
OpenAI(オープンAI)とは何? 提供するAIサービスや、日本との関係性を徹底解説

近年のAI技術の発達は著しく、日常生活からビジネスに至るまで、あらゆる場面でAIが活用されるようになりました。そのようなAI技術の発展をリードしているのが、アメリカのサンフランシスコに拠点を置く、AI研究機関であるOpenAIです。一般層にAI技術が普及する大きなきっかけになった「ChatGPT」もOpenAIによって開発されました。今回はOpenAIの概要や提供しているサービス、その使い方などを詳しくご紹介します。
OpenAI(オープンAI)とは何か
OpenAI(オープンAI)とは、アメリカのサンフランシスコに拠点を構え、AI(人工知能)の研究と開発を行う研究機関です。「AGI(汎用人工知能)が全人類に利益をもたらすようにすること」という使命のもと、自然言語処理・機械学習・画像認識・音声処理など、広範な分野で研究を行っています。
また、OpenAIは多種多様な生成AI(ジェネレーティブAI)を開発しています。テキスト生成系のAIとして、今やさまざまな場面で活用されている「ChatGPT」もOpenAIが開発したものです。OpenAIが開発したそのほかの生成AIとしては、自然言語をベースにデジタル画像を生成する「DALL・E」や、人間の音声を認識して文字起こしをする「Whisper」などが挙げられます。
加えてOpenAIは、AIモデルやAIツールの開発のみならず、「Universe」や「OpenAI Gym」といったAI開発に欠かせないプラットフォームも提供しており、AI業界全体の発展に貢献しています。
OpenAI(オープンAI)の歴史
OpenAI(オープンAI)は、現在の最高経営責任者であるサム・アルトマン氏を中心として、2015年に設立されました。共同創業者や出資者には、テスラ社やX(旧Twitter)などを経営するイーロン・マスク氏、LinkedIn共同創業者のリード・ギャレット・ホフマン氏など、著名な人物が名を連ねています。
設立当初は非営利研究機関としてAIの研究・開発を行っていましたが、AI研究に必要な設備や人材への投資力を高めるという目的のもと、2019年に営利法人の子会社を設立しています。そうしてAI研究を前進させた結果、「ChatGPT」のリリースに成功し、OpenAIは一躍世界的に注目を浴びる企業になりました。
OpenAIの主な歴史は以下の通りです。
2015年 12月 | サム・アルトマン氏やイーロン・マスク氏などにより、非営利研究機関として設立 |
2016年 4月 | 強化学習用シミュレーションライブラリである「OpenAI Gym」のベータ版を公開 |
2016年 11月 | アメリカのMicrosoft社との提携を発表 |
2018年 2月 | 創業者の1人であるイーロン・マスク氏が退任 |
2019年 3月 | 子会社として営利法人「OpenAI Global, LLC」を設立 |
2022年 11月 | 対話型のテキスト生成AIである「ChatGPT」を公開、2か月で利用者数1億人を突破 |
2023年 1月 | Microsoft社が今後数年で100億ドルの巨額投資を行うことを発表 |
2023年 11月 | 創業者の1人で最高経営責任者のサム・アルトマン氏が解任されるも、4日後に復帰 |
2024年 4月 | アジア初の拠点として、東京に日本法人を設立 |
2024年 6月 | アメリカのApple社がOpenAIと提携し、一部iPhoneにChatGPTを搭載した生成AIシステムを導入すると発表 |
※2025年3月現在
OpenAI(オープンAI)が注目されている背景
近年のAI技術の発達は著しく、日常生活からビジネスに至るまで、あらゆる場面においてAIを取り入れようとする動きが活発になっています。そのような動きに伴ってAI事業に力を入れる企業も世界的に増えていますが、そのなかでOpenAI(オープンAI)が注目されている背景としては以下のような理由が挙げられます。
・一般層が利用できるAIモデル(ChatGPT)を開発したこと ・高い柔軟性を持ったAPIを無料で公開していること
ChatGPTの登場は、AI技術が一般層にも普及した大きなきっかけといえます。今でこそ簡単に利用できるAIツールは数多くありますが、ChatGPTはその先駆けとなった存在です。専門的な知識やコーディングを必要とせず、チャットのみでAIを活用できるモデル(ChatGPT)を開発したことで、OpenAIの名前は一気に世界的に広がりました。
また、APIを無料で公開していることも、OpenAIが注目されている理由の一つです。ChatGPTをはじめとする、OpenAIが開発するモデルは高い柔軟性を持っており、さまざまな場面で汎用的な活用が可能です。OpenAIはそうしたモデルのAPIを無料で公開し、個人や一般企業でも高度なAI技術を活用できるようにしていることで、信頼や注目を集めています。
OpenAI(オープンAI)が提供するAIサービスとは
OpenAI(オープンAI)は、分野に応じてさまざまなAIサービスを提供しています。ここでは、OpenAIが提供している代表的なAIサービスを4つご紹介します。
①ChatGPT
ChatGPTは、対話型のテキスト生成系AIとして2022年11月に公開されました。ユーザーが入力した質問に対し、まるで人間が答えているかのような自然な対話形式で回答を生成することが特徴のサービスです。OpenAIといえばChatGPTを連想する人も多く、OpenAIの代表的なAIサービスといえます。
ChatGPTの利用者数は、公開から5日で100万人を突破し、一般公開から2か月後には1億人を突破しています。2025年2月時点では、週間のアクティブユーザー数が4億人を超えるなど、その数は増加の一途をたどっています。
ChatGPTは、その名のとおり「GPT」という言語モデルをベースとしています。GPTとは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、事前に学習されたデータを基に、人間のように自然な文章を生成するAIです。OpenAIは2018年に最初のモデルとなる「GPT-1」を公開して以降、「GPT-2」「GPT-3」とバージョンアップを重ね、「GPT-3.5」を公開する際に、そのモデルをベースとしたチャットボットであるChatGPTをリリースしました。その後も継続してアップデートが実施され、2023年3月に「GPT-4」、2024年5月に「GPT-4o」、そして2025年2月に最新モデルである「GPT-4.5」のリリースを発表しています。
ChatGPTの具体的な活用方法は、文章の要約、テキスト翻訳、テキストやコードの添削、メール文の作成、プログラミング支援など、多岐にわたります。また、2023年3月に「ChatGPT API」がリリースされたことで、ほかのソフトウェアやプログラムとの連携も容易になり、その活用の幅はますます拡大しています。
②DALL・E
DALL・Eは、2021年1月にリリースされた画像生成系AIです。出力したい画像のイメージをテキストで入力することで、リアルで高品質な画像を生成できます。DALL・Eの活用方法としては、新規ビジネスのアイデア獲得、製品デザインや広告に使用する素材の画像生成などが挙げられます。
GPT同様アップデートが重ねられ、2025年3月時点での最新モデルは2023年9月にリリースされた「DALL・E 3」です。DALL・E 3は、「Bing Image Creator」「Microsoft Copilot(旧Bing Chat)」「ChatGPT」で利用できます。ただし、ChatGPTの無料プランでは1日に2回までしかDALL・E 3を使えないため、頻繁に利用したい場合は「ChatGPT Plus」以上の有料プランへの登録が必要になります。
③Whisper
Whisperは、文字起こしサービスとして公開された音声認識モデルです。音声認識モデルとは、AIが音声を認識し、その認識した音声を基に何かしらのデータをアウトプットする技術を指します。
Whisperは、Webから収集した68万時間にもおよぶ多様な音声データを学習しており、アクセントや専門用語に対応できるほか、背景ノイズが多い環境でも高い精度で文字起こしをすることが可能です。また、学習データには98種類の言語が含まれているため、文字起こしをしたデータをほかの言語へ翻訳することもできます。具体的な活用場面としては、会議や講演会における議事録の自動作成や、動画をはじめとするメディアコンテンツの字幕生成などが考えられます。
Whisperは、公開されているAPIをアプリケーションなどに組み込むことで利用します。API経由でWhisperを利用する場合は、1分あたり0.006ドル、日本円に換算すると1時間で約50~60円の料金が発生します。また、Google ColaboratoryやGitHubのオープンソースを活用すれば、無料で利用することも可能です。
④OpenAI Codex
OpenAI Codexは、自然言語で指示を記述することで、プログラムコードの自動生成を行うAIモデルです。Pythonをはじめ、JavaScript、Go、Perl、PHP、Ruby、Swift、 TypeScript、SQL、Shellといった、多様なプログラミング言語に対応しています。
OpenAI Codexでは簡単にコードを生成できるため、プログラミングの作業効率が大きく向上します。また、開発補助として活用する以外にも、繰り返し行う作業を自動化するコードを生成するなど、よりコア業務に集中できるような環境整備に役立てることもできます。
しかしながら、OpenAI CodexはGPT-3をベースとしたモデルであるため、2023年3月に非推奨(サポート終了)となりました。OpenAI Codex の独立したサポートはなくなったものの、2025年3月現在ではChatGPTにOpenAI Codexと同様の機能が組み込まれており、最新モデルのChatGPTを活用することで同じようにプログラミングコードを生成することが可能です。
OpenAI(オープンAI)が提供するAIサービスの使い方
それでは、実際にOpenAI(オープンAI)が提供しているAIサービスを利用するにはどうすればよいのでしょうか。まだ利用したことがない方に向けて、「ChatGPT」「DALL・E」「Whisper」それぞれの使い方を簡単にご紹介します。
ChatGPTの場合
ChatGPTはブラウザ版とアプリ版がリリースされていますが、ここではブラウザ版の使い方をご紹介します。
1:OpenAIのChatGPT紹介ページにアクセスする
2:画面中央部の「今すぐ始める」をクリックする
3:好きなテキストを入力してChatGPTの利用を開始する
ChatGPTは2024年4月1日から、アカウント登録をしなくても利用できるようになりました。そのため、上記の画面に遷移した段階ですぐに利用可能です。ただし、アカウント登録をしない場合、「チャット履歴の保存・確認」「有料プランへの加入」「APIの利用」などができません。このような機能やサービスを使用したい場合は、以下の手順でアカウント登録をする必要があります。
4:右上の「新規登録」をクリックする
5:必要情報を入力してアカウントを登録する
アカウント登録には、「メールアドレス」「Googleアカウント」「Microsoftアカウント」「Appleアカウント」「電話番号」が使用できます。
DALL・Eの場合
DALL・Eは、「Bing Image Creator」「Microsoft Copilot(旧Bing Chat)」「ChatGPT」で利用できます。ChatGPTで利用する場合は、上記の「ChatGPTの場合」と同様です。以下では、Bing Image CreatorとMicrosoft Copilotでの使い方をご紹介します。
【Bing Image Creator】
1:Bing Image Creatorのページにアクセスする
2:「参加して作成」をクリックする
3:Microsoftアカウントでログイン、またはアカウントを新規作成する
4:画像のイメージをテキストで入力して画像を作成
【Microsoft Copilot】
1:Microsoft Copilotのページにアクセスする
2:右上の「サインイン」をクリックし、Microsoftアカウントでログイン、またはアカウントを新規作成する
3:チャットに画像のイメージをテキストで入力して画像を作成
Whisperの場合
Whisperは、一般的にAPI経由やGoogle Colaboratory、GitHubのオープンソースを活用することで利用可能です。しかし、ブラウザから直接Pythonを記述するなどの対応が必要で、気軽に利用するにはややハードルが高いといえます。そのため、ここでは試しに使ってみたいという人に向けて、「Hugging Face」を活用した方法をご紹介します。
Hugging Faceは「AI分野のGitHub」とも呼ばれており、90万近いAIモデルがアップロードされているAI開発プラットフォームです。
1:Hugging FaceのWhisper紹介ページにアクセスする
2:「inputs」の「Record from microphone」をクリックする
3:マイクの利用を許可して、任意の音声を話す
4:使用用途に応じて「Transcribe」か「Translate」のいずれかにチェックを入れ、送信ボタンをクリックする
5:「output」に文字起こしされた内容が表示される
OpenAI(オープンAI)によるAGI開発のメリットとリスク
OpenAI(オープンAI)は、「AGI(汎用人工知能)が全人類に利益をもたらすようにすること」を使命として掲げています。AGIとは人間のように幅広いタスクを学習し、理解し、実行できるレベルの人工知能のことです。OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏は、2023年2月24日に発表した「Planning for AGI and beyond」というロードマップの中で、AGIを「人間よりも賢いAI」と定義しています。
このようなAGIの開発は、社会やビジネスに革命を起こし、私たちの生活に大きなメリットをもたらします。例えば、AGIが人間の労働を代替して新たなビジネスが創出されることや、AGIによって複雑なデータ解析を自動化して新しい発見が促進されることなどが挙げられます。
しかしその反面、誤用や重大な事故、社会的な混乱など、さまざまなリスクが伴うことも事実です。上記のロードマップの中でもそのようなリスクに関して言及されており、OpenAIは「システムの開発に合わせた段階的な導入」と「全世界的に監視する体制の確立」を解決策として提示しています。
参考:OpenAI「Planning for AGI and beyond」
OpenAI(オープンAI)の今後と日本との関係性
AI技術は今後ますます進化し、企業間によるAI技術の競争もより熾烈なものになっていくことでしょう。実際にOpenAIの競合企業であるGoogle DeepMindやAnthropicは「Gemini 2」「Claude 3」といった新たなAIモデルの開発を進めています。
そのようななか、OpenAIは近い将来に「GPT-5」をリリースすることを発表しており、単なる技術競争を超えて、より直感的で使いやすいAIサービスの提供を目指しています。OpenAIはAI業界をリードする企業として、継続して重要な役割を担っていくことが期待されています。
またOpenAIは、サンフランシスコ・ロンドン・ダブリンに次ぐ世界4つ目の拠点として東京を選ぶなど、日本をAI技術開発のチャンスが大きい重要な市場と捉えています。すでに日本特有のニーズに合わせた安全なAI開発を目指し、日本語に特化したモデルの開発などが行われている状況です。このようなOpenAIの動きも踏まえ、今後日本においてもAIがさらに身近なものになっていくことが予想されます。
まとめ
今回はOpenAI(オープンAI)についてご紹介しました。OpenAIはサンフランシスコに拠点を置くAI研究機関であり、ChatGPTをはじめとする数多くのAIモデルやAIツールをリリースしています。
AI技術が今後も継続して発達していくことは、もはや自明の理といえます。一方でAIによるリスクも無視できないのが現状です。人間とAIが正しく共存していくため、OpenAIはAI業界の中で今後も重要な役割を果たしていくと期待されています。