
ルーティングとは? 仕組みや種類をわかりやすく紹介

現代では、インターネットに接続してWebサイトへアクセスすることや、地理的に離れた複数の拠点間で通信を行い、さまざまな機器と接続するといったことが手軽にできるようになりました。これらを可能としている仕組みの一つに、ルーティングがあります。ルーティングは、異なるネットワークへパケットを送信するときに最適な経路を選択するプロセスのことであり、主にルーターなどの中継機器を使用して行われます。ルーティングに関する知識があれば、ネットワーク通信の効率を高め、さまざまなネットワーク障害の防止にも役立てることができます。この記事ではルーティングの仕組みや種類について詳しくご紹介します。
ルーティングとは何か
ルーティングとは、複数の異なるネットワーク間でパケットを送受信するときに、宛先への最適な経路を選択するプロセスのことです。ネットワーク通信に関わる重要な機能の一つといえます。ルーティングは、ルーターをはじめとした各種中継機器を用いることで、社内ネットワークからインターネットといった異なるネットワークに接続します。以下の図は、シンプルなネットワーク構成の場合にパケットを転送する際のイメージです。
ルーティングが重要な理由
ルーティングでは、数種類の「ルーティングプロトコル」と呼ばれる通信ルールにより最適な経路が決定されます。トラフィックやネットワーク構成に応じて各プロトコルを設定し、最適な経路が選択されるようにすることで通信の効率を高めます。
これにより、例えばWebサイトが表示されるまでのロードに時間がかかる問題や、アクセスが集中してサーバーがクラッシュするといった、ネットワーク障害の発生を最小限に抑えられます。このことから、ルーティングはネットワーク通信において重要な機能の一つだといえます。
ルーティングの仕組みとは
ルーティングにはプロトコルに加え、いくつか考慮することがあります。パケットを転送するときに参照元となる経路情報や、複数経路がある場合にどの経路が優先されるかといったことです。これらについて、詳しくご紹介します。
ルーティングテーブルとは何か
ルーティングテーブルとは、パケットの宛先や次の転送先など、パケットを転送する際に必要な経路情報の一覧です。ルーティングテーブルは、ルーターごとに表示が違いますが、主に以下の情報があります。
宛先ネットワーク
パケットの送信先であるネットワークの情報です。宛先ネットワークは192.168.XX0.0/24といった「IPアドレス」で表示されます。IPアドレスとは、宛先を示す情報のことです。
ゲートウェイ
受信したパケットを宛先ネットワークに転送するための経路です。宛先ネットワークのIPアドレスがネットワークの情報であるのに対して、ゲートウェイは転送先であるルーターのインタフェースのIPアドレスです。
インタフェース
ルーターなどの機器との接点のことを指します。また、装置やシステムから情報を出力するためのインタフェースを「出力インタフェース」といいます。有線接続で通信を行う際は、「ファストイーサネット」など「イーサネット」という通信規格に基づき速度を決定します。ルーティングテーブルに、インタフェースは一般的に「I/F」と記載され、ファストイーサネットの場合、インタフェースのポート番号と併せて「fa0/0」のように表示されます。
種別
手動と自動のどちらによって経路が設定されたかに関する情報です。ルーティングテーブルの種別が「static」である場合、一般的には手動で設定された経路だということです。
まず、ルーターはパケットを受信すると、宛先ネットワークがルーティングテーブルにあるかどうかを確認。設定されている場合、出力インタフェースからゲートウェイへパケットを転送します。
ルーターはこれらに加え、優先される経路といった情報に基づきパケットを転送します。以下の図は、ルーティングによるパケット転送の流れの一例です。
ルーティングの大切なルール
パケットはルーティングテーブルに基づいて転送されますが、その際に2つのルールが適用されます。1つ目が「ロンゲストマッチの法則」です。
この法則では、「サブネットマスク」が重要な要素になります。サブネットマスクは、例えば宛先ネットワークのIPアドレスが「192.168.XX0.0/24」であった場合、「24」の部分を指します。
パケットの宛先ネットワークがルーティングテーブルに複数ある場合、宛先ネットワークアドレスのサブネットマスクが大きいほうの経路が優先されるというのが、「ロンゲストマッチの法則」です。
例えば、ルーティングテーブルの宛先ネットワークに「172.16.X.0/16」と「172.16.X.0/24」を設定した状態で、「172.16.X.2」宛てのパケットを受信すると、ロンゲストマッチの法則に従い、サブネットマスクが「16」より大きい「172.16.X.0/24」のネットワークに転送します。この法則はルーティングにおいて最優先されるため、意図したルーティングを行うにはロンゲストマッチの法則を考慮した設定が重要です。
2つ目が、「パケットの宛先がルーティングテーブルにない場合は破棄される」というルールです。宛先不明のパケットと判断された場合、パケットは転送されず、破棄されます。
このように、ルーティングが正しく設定されていないと、通信が正常に行われないことがあります。また、最適な経路選択は通信の品質にも関わることから、これらのルールを理解することが大切です。
デフォルトルート、デフォルトゲートウェイとは何か
ルーターは該当する宛先がない場合、パケットを破棄してしまうため、インターネット上に存在しているアクセス先を登録しなければ通信ができません。しかし、それらを一つひとつ設定するのには手間がかかります。
そこで、パケットの宛先ネットワークが不明の場合に使用する経路である「デフォルトルート」をルーティングテーブルに設定します。デフォルトルートの宛先ネットワークの表示はルーターによって異なりますが、「default」といったものが一般的です。また、IPアドレスは0.0.0.0/0と表示され、サブネットマスクが0となっていることから、ルーティングでは優先度が一番低くなります。デフォルトルートの設定によって、宛先が不明のパケットが破棄されることはなくなります。
さらに、インターネットに接続する場合は、ISP(インターネットサービスプロバイダー)のルーターが必要です。このような外部のネットワークへ接続するための機器の役割を「デフォルトゲートウェイ」といいます。この場合、インターネット上の情報を知っているISPのルーターをデフォルトゲートウェイとして設定することで、宛先にパケットを転送できます。
ルーティングの種類と特徴
ルーティングテーブルにある経路情報は手動で作成するか、もしくは自動で作成されます。ここでは、それぞれの場合におけるメリットやデメリットなどについてご紹介します。
1.静的ルーティング
静的ルーティングとは、ルーティングテーブル上にあらかじめ手動で設定された経路を使用したルーティングのことです。静的ルーティングを行うには、手動で経路を作成する必要があり、この経路はコマンドを用いて作成します。手動で作成された経路は、ロンゲストマッチの法則に基づいた経路や直接ケーブルに接続された経路より優先順位は低いですが、自動で作成された経路よりも優先されます。そのほかにも、以下のようなメリットがあります。
- 比較的簡単なコマンドで設定できることから、少ない知識でも作成可能
- ルーティングプロトコルに関する知識が不要
- すでに手動で経路が設定されていることから後述する動的ルーティングに比べて通信帯域やルーターの負荷が抑えられる
また、デメリットとして以下のようなものが挙げられます。
- ネットワーク構成が変更した場合、宛先までに経由する各ルーターのルーティングテーブルの設定が必要
- 一般的にネットワーク障害が発生した場合、代替経路を利用して通信の継続ができない
2.動的ルーティング
動的ルーティングとは、ルーター同士がそれぞれの経路情報を渡し合うことで更新されるルーティングテーブルを使って行われるルーティングです。静的ルーティングは、ネットワーク構成が変更された場合にルーティングテーブルを手動で更新します。一方で、動的ルーティングは自動でルーティングテーブルの更新が行われます。また、その際ルーター同士はルーティングプロトコルによって自動で情報を交換します。これらの特徴に加えて、以下のようなメリットがあります。
- ネットワーク構成に変更があると経路の設定が自動で行われるため手動の設定に比べて柔軟に対応できる
- 静的ルーティングに比べて運用・管理の手間が軽減できる
- ネットワーク障害が発生した際に経路情報が自動で更新されることから、障害が発生していない経路が選択され、通信の継続が可能
デメリットとして以下のようなものが挙げられます。
- 「RIP(Routing Information Protocol)」などのルーティングプロトコルに関する深い知識が必要
- ルーティングプロトコルによってトラフィックの増加やルーターの処理に負荷がかかる
3.LAN・WANのルーティング
ルーターがネットワーク上のデータをどのように転送するかを決定する重要な要素として、LAN(Local Area Network)とWAN(Wide Area Network)があります。LANとは、限定されたエリアで構成されるネットワークのことです。一方でWANは、広範囲なエリアのネットワークのことを指します。LANが拠点内を結ぶのに対して、WANは拠点間を結ぶネットワークといったイメージです。WANによって拠点同士がつながることで、ある拠点でしかできない業務が、別の拠点でもできるようになるといったメリットがあります。
また、WANはLANと異なるルーティングプロトコルを使うといった特徴があります。WANは1社のISPが管理するネットワークである「AS」間と通信するとき「BGP(Border Gateway Protocol)」というプロトコルを使用します。
まとめ
ここまで、ネットワーク通信において重要度が高いルーティングについて、その仕組みや種類をご紹介しました。現代では簡単にインターネットへアクセスできますが、が、その中では、ルーティングテーブルやデフォルトルートといった複雑な仕組みによって通信が行われています。
これらの仕組みを理解して適切な設定を行うことは、ネットワーク通信の効率を高め、ネットワーク障害を防止する上でも重要といえます。