さずに車線を越えるような挙動が検知された場合に、メーターパネルでの注意表示、ハンドルやシートの振動、警告音の発信などを通じてドライバーに知らせます。センターラインを越えて対向車と正面衝突するような、危険な事故の防止につながります。

また、LDWに代表される車線逸脱防止の各支援機能は、安全面のみならず、長距離運転でのドライバーの負担軽減にも大いに役立ちます。

LKAS(Lane Keeping Assist System:車線逸脱防止支援システム)

先述のLDWは車両が車線から逸脱しそうになったときに警告するのみですが、LKASは自動でステアリング操作をすることで元の車線へ戻そうと積極的に働きかけます。

なお、こうした一般的なレーンアシスト機能は高速道路などの自動車専用道路での使用が想定されており、車が一定以下の速度になると自動で解除されます。おおむね時速60km程度から作動する場合が多いです。

BSM(Blind Spot Monitoring:死角モニタリング)

BSMは、ドライバーの死角から接近する車両を車載カメラやレーダーで検知する機能です。ドアミラーのインジケーター点灯や警告音でドライバーに知らせることで、危険を防ぎます。死角の見落としによる事故はドライバーの努力だけでは防ぎきれないため、非常に頼もしい機能といえます。

RCTA(Rear Cross Traffic Alert:後退時車両検知警報)

RCTAは、車両をバックさせる際にドライバーの目視だけでは気づきづらい後方左右の確認を補助する機能です。自車の後方を横切る人や近づいてくる車両を、車載カメラや超音波センサーによって検知し、危険がある場合にはドアミラーのインジケーター点灯や警告音で知らせます。特に狭いスペースで駐車をするときなど、バックでの走行に苦手意識のあるドライバーに重宝される機能です。

DMS(Driver Monitoring System:ドライバー監視システム)

DMSは、運転中のドライバーのハンドル操作や表情から運転状況を把握し、運転に支障があると判断した場合に警告を発する機能です。場合によっては運転そのものを自動停止させることもあります。

ドライバーをカメラで撮影し、顔の向きや目の開き具合を計測することで、運転への集中度や居眠りの有無を検知します。車両外部の状況を検知するほかのADASの機能とは異なり、DMSはドライバーの状態に焦点を当てている点が特徴的です。

AFS(Adaptive Front lighting System:自動ヘッドランプ光軸調整)

AFSは、ステアリングの向きや車両の傾きに合わせて、ヘッドランプの方向を自動調整する機能です。たとえ夜間にハイビームを解除し忘れていたとしても、対向車や歩行者を検知すると自動でロービームへの切り替えが行われます。

ヘッドランプの調整が不適切だと、ほかのドライバーの迷惑になるどころか、重大な事故を引き起こしかねません。人為的ミスを未然に防ぐ意味でも、AFSは大いに役立ちます。

APA(Advanced Parking Assist:高度駐車アシスト)

APAは、あらゆる側面から駐車をサポートする機能です。例えばバックでの走行時に車両の進路予測ラインをモニターに表示したり、ステアリングの切り返しのタイミングを音声で案内したりと、よりスムーズに駐車するための補助をしてくれます。

また、アクセルとブレーキの踏み間違いによる誤発進の抑制機能や、ボタンを押すだけで駐車操作全般を自動で行う機能なども開発されています。

ADASと自動運転の違い

ADASイメージ

ADASとAD(自動運転)の違いは、記事の冒頭でお伝えした「運転の主体」をベースとして、大きく2点あります。

まず、最大の違いは「運転に対する責任の所在」です。事故の発生時、ADASの場合はドライバーに責任があるとされます。一方、システムが運転の主体となるAD(自動運転)の場合、誰がどのように責任をとるのかが明確ではありません。刑事・民事・行政のいずれの観点でも、制度は人のみによる運転を前提とし、自動運転に対応しきれていないのが現状です。

もう一つの違いは、ADASの場合は「人とシステムの間で迅速かつ円滑な情報伝達が求められる」点にあります。システムから人へ伝達される情報は、シンプルな情報供給から注意喚起、そして一刻を争う警告にまで及びます。伝達対象となる視覚や聴覚といった人の五感を状況に応じて切り替えるなどして、適切に意図が伝わるような機能にデザインされている必要があります。

まとめ

ここまで、ADASの定義や特徴、代表的な機能の概要を、AD(自動運転)との違いを交えながらご紹介しました。ADASはドライバーの運転時の負担軽減や事故防止といった観点で優れた役割を果たしており、完全自動運転の実現を見据え、今後もさらなる発展が期待されます。

Sky株式会社では、ご紹介したADASを含め、車載ソフトウェアなど幅広い分野の開発に携わっており、豊富な経験で培った技術やノウハウを生かし、高品質で高効率なソフトウェア開発が可能です。AI・画像認識を活用したシステム開発に関してお悩みの際には、ぜひSky株式会社にご相談ください。

著者 Sky株式会社

Sky株式会社は、家電のシステム開発を手掛けたのをきっかけに、デジタル複合機やカーエレクトロニクス、モバイル、情報家電、さらに自社商品として教育分野における学習活動ソフトウェアや、公共・民間向けクライアント運用管理ソフトウェアなど、幅広い分野でのシステム開発を展開しております。

お問い合わせ

ソフトウェア開発・評価/検証(ソフトウェアテスト)に関するご依頼・ご質問は、下記フォームよりお問い合わせください。弊社製品・サービスに関するお問い合わせは、各商品Webサイトより受けつけております。

パートナー企業募集

Sky株式会社では長期的なお付き合いができ、共に発展・成長に向けて努力し合えるパートナー企業様を募集しております。パートナー企業募集に関するご依頼・ご質問は、下記フォームよりお問い合わせください。

ページのトップへ