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シンクライアントとは? 仕組みや重要性、メリット・デメリットを紹介

著者:Sky株式会社

シンクライアントとは? 仕組みや重要性、メリット・デメリットを紹介

近年、情報漏洩防止やサイバー攻撃対策、企業の内部統制などに役立つ仕組みとして「シンクライアント」が注目を集めています。さまざまなセキュリティ対策が存在するなか、なぜ今「シンクライアント」が重要視されているのか、詳細な定義はどんなものなのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。今回はそんなシンクライアントについて、仕組みや成り立ち、注目されている背景、メリット・デメリット、利用できる端末の種類とそれぞれの特徴などを解説します。

シンクライアントとは何か

シンクライアントとは、手元の端末には直接データを保管せず、サーバー側でデータを保管して多くの処理を実行するシステム構成のことです。「薄い・少ない」という意味の「Thin」と、操作端末を指す「Client」をかけ合わせた言葉で、最小限の機能しか備えていない端末でもさまざまな処理を実行できるのが特長です。

シンクライアントの仕組みとは

シンクライアントには、後述する2種類の実行方式(ネットブート型 / 画面転送型)がありますが、どちらの場合もデータの保存はほとんどサーバー側で行われます。そのため一般的なPCの環境のように、端末側で大容量のストレージを備えておく必要はありません。

それぞれの実行方式で詳細な仕組みは異なりますが、端末に入力した操作内容に基づいてサーバー上で処理が実行され、その結果がクライアント端末に転送される、という基本的な仕組みは変わりません。

一見すると通常どおりに端末でアプリケーションを利用しているように見えますが、実際には端末のモニターを見ながら、サーバーでの処理を遠隔で指示しているような状態です。また、いずれの方式でも端末がサーバーにアクセスできることが前提となるシステムであるため、通信接続を行う機能が必要です。

シンクライアントの変遷

シンクライアント自体は特別新しいものではなく、1960年代から1980年代にはその、原型となる仕組みがあったといわれています。

特にこの時代は「メインフレーム全盛期」で、企業の基幹システムとして高性能な大型汎用機(メインフレーム)を設置し、そこに各端末からアクセスして業務を進める仕組みが浸透していました。この中央集中型の仕組みは、シンクライアントの考え方の原型と捉えることができます。

1990年代には、Windowsを複数人のユーザーで利用できるソフトウェアが誕生します。さらに1990年代後半になると、クライアントとサーバーをネットワークで接続して処理を分散させる「クライアント・サーバー型」のシステムが一般的になりました。こうした背景からシンクライアントの仕組みが注目され始め、1996年には「シンクライアント」という用語が使われるようになります。

そして2000年代の終盤になると、セキュリティ面での課題が浮き彫りになると同時に、サーバー仮想化技術と物理的なハードウェアの発展が進みます。それに伴い、シンクライアントは「企業の抱えるさまざまな課題を解決できるシステム」として活用されるようになりました。

シンクライアントが注目されている理由

1990年代にはすでに存在していた「シンクライアント」ですが、前述のとおり、近年はさまざまな課題を解決できるシステムとして再注目されています。その理由として、2000年代以降に以下のような変化が起きたことが挙げられます。

  • 情報漏洩やサイバー攻撃など、セキュリティリスクが多様化した
  • 情報資産の価値が高まり、守るための対策が必要になった
  • 資産の保全やコンプライアンス遵守、業務効率化のために、企業の内部統制が推進され始めた
  • ライフスタイルの多様化や、リモートワークへの対応が求められるようになった
  • 仮想化技術やリモート接続に関する技術が発展し、快適に利用できるようになった

特に、個々人の端末にデータを保存することなく、機器やデータを企業側で一括管理できるシンクライアントの仕組みは、セキュリティ面で優れた対策であるとされています。また、重要なデータの管理を個人端末で行わないようにすることは、災害発生時の事業継続性を高める上でも有効です。

シンクライアントのメリットとデメリット

ここまでご紹介したように、昨今のさまざまな課題の解決に役立つシンクライアントですが、ほかにもメリットや、活用にあたっての注意点などが存在します。ここでは、主なメリット・デメリットについてご紹介します。

メリット

シンクライアントの活用は、セキュリティリスクの少なさや一元管理のしやすさに加え、以下のような効果も期待できます。

  • 端末ごとにOSやアプリケーションのアップデートを行う必要がなく、メンテナンスの負担が減る
  • 端末1台あたりのコストや、業務に必要なアプリケーションのライセンス費用を抑えられる
  • 機能が最低限であることで故障しやすい部品が不要になり、クライアント端末が長持ちする
  • 万が一端末が故障して新しいものに交換した場合でも、データ復旧などの手間をかけずに業務を再開できる

デメリット

シンクライアントは多くのメリットを持つ反面、以下のようなデメリットもあります。

  • 初期費用が高額になるケースがある
  • あらゆる情報を集約するため、サーバーに負担がかかる
  • 安定したネットワーク環境が必要不可欠
  • サーバー側で不具合が起きると、業務全体に影響する

特に仮想化技術を活用してシンクライアントを実現する場合には、OSやアプリケーション、関連ソフトウェアなどの導入により、かえってコストがかさむ恐れがあります。またサーバーに負荷がかかると、動作が重くなり業務効率が悪くなる可能性もあるため、注意が必要です。

シンクライアントの実行方式は2種類

シンクライアントにおいて実行内容をクライアント端末へ転送する方法には、「ネットブート型」と「画面転送型」の2種類があります。

ネットブート型

起動時にサーバーから端末へイメージファイルをダウンロードすることで、OSやアプリケーションを端末から起動できる状態にする方式です。操作性に優れる反面、端末起動時に膨大なデータをダウンロードするため負担がかかります。アプリケーションで作成したデータなどは、サーバー側に保存されます。

画面転送型

アプリケーションの実行などを完全にサーバー上で行い、結果画面のみをクライアント端末に表示させる方式です。画像の転送方法によってさらに3つの種類(ブレードPC型、サーバーベース型、デスクトップ仮想化)に分けられ、現在はデスクトップ仮想化が主流となっています。

シンクライアント端末の種類と特徴

シンクライアントの端末として利用できるものは、デスクトップ型、モバイル型、USBデバイス型、ソフトウェアインストール型の4種類に分類されます。

デスクトップ型

専用のOSや、組込み機器向けのWindows 10 / 11 IoTが搭載されている、必要最低限の機能で構成されたデスクトップPCを使うパターンです。端末が大きく持ち運びには不向きですが、基本性能が高くてCPUの質も良く、さまざまな機器と接続できます。一般的なPCと同レベルの環境を構築できるとされており、デスクトップ仮想化との組み合わせにもよく利用される端末です。

モバイル型

ノートPCタイプのシンクライアント端末です。薄型で持ち運びやすく、在宅勤務にも広く利用されます。機種によっては、通信障害が発生した際に4G LTEネットワークに切り替えることも可能で、利便性に優れています。

USBデバイス型

USBデバイス型では、既存のPCにUSBを差し込むだけで、シンクライアント端末として利用できます。既存の端末を流用できる上に、クライアント側で必要なOSやアプリケーション、データなどは、USBデバイス内に集約されます。そのため、初期費用や専門的な知識があまり必要ないのが利点です。

非常に手軽に持ち運べる反面、紛失や盗難、情報漏洩や不正ログインなどのセキュリティリスクが高いため、暗号化ツールへの対応や、端末からは閲覧できない「秘匿領域」の有無などに着目し、製品を選ぶことが推奨されます。

ソフトウェアインストール型

ソフトウェアインストール型は、既存のPCにソフトウェアをインストールすることで、シンクライアント化を実現します。USBデバイス型と同様に、新しいPCを用意する必要がないため、導入時の手間やコストを削減できます。

大本のサーバーから端末の更新や設定を行えるため、セキュリティ対策などももれなく実施でき、安全なシンクライアント環境の構築を目指すことができます。

まと

シンクライアントは、現代に求められるセキュリティ対策として、有効活用できる可能性を秘めたシステムです。実行方式や利用できる端末の種類も豊富で、企業・組織ごとの実態に合わせて柔軟に取り入れることができます。利用することでかえって費用がかかったり、業務効率が悪くなったりしてしまわないように、導入時に適切な利用形態を選択することが重要になります。皆さまがシンクライアントの導入を検討される際に、今回ご紹介した内容がお役に立てば幸いです。

Sky IT TOPICS編集部

Sky IT TOPICS編集部は情報セキュリティやIT運用、テクノロジーに関する最新の動向、弊社商品の情報を発信しています。
Sky株式会社は、家電のシステム開発を手掛けたのをきっかけに、デジタル複合機やカーエレクトロニクス、モバイル、情報家電、さらに自社商品として教育分野における学習活動ソフトウェアや、公共・民間向けクライアント運用管理ソフトウェアなど、幅広い分野でのシステム開発を展開しております。