外観検査自動化とは何か、導入の方法・事例・メリットについて
製品の検品について、「目視検査では品質にばらつきが生じてしまう」「人手不足により検査の精度が下がっている」といった問題に直面するケースも増えているのではないでしょうか。こうした問題を解決する手段として注目されているのが、外観検査の自動化です。 外観検査自動化を成功させるためには、事前にメリットやデメリット、導入までの流れなどを把握しておくことが大切です。この記事では、外観検査自動化の基本的な知識から導入時の手順やポイント、具体的な事例までを解説します。
外観検査自動化とは何か
外観検査とは、主に製造業などで行われる、製品や部品の品質を保証するために外観をチェックする工程です。 汚れやキズ、変形といった問題を見つけ出し、欠陥品を排除するために行われます。
従来の外観検査は目視で行われていましたが、人の目で行う検査にはヒューマンエラーやコストの負担など、いくつかのデメリットがありました。そこで、機械を使ってチェックを行うことでデメリットを回避する「外観検査自動化」が検討されるようになりました。
初期のシステムでは、柔軟な判定が行えないといった問題がありましたが、現在はAIの技術が向上したことによって画像分析の精度が高まり、あらゆる産業において外観検査の自動化が進められるようになりました。
外観検査自動化の導入のメリット
外観検査自動化を導入することは、従来の目視検査で課題となっていたさまざまなデメリットの解決につながります。ここでは、自動化する主なメリットを4つ紹介します。
時間の短縮
機械による検査を行うことで、目視検査と比べて大幅に検査時間を短縮できます。また機械は、人のようにコンディションによって作業スピードが変化することもないため、一定の速度で検査を続けることが可能です。
コストの削減
外観検査自動化には膨大な費用がかかるという印象がありますが、長い目で見れば、自動化した方がコストを削減できるケースが多いといえます。検査員の人件費のほか、新たな検査員の採用・育成にかかるコストが不要になり、生産効率も向上するため、総合的なコストカットが見込めます。
ヒューマンエラーの回避
目視検査ではヒューマンエラーが発生するリスクがありますが、機械による検査ではこれを回避できます。人それぞれの感覚の違いやその日のコンディションによって、品質の判断にばらつきが生じることもなく、検査の精度を均一に維持できます。
人手不足の解消
製造現場では、少子高齢化に伴う人手不足や技術継承の難しさが問題となっています。外観検査を自動化すれば、検査員を確保する必要がなくなり、人手不足の解消に寄与します。作業員は別の業務に集中できるため、作業員の負担増加や製品の品質低下を招く恐れも減少します。
外観検査自動化のデメリットについて
多くのメリットを持つ外観検査自動化ですが、導入する際はデメリットについても考慮しなければなりません。外観検査自動化における主な課題としては、専門知識や初期投資が必要な点や、機械による検査でも不良品を見逃す可能性がある点などが挙げられます。
AIを取り入れた外観検査では、まずは大量のサンプルデータを用意して、不良判定を行うための学習をさせる必要があります。このデータの品質に不備があったり、量が足りていなかったりすると、不良判定の精度は下がってしまいます。
サンプルデータの用意自体にコストや手間がかかることにも注意が必要です。また、製造プロセスに変更があったときや、新しい製品に対応させたい場合には、再び学習をさせなければならないケースもあります。
こうした課題があることを踏まえて、AIによる深層学習とは異なるシステムを採用し、外観検査自動化システムを構築している企業もあります。デメリットを避けるためにどのようなアプローチが可能なのか、自社の検査内容に応じた対策を検討することが重要です。
外観検査自動化を導入する際の流れ
外観検査自動化は、業務内容に応じたシステムを考案し、AIにサンプルデータを学習させる手間が必要になるため、導入を決めてからすぐに行えるわけではありません。一般的には、以下のような手順を踏んで導入を進めます。
要件定義を行う
一般的にシステム開発を行う際は、まず「要件定義」をまとめて、開発の目的や求められる要件を明確にします。外観検査自動化システムを構築する際も、まずはこの手順を踏んで、プロジェクトの方向性を決定します。
「コストを抑えたい」「品質を高めたい」「業務効率を向上したい」など、どのような課題を改善するために自動化を行うのか、ゴールをこの時点で明確化しておくことが、導入を成功させる鍵になります。
学習・検証を行う
方向性がまとまったら、実際にシステムを構築したり、構築済みのシステムを自社用にチューニングしたりする段階に移ります。AIを活用した外観検査自動化システムでは、サンプルデータからの学習も行います。
サンプルデータの収集や学習の実施には専門的な知識が必要になり、この作業に問題があると検査の精度が低くなってしまいます。ベンダーを選ぶ際に、学習に関するサポートの内容についても確認しておくことが推奨されます。
導入前のテスト
システムの構築やチューニングが完了したら、導入前にテストを行って、求められる検査精度を達成できているかを確かめます。学習をきちんと行っていても、想定外の不良品が出てくると対応できないケースもあるため、本導入を進める前にチェックをしておくことが重要です。
また検査精度以外にも、検査品の撮影方法、撮影に使うカメラ・照明の種類や配置、不良品検出時の取り除き方など、多岐にわたる機能のチェックも行います。
導入開始
テストを行って問題がないことを確認できた後、本導入を開始します。運用開始後に検知できない不良品が出てくるケースもあるため、継続して検査精度のチューニングを行い、傾向を踏まえた微調整を重ねて精度を安定させます。
また、外観検査を自動化した目的を達成し、品質をより向上させるためには、検査精度が安定した後も課題の分析と改善策の検討を続けることが大切です。
外観検査自動化のシステムを選ぶ際の比較ポイント
外観検査自動化のシステムを選ぶ際は、以下のようなポイントに着目すると失敗のリスクを抑えられます。
検出可能な内容なのか
色むらや異物混入、欠損など、システムによって検出しやすい内容は異なります。そのため、該当のシステムで自社が検査したい内容の検出は可能か、事前に確認しておくことが重要です。
システムの仕様面ではほかにも、「検査機だけでなく周辺装置も併せて導入したい」「AIモデルの作成や検査精度のチューニングを自社で行いたい」といった場合に、どの程度対応できるかをチェックしておくと、希望するかたちでの導入がしやすくなります。
検査の判定方法
外観検査自動化システムにおける不良品の判定方法には、「ルールベース型」と「AI型」の2種類があります。ルールベース型は色の濃さや面積、幅といった製品の情報を数値化して検査を行うのに対し、AI型はAIに学習させたデータを基に検査を行います。
数値的な根拠に基づいた明確な判定をしたい場合は、ルールベース型が適しています。数値で線引きするのが難しい曖昧なケースに対応したい場合や、品種や形状が多用で数値設定に手間がかかる場合はAI型が適しています。
導入および運用のコスト
コスト削減のために導入が検討されることも多い外観検査自動化ですが、導入には数百万円以上のコストがかかるともいわれています。システムのチューニングにあたってサポートを委託する場合の費用なども含め、導入・運用にかかるコストが予算に見合っているか、事前に確認しておく必要があります。
稼働する現場の規模や検査の内容により、費用が変動する場合もあるため、具体的な予算を踏まえて検討したい場合はインターネット上の情報などで判断せず、見積もりを依頼するのが堅実です。
運用・保守体制
稼働を開始したシステムは、運用・保守を行って、問題なく稼働し続けられるように守っていかなければなりません。特に外観検査自動化のようなケースでは、システムの運用開始後も精度の維持や改善のため、チューニングを行う必要があります。
そこで重要になるのが、導入後の運用・保守に関するサポート体制です。チューニングの方法やそれを支援する機能の有無、ベンダーからどの程度のサポートを受けられるかなどを確認し、安心して使用し続けられるシステムを選ぶことが大切です。
導入事例
Sky株式会社は、AI・画像認識技術を用いた生産ラインの検品システムの開発に携わっており、外観検査に役立つ技術の研究・開発を行っています。画像認識による外観検査を行うアプリケーションでは、不良品の検出や寸法の計算などに対応可能です。
この技術を活用できる具体的な事例としては、工場の生産ラインにおける製品のミリ単位の寸法測定や、パッケージの傷やへこみ、ひしゃげ、ラベルのずれの検出などが挙げられます。また、撮影した検品対象の画像が傾いていても、輪郭の情報から自動で回転補正をかけることができます。
Sky株式会社のシステム開発
Sky株式会社では、工場での外観検査をはじめとした、さまざまな業務系システムの開発をサポートしています。幅広い業界のシステム開発に携わってきた技術やノウハウを活用し、PoC(事前検証)からシステム化まで柔軟な支援が可能です。
AI・画像認識の技術は、工場での外観検査のほか、設備の異常検知や自動車の自動運転、製品や器具の分類、医療における画像診断の支援、物流業界での車両の監視など、あらゆる分野で活躍しています。
自動化に適した業務をAIが行えるようになれば、省人化や従業員の負荷軽減を実現できます。画像認識技術を利用したシステム開発をご検討の際は、お気軽にSky株式会社までお問い合わせください。
まとめ
AIによる画像認識技術の発展も影響し、現在はあらゆるケースに対応した外観検査自動化システムが誕生しており、検査精度も向上しています。その一方で、デメリットやコスト面、長期的な運用に必要な知識についても把握した上で導入を決定することがとても重要になっています。
自社の課題を解決するために、どのようにシステムを取り入れるのが最も効果的なのか、まずはじっくりと検討してみてください。